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オンナのコのバイオリン協奏曲


 オンナのコらしい?という差別用語?をものともせずに書けば、ベートーヴェンでは「バイオリンのためのロマンス」こそが、オンナのコ向きだと思っている人が多いかもしれない。しかし、それは違う。いまや、というか、10年いや20年以上前からだろうか、LPレコードが発展しCDに切り替わって、次は何かというこの時代、女性バイオリニストだってベートーヴェンのバイオリン曲といえば「ロマンス」よりバイオリン協奏曲そのものになっているのですよ。「女流バイオリニスト」なんて言葉がまだ生きているのかは知らないが、もしかしたらバイオリン協奏曲は女性のほうがうまく弾いたりするかも。

 私がLPレコードやCDで持っているのは、

 ローラ・ボベスコちゃん→vl-1-lola.jpg (7037 バイト)
 アンネ・ゾフィー・ムターちゃん(2種類)
 チョン・キョン=ファちゃん→(2種類)vl-2-kyung.jpg (6345 バイト)
 ステファニー・チェイスちゃん→vl-3-stephanie.jpg (6894 バイト)
 カリーン・アダムちゃん→vl-4-karin.jpg (7891 バイト)
 にしざきたかこちゃん(写真無し)
 ヒラリー・ハーンちゃん→vl-5-hiraly.jpg (11107 バイト)
 ヴィクトリア・ムローヴァちゃん→vl-6-viktoria.jpg (9288 バイト)

である。これは、所有する録音(末尾参照)の、30%に相当する。
 この中で、チョン・キョン=ファ、ムター、ハーン、ムローヴァが、容易に入手できる。ただ、ハーンは若いのでもう一度録音するだろうから、無理に買う必要は無いだろう。(ただし、輸入盤で安くすませたい人は、早く買うこと)


 ううむ、私ってけっこう、女性の録音を持っているんだなあ。一般に女性の演奏家となると圧倒的にピアノが多いのだろうけれど、皆、ショパンという安易な流れに飲み込まれてしまい、ベートーヴェンの協奏曲をなかなか演奏してくれない。しかし、バイオリン協奏曲はピアノ協奏曲よりは少ない数ながら、バロックから現代までまんべんなくあるので、バイオリニストの皆さんは妙な偏りに陥ることなく、ベートーヴェンも演奏してくれるのです。

 女性は線が細いんじゃないかとか、なんとか言うかもしれないが、線が細いか太いかは、録音が問題だという可能性が大きい。ツヤがあるとか無いとかもそう。芯があるとかいう表現なんて、マイクとミキシングの都合で変わるんじゃないだろうか。マイクの位置や残響などによっても、ある程度ニュアンスは変動するはずだ。多くの録音はマルチ・マイクでミキシング処理を施しているので、各楽器のバランスはエンジニアの腕でどうにでもなるはずだ。
 伴奏にしても、名だたる指揮者はレコード会社の専属になることも多いだろうから、あの人のほうがもっとウマが合っただろうけど共演はできない、という場合もきっとあるだろう。これも仕方が無いことだ。
 しかし購買者の誰もが、じつはそれらをひっくるめた全てを買うことになる。なので独奏者に対してであるかのような批評が、じつは録音のせいで、独奏者本人とは関係の無いものかもなという可能性を考慮しつつ、皆さんは判断していただきたい。
 じゃ、女性バイオリニストのベートーヴェンのバイオリン協奏曲は何で判断するのかというと、まずは心意気だ(^_^)。あまたの名演奏が並ぶ中に、さらに1枚の録音を仲間に加えてほしいと思ったのなら、その意気や良し、まずそこで40点あげたい。
 伴奏がベートーヴェンで名だたる演奏家であったなら、さらにそこで40点あげよう。いやしくもレコードメーカーが良い演奏にして売り出すのであるなら、まず脇を固めるはずだ。脇が固まっていれば、およそこの曲に挑戦しようというもの、平均レベル以下にはならないんじゃないかと思う。ベートーヴェンの曲では、一般に構成力が問われるが、共演の指揮者、楽団がしっかりサポートすれば、多少若くて経験が少なくても、なんとかなるのも事実だろう。ベートーヴェンらしくない演奏と思ったのが、じつはオーケストラがダメだったのさ、という可能性もありだ。もっとも、若くて可愛い娘がソロを弾くなら、オーケストラのおじさんたちはきっとめいっぱい頑張っちゃうに違いない。

