北京漂流記
by kana

[目次] [前話へ] [次話へ]
6日目:観光〜買い物〜二胡の老師現る
(2001/12/31)



6時に、カオさんに揺り起こされる。
私は自力で起きられない人間らしい。

コンさんは太極拳に行かないとのことだったので、カオさんと2人、思い切り厚着をして約束の6時半にロビーへ。
すでにパイさんチエンさんも降りていて、4人で近くの公園に向けて出発。
寒い。まだ暗いし、道路も凍ててる。

公園につくと、すでに多くのおじいさんおばあさんが、あちこちで集団になって、それぞれいろんなことをしている。
足踏みだけしてるグループ、ひたすら手拍子だけするグループ、京劇の剣で演舞するグループ、公園の遊具で器械体操するグループ、などなど。
まだまだ、顔の判別もつかないほど暗い。

公園内を歩き回って、テープ音楽に合わせ太極拳らしき動作をしているグループを発見。
勝手に列の後ろに並び、私たちも見様見真似でやってみることにする。
テープの合間に中国語で動作の型を言ってるらしく(日本のラジオ体操でピアノの合間に「屈伸!」という声が入ってるのと同じ)、みんなそれに合わせて身体を動かしてるようなんだけど、私たちにはなにがなんやらさっぱり。

太極拳って、急にクルッと後ろを振り返ったりするのよね。
後ろに並んでる私たちは、みんな振り返ると今度は列の先頭になるわけで、そうなるとドギマギ。
背中にはおじいさんおばあさんから痛いほどの視線を感じるし。

おじいさんおばあさんにワンテンポ遅れながら下手っぴぃな動作を続けていると、いつの間にか長身の白人らしき男性が私たちのそばに立って、観察しはじめた。
私たち4人組もそれに気づいて、「なんやろこの人・・・」と思ってたら、その男性、私たちのそばで同じように見様見真似で太極拳に参加しはじめる。
きっと下手くそな私たちを見て、ここのグループは素人参加OKと思ったんだろう(笑) あやしげな5人組状態(笑)
彼はしばらく身体を動かして、テープの曲の途中でどこか行っちゃったけど。

7時前になり、パイさんチエンさんは中国語のレッスンがあるというので先にホテルへ。
私とカオさんは、ようやく明るくなりかけた公園内を散策。
遊具で器械体操するグループを眺めたり、別の太極拳グループの列にまぎれて真似てるうちにかなり明るくなってきた。
通勤通学で公園を横切る若い人の姿も増えてくる。
公園の奥でなにやら賑やかな音楽が聞こえてきたのでカオさんと行ってみると、そこは有料の屋外ダンス場になっていて、みんなで社交ダンス(競技ダンス?)をやっていた。
みんな朝っぱらから元気ね。
しかし残念ながら誰一人として楽器演奏してる人はいなかったな。

7時半になったので2人でホテルに戻り、コンさんと3人で朝ご飯。
偶然京都江南絲竹会のメンバーの1人と隣のテーブルになる。
「昨日北京ダック食べに行ったんだってね。おいしかった?」
激しく首を横に振るかな坊・・・(爆)

昨日コンさんが旅行社に頼んだガイドが9時にロビーにくるというので、出かける前に両替をしようと、9時前にロビーの両替カウンターへ。
が、なにやら白人男性と両替係の女性職員がもめている。
時間が迫っているので白人男性の後ろでイライラしながら待ってたのだが、この男性もかなりイライラ。

二者の英語のやり取りを拾い聞きしてみると、どうやら男性の差し出した男性の母国のお札を、
両替嬢 「これはうちで両替できない」
男性  「後ろの壁のレート換算表に私の国の通貨も載っているじゃないか。ここで掲示しているということは、ここでも両替できるってことだろう?」
両替嬢 「私はこのお札を見たことがないので両替できない。」
しばらくこの繰り返し。

じゃあ男性が
「私は時間がないので両替できないなら両替してもらわなくていい。そのお札を返してくれ。」
と言うと、両替嬢は
「ちょっと待ってて。」
と言い、電話をかけたり男性の差し出したお札を何度も調べてみたり。
いい加減、私も男性もイライライラ。
男性は何度も自分の腕時計を指差して、時間がないことを訴えてる。
だから、返せって言ってるんだから素直にお札を返してやれっちゅーねん!

