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「第2バイオリンは右が正解」その2


第9番
 第1楽章

 いたるところに聴き所はあるが、展開部ではここになる。まず、下の例の1で低音に主題が現われる。
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 その間、第1バイオリンとフルートは単純な音を鳴らすが、2の2小節前でサビを聴かせるおいしい役回りとなる。
 2では主題が第1バイオリンとフルートに渡されるが、やはりその5小節めでサビを聴かせる。おいしい役回りであることにはかわりが無い。
 そして、3で第2バイオリンに主題が渡る。すると、第1バイオリンはそれまで第2バイオリンが受け持っていた細かい音型を引き継ぐのである。ならば、ここは第2バイオリンが右側にあれば効果的に聞こえる。そして、4ではふたたび第1バイオリンに主題が渡される。このように、左右のバイオリンで主旋律と副旋律を交換しあっているのだ。
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 ここで注意したいのは上の例の↓のところである。つまり、全く同じ高さの音が、第1、第2バイオリンの双方で鳴るのである。そもそもどちらのバイオリンも重要な主題なのであるから、明確に聴き取られることが必要だ。もし、第2バイオリンが舞台左側にあれば、それが台無しになるのである。よって、必ず第2バイオリンは舞台右側に存在しなければならない。
 そうすることによってのみ、この真の姿を正しく聴き取ることができるのだ。
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 そして、一旦落ち着くと大変美しい場面になる。
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 上の例の■のように、ここでも主題が第1、第2バイオリンの間で交互に演奏される。ここのみ見ても「第2が右」でなければならないことが誰にでもわかる。


 第2楽章 冒頭
 これこそが、第9演奏当時に、弦楽5部がどのように配置されていたかを知る歴史的資料である。
 前に第5番のところで書いたが、その著作では「合唱付き」の第2楽章冒頭についても説明してあった。主題がフガートで出現するところであるが、ここは、第2バイオリン、ビオラ、チェロ、第1バイオリン、コントラバスの順に出現する。スケルツォの主題は、つまり舞台の右端から左端に流れているのである。
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 第3楽章、第4楽章では、ジャーマン・スタイルが有効となる部分がほとんど無い。少々残念で尻切れトンボであるが、これでおしまいである。


 とにかく、指揮者の皆さんは楽器配置くらいちゃんとやれ、と言いたい。いかに細かなニュアンスを練習で声をからして指示するよりも、はるかに簡単にできて効果があることではないか。楽団によっては拒否するところもあるらしいが、そいつらは単なるバカでしかないと私は思う。


(2000.12)



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