 以上で80点と思ったら、あとは個人の判断だ。私は、グラモフォンやデッカはいいが、CBS/SONYがダメと思うので、そこで減点する。また、交響曲で良い評価を得られない指揮者は、バイオリン協奏曲でもダメだろう。
 ということで、自分なりに買う前の評価ができたら、買って聴く。さあ、レコーディング・エンジニアはどう作ったかな? バイオリンを効果的に鳴らすことができたかな? 録音会場はいい響きかな? マイクは楽器の音をよく捕らえているかな? 音がヘンでも、決して彼女たちのみに責任を押し付けてはいけないよ。オンナのコは大事にせにゃ。

 そういったことも含めて聴いてみると、妙にヘタな演奏は無い。第2楽章でバイオリンがソロをめいっぱい優しく聴かせるところがあるが、誰もがみな、そこは十分に演奏していて、私には文句は無い。
 こうなると、評価は1つのポイントしかない。もう一度聴きたいか。これだけ。しかし、そんな基準は、ここではどうでもよい。

ローラちゃん
 62歳で録音。
 録音当時はもうベテランというローラちゃん。このCDには、解説はローラちゃんの経歴のみ。そう、彼女のファンのためのCDのようなもの。録音はローラちゃんに注目で、すぐ目の前にローラちゃんが見える。つまり、独奏が浮いた録音で、珍しい。伴奏は丁寧。
 ローラちゃんは若い頃はたいそうな美人だったようだ。上記画像は「絵」であるが、ジャケットには写真もあり。ただし、どちらも還暦後のものであるのが残念だ。
 (備考:カップリングにメンデルスゾーンは、サービス満点)

チョンちゃん
 二種類の録音のどちらも持っている。上出来のはずであるが、あまり印象に残っていないのは、写真に写されることが好きではないからか。上記の写真のように、笑顔を掲載すべきであろう。
 (備考:カップリングにブルッフの曲があるが、そんなものは聴きたくない。)

アンネちゃん
 16歳で録音。
 アナログ録音最盛期にカラヤンも最盛期を迎えたが、その秘蔵っ子がこの娘だった。若すぎるとベートーヴェンは無理なんじゃないかとも思うが、ご安心。マエストロは教育者でもあるのです。彼女の未熟さをカバーする指導と演奏で、これはこれでスゴイ出来と思う。
 この頃は初々しい、という写真がジャケットだった。しかし、2002年録音の同曲では、見事におばさん化してしまった。これでは購入できない。
 (備考:カップリングに何か付けろ)

たかこちゃん
 録音時年齢不明。写真も無いので、評価のしようがない。
 (備考:カップリングにロマンス2曲は、サービス満点)

ステファニーちゃん
 録音時年齢不明。
 全員古楽器でまとめた演奏。思いっきり近くで聴いているような録音なので、いろいろなニュアンスがはっきり聴き取れる、臨場感あふれる演奏。楽譜は、最近(2000年頃から)流行のデル=マーによる校訂を取り入れているが、録音年が1992年であり、ベーレンライター原典版はまだできていない。微妙に通常版と違うな、というようなところがいくつかあるように思ったが、聴いていて違和感は無い。
 できれば、もうちょっと可愛くはっきり写った写真を載せてほしかった。
 (備考:カップリングにロマンス2曲は、サービス満点)

カリーンちゃん
 30歳台後半以後(?)で録音。
 バイオリンはガルネリウスで、ツヤがなんとなく違うような。まあ、気のせいでしょ。伴奏は丁寧。
 ジャケットは顔のアップであるが、年齢の都合上あまりアップで撮ってほしくなかった。
 (備考:カップリングにバイオリン協奏曲WoO5は、サービス満点)