しばらくして両替嬢はようやくお札を返しながら
「もしここで両替できるようならあとであなたの部屋に電話する。」
と言ったけど、男性はお札を掴んで最後まで聞かずに行っちゃった。険悪ムード。

ようやく私の番になり、トラベラーズチェックを差し出すと、
「パスポート。」
はぁ?
もう何度も私やカオさんがこのカウンターであなたにトラベラーズチェックを両替してもらってるけども、私もカオさんもこれまで1度だってあなたにパスポートを求められた事がないんだけど?
パスポートなしで両替OKってのを身をもって教えてくれたのはあなただったはずですが。
「パスポート!」
うーん、そのときの機嫌によって客への対応を変えるわけ?
それとも、本当はこれまでだってパスポートが必要だったのに、私たちに「パスポート見せろ」って言うのをあなたずっと怠けてたの?

仕方がないのでパスポートを取りにもう一度部屋に戻る。
もうガイドはロビーに到着して、みんな私を待っているのに。
パスポートを見せて、相変わらずぶすっとしたままの両替嬢に両替してもらって、パスポートをまた自分の部屋のセーフティボックスに戻しに行って、またロビーに下りて・・・
ようやくみんなと合流。ごめんね、待たせて。

ガイドは日本語のできる若い中国人男性。契約は9時から12時まで。
この人の先導で午前中胡同巡りをし、そのあと瑠璃廠の楽器店に寄って買い物を手伝ってもらう(通訳)ことになった。
胡同へはタクシーで移動。
車内でガイドが、胡同の歴史や、変わり行く北京の街並みについて説明する。
ガイドも胡同育ちだけど、大きくなってから郊外のマンションに引っ越したのだとか。
最近は急激に若い人たちの胡同離れが進んでいるそうで、胡同での親子三世代大家族が少なくなりつつあるとのこと。

胡同の鐘楼に到着し、鐘楼に上がるためのチケットをガイドが買いに行く間、鐘楼の門の前で10分くらい待たされる。
この日は私たちが北京入りしてから一番寒く、風が強い。
砂埃がひどく、コンタクトのコンさんが顔を上げられないほど。
周囲の胡同の住人や商店のおかみさんが、じろじろと私たちを観察している。
自分たちが日常営んでいる生活空間に、外国人が突然物見遊山でやってきたら、どんな気持ちがするだろう?
なんてことを言ってたら、この種の観光は出来ないけどね。

ようやくガイドが戻ってきて、鐘楼にあがる。ながーい階段。当然エレベーターはない(^^;;
鐘楼の下には胡同が広がり、それを取り囲むように、遠くのほうに高層ビルが連なっている。
しかし、めっちゃ寒い! 風が痛い!

鐘楼を降りると、今度は輪タク(2人の客を運べる人力三輪自転車)に乗って、胡同の路地裏を回るという。(さっきガイドに待たされたのは、輪タクの運転手と交渉していたのだろう。)
私はカオさんと一緒に輪タクの座席に乗り込む。
輪タクの運転手は40歳くらい?のおじさん。私たちが乗り降りするときは必ず手を出して支えてくれ、席に座ると膝掛けをかけてくれる。
カメラを出すとシャッターを切ってくれ、一緒にポーズを取ってくれたりもする。なかなか感じがいい。

