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ポータブルCDプレーヤーを修理する


修理は「自己責任」で。
このページを見て自分で修理をされた場合に、結果として正常に動作しないことがあっても、当方は一切の責任を負いません。

1.前置き

 2009年、ポータブルCDプレーヤーが衰退を始めて久しい。現存する機種は、大手メーカーSONYと、数社の弱小メーカーのみ。それらも、ほとんどは諸外国で製造していると思われる。このままではポータブルCDプレーヤーは絶滅してしまう。隆盛を極めるポータブルなデジタルプレーヤーは、mp3を代表とする音質が劣化した圧縮音源を主に扱う。そんな劣化した音は聴きたくない。頭が疲れる。wave音源が使える機種もあるが、皆さんはそのことを気にして選んでいるだろうか。
 ここは、うまくCDを読めなくなってきたPanasonicのSL-CT510(2004年生産終了)をもとに、おっかなびっくりの修理を記録したものである。

2.準備

・部品はあるのか。
 取扱説明書にあるように、通常このような製品の補修用性能部品は、製造打ち切り後8年保有することになっている。つまり、SL-CT510は、2012年に部品が無くなっても文句をいえないことになる。それまでに修理しなければならない。
・いくらかかるのか。
 Panasonicの「修理ご相談窓口」に対して、「修理をしたいが、まず見積もりをお願いしたい」と述べると、担当地区のサービスセンターの電話番号を教えられる。これがクセモノである。
・最初の問い合わせ
 最初の問い合わせととき、私はたまたま某大都市に居た。住んでいたのではなく、居たのである。私は、「修理ご相談窓口」から紹介されたサービスセンターに電話をした。そこの女性の担当者に説明したのは…
「最近、CDを読んだり読まなかったりしてきたので、部品の交換をお願いしたいが、いくらかかるでしょうか」
 一旦電話を切り、約1時間後に折り返し電話をいただく。会話の概略は以下の通り。
「お客様の症状の場合、トラバースという部品が2,100円、技術料が4,000円、および修理後の送料と代引き手数料になります」
「すると、7,000円以上になりますね」
「そうですね」
「部品だけ送っていただくことはできますか」
「専用の工具が必要になる場合がありますが…」
「それは承知の上のことです」
「部品のみお送りすることはできます」
「わかりました。少し考えてみます。ありがとうございました」
・検討
 ここで、失敗したなと思ったのは、トラバースが何を意味するのかわからなかったことである。その前に、「ナニ、こちらから送るための送料も含めたら、7,000円を超えるじゃないか。これじゃ、中古を探したほうが良いか…」と思って考え込んでしまったのだ。1994年当時、新品を約9,000円で購入したのである。

3.内部を見てみる。

 ポータブルCDプレーヤーは、いかに精密機械とはいえ、腕時計のように一旦フタを開けたら途方に暮れるような構造をしているわけではない。じつは、内部は簡単な構造になっているのだ。

 うまく開けると、トラバース(ピックアップ部分)が1個のアセンブリであり、回路基板も1個のアセンブリであることがわかる。回路基板には各種スイッチや充電池部分の金具まで一体化されている。
 そして、回路基板とピックアップは、フレキシブル・ケーブル(シート状のケーブル)で密接に接続されている。この接続部分が、ちょっと恐い。うまく接続できるか、心許ないのだ。
 正常なトラバースと回路基板を持ってきて、そのまま故障部品と置き換えれば修理完了なのだ。注意するのは接続部分のみで、それさえしのげば簡単な話である。そもそも、大量生産しなければいけないのだから、部品はなるべく単純なはずだ。はめ込めばそれで終りのはずだ、と判断した。通常の据え置き型オーディオとは全く違うはずだ。

4.部品を注文する。

 さて、お決まりの手順に従い、Panasonicの「修理ご相談窓口」に対して、「修理をしたいので、部品を送っていただきたい」と述べると、担当地区のサービスセンターの電話番号を教えられる。前述の通り、これがクセモノである。
・第2回の問い合わせ
 今回は、現住所から問い合わせをした。したがって、「修理ご相談窓口」から紹介されたサービスセンターは、田舎にあったのだ。そこの女性の担当者に説明したのは…
「最近、CDを読んだり読まなかったりしてきたので、部品の交換をしたいが、部品を送ってもらえないか」
 さて、ここからが長い。なぜなら、修理を依頼したのではなく、いきなり部品をよこせと言ったからだ。
 それでも担当の女性は「まずは調べます」と答え、一旦電話を切り、約1時間後に折り返し電話をいただく。会話の概略は以下の通り。
「どのような症状かわかりませんが、おそらく、8,000円程度はかかると思われます」
「それでは、部品を送っていただけますか」
「修理には専門の技術者でなければできないと思いますが」
そう言って、なかなか「部品を送ります」という言葉が出てこない。
ここで手の内を少し明かす。
「それは承知の上です。じつはしばらく前に『部品を分けていただけますか』とお願いしたら、『専用の工具が必要かもしれませんが、部品のみをお送りすることは可能です』という回答をいただきました。別のサービスセンターですが」
「それはどこの誰ですか」
「○○○市○○町のサービスセンターですが、担当者の名前は覚えていません」
悩む女性担当者。
「修理は専門の技術が必要ですし、それに、こちらでお調べしないと、どのような部品が必要かも分かりかねます」
ここで手の内を、もう少し明かす。
「じつは、一度内部を分解して、構造はわかっています。私は、ピックアップ、つまりレンズがある部品と、もうひとつ、スイッチなどが付いている回路基板が欲しいのです。このピックアップと回路基板は密接に繋がっているので、専門の技術者でなければ扱えないことはわかります。しかし、ピックアップと回路基板の両方をお分けしていただければ、私でもできると判断したのです。以前に別のサービスセンターで教えていただいたのは、部品は2,100円だ、ということです。この部品が、ピックアップの部分のみか、それとも回路基板も含めてのことかは、わかりません」
ひとしきり説明した後、
「しばらくお待ちください」
さて、何を相談しているのやら。
「わかりました。こちらで部品をお取り寄せします。部品を取り寄せしましたら、また連絡します」

