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  5. バイオリン協奏曲「絶品の旋律を楽しむ 第1楽章」

バイオリン協奏曲
「絶品の旋律を楽しむ 第1楽章」


 忘れてはいけないのが、ベートーヴェンはメロディ作成でもかなりの才能を持っていることだ。有名な曲を羅列すると「英雄」、交響曲第5番などということになり、そのソナタ形式の構築性を云々される彼であるが、そうなると、必然的にソナタ形式の構築すなわち展開がやりやすいメロディというか音の素材が目だってしまう。構築性に重点を置くと、旋律性を犠牲にすることになるのだ。そうであるために、心をうつメロディラインが乏しいような印象を受ける。しかし、いや違うぞ。彼は、美しいメロディラインが書けるのだ。ただ目立っていないだけなのである。「田園」交響曲を聴け、「合唱付き」のあの歓喜の歌を聴け。ピアノソナタだって、いっぱいすばらしい旋律があるのだ。
 ここでは、バイオリン協奏曲から絶品の旋律を選んでみよう。



 ここでは弦楽器の部分を抜き出した。実際には、トランペットやティンパニ、後半では木管楽器が加わる。これは第2主題であり、第1主題も、オーボエのひなびた音色を活かした良い旋律である。このバイオリン協奏曲は旋律性に富む一方、けっこう重厚な部分が多い。ここでも、ティンパニやトランペットなど、鳴らしてしまえば重厚になりがちな楽器編成で、ぎりぎりのところで深い情感を表出することに成功している。ビオラとチェロが3連符でサポートしているところがミソである。これが無かったら、締りが無い部分になってしまう。



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