輪タクから見下ろすと、柵の向こうに広い空き地が広がっている。
が、すぐにそれが、空き地ではなく、凍りついた池であることに気づく。
枯れ枝とか砂がずいぶん覆い被さってたので、もう凍り付いて長いこと経っているのだろう。
ってことは基本的に毎日氷点下なのかな。
氷に穴を開けて釣りをしている人たちもいる。
池の横には小さな公園があり、大人たちが遊具で器械体操をしていた。
今朝出かけた公園でもおじいさんおばあさんが遊具で器械体操していたけど、中国では大人の遊具使用率が高いのね。

しかし輪タク、結構怖い(^^;;
狭い路地裏だから車がスレスレにかすめていくし、車の走る大通りを横切ろうとするし(恐怖)
「おっ、おじさん、無茶しないで下さい!」と心の中で何度か叫ぶ(^^;;

昔皇族が住んでいたという四合院(胡同の伝統的な家屋)に到着。が、大晦日ということで今日は休館とのこと。
ガイドさん、そういうことは先に調べておいて下さいな。(^^;;
仕方がないので、昔「茅盾」という作家が住んでいた四合院に行くことに。
もうそこは茅盾博物館みたくなっていて、胸像があったり売店があったり茅盾全集がおいてあったりしてた。

茅盾博物館を出てタクシーに乗り、瑠璃廠の楽器店に向かう。
2カ所も四合院を回ったため、予定外の時間のロスが痛い。
そのうえ結構道が混んでたのでタクシーをかなり手前で下ろされる。

楽器店での目的は、コンさんのソフトケースを買うこと、松脂を買うこと。
店に到着。コンさんがソフトケースはないかと問い、ガイドが日本語から中国語に訳して店員に伝える。
が、このガイドさん、つっこんだ日本語はあまり理解できてないようだ。まずソフトケースが何かが分からないらしい。
店員が発泡スチロール入りの軽量ハードケースを取りだしてくる。中には二胡が入っていてセットで売り物らしい。
が、300元ほどでケースだけ販売も可能、と言う。

店員が軽量ハードケースのふたを開けて中の二胡を取りだし、いろいろ説明する。
しかしどうやらこの店にはコンさんの探しているタイプのケース(いわゆる日本で一般に見かけるソフトケース)はおいてないらしい。コンさん諦める。
店員はまたケースに二胡を入れ、ケースのふたを閉める。

コンさんに代わってその軽量ハードケースに惹かれた私。
軽いし背中にもかけられるし。
それで店員に、もう一度ふたを開けて中を見せてくれと頼む。二胡のサイズを測ってきたから、私の二胡のサイズに合うようなら購入したいのだ、と言って。

その軽量ハードケースの内部は、二胡の形に合わせて発泡スチロールがくりぬかれている仕様になっていた。
なので、私の二胡がその発泡スチロールのくぼみに収まるのかしっかりサイズを測っておきたいし、もしくぼみに収まらなくても後で二胡の形に合わせて自分で簡単に発泡が削れるのか、ぜひとも確認しておきたい。
ちょうどカウンターの脇にはメジャーもあるし。
かな坊 「もう一度中を確認させてくれ。(メジャーを指して)これで中のサイズを測りたい。」
店員  「(ハードケースのふたを手で押えて)大丈夫、大丈夫。測らなくても、どの二胡だって収まるよ。」
かな坊 「もし買って帰ってもサイズが合わず私の二胡がこのケースに入らなかったら困る。中を確認させてくれ。」
店員  「大丈夫、大丈夫、二胡ってものはサイズが決まっているんだよ。」
はぁ? 龍頭の二胡だってあるし、うちの先生の二胡みたいに頭に特殊な飾りが入ってるやつのだってあるじゃん。
それに同じ産地の二胡だって、製作者によって高さがずいぶん変わるんだぞ。
現にコンさんが先日同じ産地の二胡に買い換えたら、背が高くて今までのソフトケースに入らなくなっちゃって、それでとても困ってるんだから。
かな坊 「大丈夫かどうかは私がサイズを測って確認するから、中を見せてくれ。さっきは見せてたじゃないか。」
しばらく押し問答。膠着状態。
しかし、さっきはふたを開けて中の二胡を取り出して見せていたのに、再度見せてくれと言ったらなんでここまで抵抗するのか?
ふたを開けて私が中を確認するのにほんの数分しかかからないのに。

ってことで、かな坊、ここでキレる。
かな坊 「中を見せてくれないのなら、もういりません。」
店員 「大丈夫だよ、あんたの二胡も、ちゃんとこの中に入るから。」
かな坊 「サイズ確認させてくれないのだから、もういらない。」
店員 「大丈夫、大丈夫、買いなよ。」
いらんって言うとるやろがっ!