 まさかこっちでハンダ付けまではやらされないよな、と思いつつ、部品が取り寄せられるのを待つことにする。
 で、届いたのがピックアップ部分のみの部品(トラバース)だったのだ。

5.必要な工具

 小さめの+のドライバー
 なるべく先端が細く長いラジオペンチ(フレキシブル・ケーブル専用の工具があると思うけど…)
 小さめのハケ

6.部品の名称、型番

 Panasonic SL-CT510用の部品の品名、品番と写真を記載しよう。
 品名:トラバースユニット
 品番:RAE0241Z-2X (2012年6月現在、在庫あり。いつまでもこの品番かどうかは、わからない)
 日本製、税抜き 2,000円、代表機種:SL-CT352-A
pcdp-3.jpg (33466 バイト)
 フレキシブル・ケーブルは、まさにこの状態で送られてきた。

7.分解

 まず、電池を取り出しておこう。フタを開けると4本のネジが見える。
pcdp-1.jpg (15663 バイト)
 これらをはずすと、フタ+トレイの部分はフタの蝶番近辺で固定されていることに気付く。ここはプラスティックのツメで引っかかっているのみ。はずすのは簡単であるが、力を入れ過ぎてツメを折らないように注意する。赤矢印の細長い溝2箇所にツメが見えるので、細いドライバーを差し込んでそっと押すと、はずれる。
pcdp-2.jpg (36590 バイト)
 トレイ部分をはずしたとき、HOLDスイッチがボロリとはずれるので無くさないようにする。

8.部品の交換

 回路基盤からトラバースをはずす。フレキシブル・ケーブルは、少し強く引っ張れば、難なくはずれる。不良部品を取り外したら、ハケなどでケース内部に溜まったホコリを取り除く。
 回路基板に、レンズに触れないようにトラバースのフレキシブル・ケーブルを差し込むが、これが難しい。あまりにもケーブルが弱そうで、しかも狭いコネクタに差し込む。折れ曲がって壊れてしまうのではないかとビクビクする。おそらく専用の工具があって、簡単にケーブルをつまんで差し込むようにできるのだろう。少し悔やしいが、近所に売っているわけでもなかろう。
 とにかく、おっかなびっくりで何とか差し込むことができた。ちょっと恐かった。実は、手持ちのラジオペンチの先端があまり細いものではなかったからだ。ここでは、とても細いラジオペンチは必須だ。

 特に説明しないが、基盤やピックアップを置く位置は、すぐわかるように設計されている。そうでないと、組み立てに熟練や時間を要してしまう、つまり費用がかさむからだ。

9.フタをする

 HOLDスイッチになるプラスティックの小さな部品を、回路基盤の上にそっと置く。その部品は、基盤にあるスイッチ本体の短いバーを左右に動かすためのもので、動きさえわかれば、置くときの向きの判断は簡単だ。HOLDスイッチの部品が、基盤のスイッチを動かしてくれるかどうか確かめておく。

 既にご存知の通り、「パチン!」とはめ込む部分は2箇所。はめ込みが終わったら、この時点でも、HOLDスイッチは動くことを確認しよう。それ以外のコネクタも見えていることを確かめよう。スイッチも押せるかどうかだけは確かめよう。あとは4本のネジを差し込む。あまり強く締めすぎないように。

10.動作確認

 バッテリーを入れ、ケーブルなどを接続し、動作確認をしよう。バッテリー用のフタは、必ずきちんと閉じているか確かめよう。私は、フタが完全に閉じていない状態のまま動かして、CDにキズを付けたことがある。

■注意事項
 いくらサービスステーションだからといって、通常はテレビとか洗濯機とか照明とか、そういったメジャーな製品には慣れていても、ポータブルCDプレーヤーについては経験が少ないはずだ。ましてや、田舎のステーションなら、なおさらだ。ぶつぶつ言うお姉さんのご機嫌を取りつつ、部品のみの提供を約束させるために、焦らず丹念に口説くしかない。


(2009.3.15)(2012.6.30改訂)



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