ヒラリーちゃん
 二十歳前で録音でしょうか。
 若いのに、こだわりを持つこの娘、指揮者がイマいちなのがほんとうに玉にキズ。指揮者や伴奏方面にも、こだわりを見せてほしかった。再録音に期待。これは指揮者と彼女の力関係のせいです。彼女に罪は無い。指揮者の「あいつ」は、あるところで、楽譜には無い音を加えている(というか、強いアクセントをつけている)のが、めいっぱい気になった。ほんと、こいつはダメ指揮者である。伴奏に徹することができないのかよ。ヒラリーちゃんは、言いなりだったのか?
 写真には、もっとこなれたおだやかな表情を希望したい。
 (備考:カップリングにバーンスタインの曲があるが、そんなものは、聴きたくない。)

ヴィクトリアちゃん
 42歳(?)で録音。
 相棒の指揮者がオリジナル派なので、ヴィクトリアちゃんと意気投合。ガット弦です。数カ所、通常版とは音型が異なるところがあり、気になるところもあれば気にならないところもある。録音は、普通に客席で聴くようなレベルのバランス。
 知的で魅力的な表情です。よい写真です。購入欲を、そそられました。
 (備考:カップリングにメンデルスゾーンは、サービス満点)

 やはり、女性バイオリニストは、せっかくの写真なのだから、ぜひとも表情や衣裳に凝っていただきたいものだと、切に希望する。
ってことで、よろしかったですか?

(大権現様)「あたりまえだろ、せっかく、女性を引き立てるように作ってやったんだから。女性は、可愛くなければならん」


 さて、単純に、好き嫌いのレベルで書いてしまったが、私が、どんな録音を持ち、どう思ってきたかを述べておかないと、比較にならないだろう。ということで、メモしておきたい。

ヴァルフシュタール、グリット、BPO 1929
フーベルマン、セル、VPO 1934
クライスラー、バルビローリ、LPO 1936 こういうねばっこいのは、よい。
レーン、フルトヴェングラー、BPO 1944.1.12
メニューイン、フルトヴェングラー、PO 1953
ゴールドベル、ミトロプーロス、NYPO 1950
ミッシャ・エルマン、ショルティ、LPO 1955 もうちょっとねばっこさが欲しかった。
ダビッド・オイストラフ、クリュイタンス、PO 1959 [模範演奏]
シゲティ、ドラティ、LSO 1961 ヘタのようで絶妙にうまい。
シュナイダーハン、ヨッフム、BPO 1962
アイザック・スターン、バーンスタイン、NYPO 196? バレンボイム盤より、いい。
ヘンリック・シェリング、イッセルシュテット、LSO 1965 [模範演奏]
メニューイン、クレンペラー、ニューPO 1966
クリスチャン・フェラス、カラヤン、BPO 1967
グリューエンベルグ、ホーレンシュタイン、NPO 1967
アルトゥール・グリュミオー、デイヴィス、コンセルトヘボウ 1974
アイザック・スターン、バレンボイム、NYPO 1975
シュピーラー、ミカエル、フランクフルトRSO 197?
アンネ・ゾフィー・ムター、カラヤン、BPO 1979 よい演奏。
チョン・キョン=ファ、コンドラシン、VPO 1979
イツァーク・パールマン、ジュリーニ、PO 1980
クレーメル、マリナー、アカデミー・オブ・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズ 1980 ちょっと硬めか?
ローラ・ボベスコ、ドニュー、RTBFノーベル交響楽団 1982
アンネ・ゾフィー・ムター、カラヤン、BPO 1984
イツァーク・パールマン、バレンボイム、BPO 1986
ズスケ、マズア、ライプツィヒ・ゲバントハウスO 1987
テツラフ、ギーレン、バーデンバーデンSWF交響楽団 1988 ちょっと硬めか?
西崎崇子、ジーン、スロバキアPO 1988
チョン・キョン=ファ、テンシュテット、ロイヤル・コンセルトヘボウO 1990
ステファニー・チェイス、グッドマン、ハノーヴァー・バンド 1992 オン・マイクで面白い。
カリーン・アダム、ヴィット、ポーランド国立放送SO 1992
リッチ、ベルージ、ベル・シャンティO 199?
ヒラリー・ハーン、ジンマン、ボルティモアSO 1998 伴奏が…。
ヴィクトリア・ムローヴァ、ガーディナー、オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティーク 2002 


(2004.5)



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