ガイド 「店員さんも大丈夫って言ってるし、大丈夫なんじゃないですか?」
だから、中を見せてくれないからいらないってさっきから何度も言ってるでしょ?
店員 「じゃあ中に入ってる二胡ごと買っていきなよ。そしたら最初からケースにぴったり収まってるし、それで解決するじゃないか。」
ガイド 「ということで、中の二胡ごと買いますか?」
ここでブチ切れた私。二胡ごと買っていけと? はぁ??
それにだいたいなんでさっきからガイドも店員と一緒になって私を説得しようとしてるのよ?

ってことで、
かな坊 「私の二胡にサイズが合うなら買う。合わないのなら買わない。それを確認するために中のサイズを測りたい。が、サイズを測らせてくれないのならいらない。私の言ってることはそんなにおかしいか? ガイドさん、これしっかり通訳してっ!」
↑これ、店内に響き渡る声で日本語で一気に怒鳴りました(マジ)

私の剣幕でようやく私が本気で怒ってるらしいことに店員は気づいたようだけども、ガイドがひとことふたことしか通訳しなかったので、なんで私がキレたのか向こうにまともに伝わってないだろう。
ガイドも中国人だから、やっぱり中国人店員の方に共感してしまうのかな。
昨日まで面倒を見てくれた通訳さんは日本人だったから、チャイナドレスの引取りでもめてたときもこちらの側に立って、店員としっかり交渉してくれてたのに。

そして時計を見ると12時。ガイドとの契約が切れる時間。
なので、ガイドとはここで別れる。
(カオさんが「キレたかな坊が中途解雇した〜」と言ってますが、一応契約時間満了による円満終了です^^;)

私たちはその店の2階(楽譜、CDコーナー)に移動。二胡の楽譜をながめる。
と、そこに、二胡らしきソフトケースを背負った男性が。
向こうも二胡の楽譜コーナーから動かない私たちが気になったのか、話しかけてきた。
「○×△☆◎○×△☆◎○×△☆◎?」
すいません、分かりません(^^;;
あー、日本人なのかぁ、という顔をするおじさん。
二胡を習っているか?みたいな質問をしてくる。
で、私たちも男性の背中のソフトケースを指さし、二胡?って聞いてみたら
「チンフー。○×△☆◎○×△☆◎○×△☆◎。」
ええっと、「チン」はきっと「ペイチン(北京)」の「京」だ。ってことは・・・
「ペイチン・オペラ!」
そうだそうだ、京劇の京胡ね(^^)
とりあえず意志疎通に成功した私たちは笑顔で別れる(笑)

ここで楽譜とCDを何枚か買う。
これまでは市場とかでしか買い物をしなかったので現金と品物が即引き換えだったのだけど、ここは中国の一般的な商店で、初めて一般的な方法で買い物をする。

中国の一般的な商店ではまず、買いたい商品をカウンターに持っていき、店員に商品明細と金額を伝票に書いてもらう。
次にその伝票を持って少し離れたところにある支払い専用カウンターに行き、そこの店員にお金を支払う。
引き換えに支払い証明書をもらったら元のカウンターに戻り、そこの店員に証明書を渡すと、晴れて商品を渡してもらえるのだ。
慣れてないとちと面倒。
それに伝票は手書きだから、たくさん買い物をすると記入に時間がかかるわけで、非効率的っぽい。
バーコード読みとりシステムが中国にも普及したらだいぶ改善されそうだけど。
それから、支払カウンターの分かれているお店の多くでは、こちらが差し出したお札が偽札でないか、1枚ずつ機械に通してチェックしていた。
日本も偽札が増えればこういうシステムが取り入れられるんだろうか?

