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二本の糸杉

 こういう絵を描ける人は出てくるのでしょうか?

糸杉(メトロポリタン美術館)


 
この写真は、2002年冬に、メトロポリタン美術館で撮ったものです。この時受けた衝撃は、金槌で頭を殴られたようなものでした。『これが、ゴッホの絵なんだ!』と思いました。1889年6月に描かれ、93.3×74cmの大きさのキャンバスに描かれた油絵で、信じられないくらいの厚塗りです。それでいて、実に美しいです。天に届くように燃え上がるような糸杉と、背景の空、描かれている月は、白夜をあらわすものなのでしょうか?


その後、クレラーミュラー美術館でも、糸杉を題材にしたようなものを、2作品ほど観ました。でも、メトロポリタン美術館のものには、かなわないと思います。


 厚塗りは、結構難しいです。キャンバスで、色が混ざるとよくないですし、自分が何を描いているか全体像がつかめなくなります。


ゴッホが、糸杉に注目するようになって来るのは、サンレミに移ってからです。1889年6月25日にテオに送った手紙の中で、このように書いてます。「いつも糸杉のことで頭がいっぱいになっている。何とかひまわりの絵のようにならないかと思う。」この時点で、花・果樹から針葉樹である糸杉に関心が移っているのがわかります。

 ひまわりが生命の息吹を現すものに対して、糸杉は墓場の近くに植えられるもので、ゴッホが無意識のうちに、死の方向に足を踏み入れていると、解説する本もあります。私が思うにゴッホ作品の一つの魅力は、その苦境に置かれているにもかかわらず、燃え上がるような生命を感じさせることではないでしょうか?この作品に、壷のひまわり以上の魅力を感じました。

 

 皆さんは、どのように思われますか?




(2003年9月12日作成)

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