店を出て、故宮博物院に移動する。
最寄の駅まで歩き、そこから天安門東駅まで地下鉄。
この日は、それはもう寒くて風が強くて砂埃が激しくて、最寄の駅まで歩くのも大変。
コンタクトのコンさんは顔があげられず、何度も目に砂が入っては涙目でしゃがみこむ。
地下鉄の階段を降りるときなんて下から吹き上げる風がすごく、吹き飛ばされてしまうんじゃない?と思うほど。
(そのくせ地下鉄の階段を上がるときは下から吹き上げてくれない。風が背中を押してくれたら楽に上がれるのに^^;)
私たちが北京入りしてからずいぶん暖かい日(現地比)が続いてて、「なんだ、底冷えの京都とあんま変わんないじゃん」と思ってたものだったが、ようやく「これぞ北京」という気候にさらされる(笑)
空気が乾いてる上に砂埃にさらされ、唇と手の指が荒れてがさがさ。

天安門東駅は観光化されているのか、広くてとってもきれい。
そこから故宮博物院に向かって歩く。人がいっぱい。物売りがいっぱい。ガイドの押し売りがいっぱい。

入場料は60元。
私たちはガイドも案内テープも頼まなかったので、自分たちで中を歩き始める。
あちこちに中国語と英語の説明看板があるので、英語の簡単な単語と中国語の漢字を照らし合わせ、意味を適当に推察。
何度かガイドつきの日本人団体客を見かけ、時には後ろにくっついて日本語の説明を聞いたりして(笑)

結局時間がないので、正門から入ってそのまままっすぐ歩き、後ろの門から外に出る。
広いからそれだけでも結構疲れたよ・・・
門から出るとみやげ物売りに囲まれる。かなりしつこい。100mくらい追っかけられたかな。

そのまままっすぐ東へ歩いて王府井通りへ。
王府井大飯店の喫茶室で休憩する。
コーヒーは1杯30元。それとは別に、サービス料が3人で14元。高い。ま、四ツ星ホテルだし。
お代わりサービスを期待したんだけど、飲み終わったらさっさとカップを下げられちゃった。

ここからタクシーで前門駅前に移動。
コンさんがどうしても行ってみたいという陶磁器ショップの閉店時刻まであと約1時間余り。
夕方で流しがなかなか捕まらない上に、前門というだけで乗車拒否されるので大変。
前門はタクシー駐停止禁止区域。だからその手前の適当なところで降ろしてくれって言いたいんだけどボディランゲージでは伝えられず、地図を見せても前門というだけで嫌がられる。
1度拒否され、2度目に捕まえた運転手が「仕方ないなぁ」というふうに苦笑いしてようやく乗せてくれた。

どこで降ろされるのかと思ったら、運転手が禁止区域を承知で前門正面でタクシーを止めてくれた。(運転手さん、ありがとう。)
陶磁器ショップの閉店時刻まであと40分。ここからが大変。
ガイドブックによれば前門駅から歩いて5分とのこと。が、歩けど歩けどたどり着かない!
繁華街だから人通りも多いし日も暮れかけてとっても寒いんだけど、そんなことに構ってられない。
人ごみをかきわけ、現地の人と同じように赤信号を無視し、店を探してひたすら走れ走れ!
ぜーはーぜーはー、3人とも息を切らせてようやくお店に到着。
(後で地図をよく確認したら、その店まで前門駅から約1キロもあった。○○の歩き方北京版、歩いて5分なんて適当なこと書かんでくれ。)

ここでコンさんがじっくりと品定めモードに突入。私とカオさんは店内でぶらぶら。
閉店間際の嫌がらせとかはなかったけど、5人ほどの店員が私たちを囲んで、あからさまに私たちの話(「リーペンレン(日本人)」という単語が聞こえてくる)をしている。居心地悪い。
コンさんがショーケースの中の小皿を出して欲しいというと、
「時間かけて選ぶわりには安ものを買うんだな。あはははは!」
って、こちらが中国語が分からないのをいいことにみんなで言いたい放題。
(でもカタコトOKのカオさんは話の内容が分かるんだよーん。)

コンさんを待ってる間、私とカオさんはパンダちゃんの絵柄と双喜の焼印の入ったかわいい木製のお箸セットを購入。10組入り2元。安い。ビバ中国!
(安かったので店員は袋にすら入れてくれなかったけど。)
その後コンさんは木箱に入ったちょっと高級な陶磁器を買い、店を出る。
17時半。外はもう真っ暗。

前門駅に向かって歩く。
もうそんなに急がなくてもいいんだけど、北京の交通ペースに慣れたのか、ついつい現地の人と一緒に赤信号を突っ切ったりして(汗)
(ってゆーか、北京では青信号でも横断歩道をのんびり歩いてたら、左折右折の車が突っ込んできて轢かれそうになる。車優先社会なのねん。命が惜しければ信号が青でも赤でも交差点では全力疾走すべし。)

途中でちょっと高級そうなお茶の店を見つけ、お茶マニアのカオさんコンさんの希望で寄ることに。
私も茉莉花茶の香りにすっかり慣らされてしまった(笑)ので、冷やかしがてら店内を見て回る。

お茶屋を出て再び前門駅を目指す。
と、今度はおいしそうな小龍包のお店を発見。
気づいたら朝からなにも食べていないし、寒いし、疲れたし、ここで夕食を取ることに。
店に入り注文を取りに来たお姉さんにメニューを見せられる。当然読めない。
小龍包を一皿頼んだら何個入ってるの?と身振り手振り筆談でたずねても通じない。
が、どうやら小龍包を食べたいというのだけは分かったらしく、私たちの隣のテーブルを見ろ、と。
そこには男性一人客がいて、セイロに入った小龍包と他になにか一皿を食べていた。小龍包、セイロにたくさん入ってそう。
小龍包のほかにもう一皿を注文しようとしてあれこれ迷っていたら、お姉さんが日本語で「エビ?」というので、わかんないからそれにしておく。
このお姉さん、意思疎通が図れるとその都度にこっと嬉しそうにしてくれる。

やがてセイロに入った小龍包(12個入り)と、楕円のお皿山盛りに大型エビが乗せられたエビチリが到着。
どちらもおいしいのだけど、今日の過酷な気候ですっかり唇が荒れてしまってたため、唇にしみる〜!
(この唇の荒れには、帰国後2日間ほど苦しめられた。熱い茶を飲んでも痛い。(T-T))

かなりおなかいっぱい。これで一人あたり7元ほど。
お姉さんの笑顔に見送られて店を出て、また歩く。
するとまたお茶屋発見。お茶マニア3人組はまた店に入る(笑)
みんなそれぞれさっきのお茶屋で買った買い物袋を下げてるため、店員がそれを見て眉をひそめひそひそ。ライバル店だったのか。
それに気づいたカオさん、買い物袋をかかげて指差し、すまなさそうな声で
「トイプチー(^^; (ごめんね)」
すると店員はカオさんの中国語にびっくりしたのか、すぐに笑顔で
「メイグアンシ(^^) (いやいや)」
とお返事してくれた。日中友好成立。

みんなそれぞれにお茶っ葉を買い物。
私もついに、茉莉花茶のかなり高級そうなのを買う。茉莉花の香り、苦手だったのに(笑)
(人民幣=中国のお金がかなり余ってたし、帰国時に円に再両替するのは手続きが面倒なので、使いきりたかったってのもあった。)

しばらくしてコンさんが「中国語でお釣りってどういうの?」と騒ぎ出し、え、どうしたの? お釣りくれなかったの?
「販売係に200グラム包んでもらってお札を出したら、レジ係がお札を受け取ってそのままレジにしまっちゃったのよ。お釣りあるはずなのに。」
みんなで中国語会話集を引っ張り出し、筆談も交えてカオさんが店員と交渉。
怪訝な顔をしていた店員たちだったけど、販売係とレジ係が何か確認し、それでようやく分かってくれたみたい。
販売係 「200グラムの購入だったのよね。レジ係が250グラムだと勘違いして、それで計算間違えたのよ。トイプチー(ごめんね)」
そう言って(半分筆談とボディランゲージ)、お釣りを返してくれた。

そしてお店を出て前門駅に到着。
ガイドブックを全然見てないので何が何の建物なんだか分からないが、前門駅あたりの建物群がみなライトアップされて、とーってもきれい。
街はまだ活気があって人通りも多いし、賑やかだし、あたり一面イルミネーションだし、まるでディズニーランドかなにかのテーマパークのようだね、とみんなではしゃぐ。

前門駅からホテル最寄の駅まで地下鉄乗車。
ホテルに入る前に市場に行きたいと私がいい、市場に寄ってみんな適当にお買い物。
私はクルミ100gとビール。あと簡単なおみやげ物とか。
ホテルの部屋に戻ったのは20時前くらいかな。疲れた疲れた。

京劇鑑賞に行っているパイさんチエンさんは帰ってくるのが22時過ぎだろうし、ティエンファミリー(明日午後の便で帰国)もお出かけしているようだった。
防寒着を脱いでブーツも脱いで、あーやれやれと思ってたら、誰かドアをたたく音が。
ホテルのボーイさんが、支配人からだといってニューイヤーカードをくれた。
そう言えば、おおみそかだったんだよな。

明日は8時フライトの飛行機で帰国。
ホテルを出るのが朝の6時なので、みんなスーツケースに荷物をまとめ始める。
お茶っ葉とかくるみとか、結構かさばるなぁ。
大量に持ち込んだ使い捨てカイロもほとんど使わないまま持ち帰ることになりそうだし。
捨てても惜しくない古着を持って日本を出発し、現地で着たあと捨てていけば帰りの荷物が減らせるんだよ、などなど、旅上手の秘訣をみんなに教えてもらう。

明日は何が何でも早起きしないといけないので、フロントに電話でモーニングコールを頼む。
一応カオさんの目覚ましを4時半にかけ、モーニングコールは5時に。
今夜は早くお風呂に入って早く寝ようね、あ、でも人民幣がまだ残ってるので、あのタンタン麺のおいしいお店に夜食食べに行こうか、などと話していると、電話。
私が出てみたら、昨日までお世話になってた通訳さんだった。
曰く二胡の老師から伝言を頼まれているとのことで、内容は、かな坊とティエンパパの二胡に微調用金具をつけるから、今夜21時半にホテルに行くので待っておけ、ってもの。
あ、はい、了解しました(^^;;

カオさんもコンさんもさっさと荷物のパッキングを終えてくつろいでるんだけど、旅慣れてない私はベッドの上に全部広げて悪戦苦闘。早くしないと老師が来ちゃう。
22時前、ティエンパパから電話が。老師が到着されたとのこと。
一人でティエンパパの部屋に上がる。

部屋には老師、ティエンパパ、私の3人。
通訳してくれる人がいないので、みんな言語でのコミュニケーションはあきらめる。っつーか不可能。頼るは筆談のみ。^^;
微調金具は千斤の位置にテグスで取り付けるんだけども、このテグスを熱湯で伸ばし、冷えて縮む前に二胡の竿に固く巻きつけなければならない。
これがなかなか難しいらしい。
微妙な作業は老師が、力作業はティエンパパが担当する。私は見てるだけ^^;

って書いてしまうとスムーズに作業が進んでるように見えるけど、実際は老師が筆談と身振り手振りで作業内容を説明し、私たちに何をするのか指示し、私たちが指示内容を理解してその通りに動くのに、そりゃーもうずいぶん時間がかかったのだ。
指示通りに動いてるつもりでも「違う違う」と老師は首を振り、何が違うのかが分からなくてまごまごしたり、そのうちにせっかく熱湯で温めたテグスが冷えて、もう1回お湯を沸かしなおしたり。

それに、基本的にホテルの部屋の灯りって、スタンドと間接照明だけなのだ。かなり薄暗い。
そんななかで続く老師の微妙な作業。私たちも息を殺して老師の手元を見つめる。

ノックの音が聞こえ出てみると、京劇から帰ってきたパイさんとチエンさんだった。
「えっ、老師、来られてるの?」
カタコトのできるパイさんにすがりつく私(笑)
いつの間にかティエンママ、ティエン坊やもやってきてて、みんなで黙ったまま注意深く老師とティエンパパの手元を見守る。
ティエン坊やが「日本じゃ新年だね」と小声で言うので時計をみたら23時。
そうだね、今日はおおみそかで、明日は新年だったんだよね。日本は1時間早いから、もう新年なんだね・・・。

私の帰りが遅いので、コンさんカオさんも様子を見にやって来る。
ごめん、長引いてるの。もう2人ともお風呂に入って先に寝てて。明日早いんだから。(^^;;
ティエン坊やは疲れたのか、いつの間にか眠ってしまっている。
私も今朝は早起きしたし、街中駆けめぐったし、感情の起伏も激しかったし、疲れてさっきからあくびばかり。

そのうち、ティエンパパの二胡に金具が無事取り付けられ、次に私の二胡の番。
それも終わると老師が中国語で金具の使い方の説明をされてたようだけども、何一つ分からなかった(ぉぃぉぃ)

次に老師が、私の琴馬がよくないので交換したほうがいいんじゃないか、と言う(筆談で)。
音は大きく響くけども音色は良くないのだそうだ。音量が多少下がっても音色がいいのを使ったほうがいい、って。
「いろいろ試して研究しなさいね。」
でも日本ではあんまり琴馬売ってないんですよぅ。
「じゃあ今日紫檀製のを少し持ってきたから付けてみる?」
お、紫檀の琴馬だといい音しますねぇ。
「他に琴馬欲しい人いる?」
弦とか弓とかも注文したいってみんな言ってますが。
「弦は持ってきてるけど弓は明日パイさんに預けとくということでいいかい?^^;」
ということで老師がテーブルに琴馬や弦を並べ、即席二胡パーツ販売店さんに。
新しい弓が欲しいと言ってたカオさんも電話で呼び出す。

みんな弦と琴馬など欲しいだけ取り、それ以外のもの(弓など)を注文したい人は紙に名前と数量を記入。そして老師に支払うためにその代金を計算しだす。
自分が何をどれだけ買うのか把握できなくて電卓を何度もたたく人、自分の手持ちの人民幣がいくらあるのか数え始める人、もう人民幣を使い切ってしまったためまだ残してる人に借金を申し込む人、、、
それに一部ドル立てで払う人もいて、レート換算に四苦八苦してみたり。
室内大混乱。

そんな中、ふと腕時計を見ると午前0時5分。あ〜〜〜〜〜っ!!
チエンさん
「私ね、年越しの瞬間に小声でハッピーニューイヤーって言ったのよ。でもみんなそれどころじゃなくて、誰も聞いてくれてなかったけど・・・」
ある意味、一生忘れられん年越しやな・・・

ようやくすべて収まったのが0時15分くらい。
みんなくたくた。
老師、注文書片手に帰っていく。真夜中の凍てついた道を、自転車で(爆)

みんな自分の部屋に引き上げ始めるが、私はチエンさんと日本出発前に言っていた「大晦日の夜は酒盛り」の約束を強行することにする。
今日1日いろんなことありすぎたしちょっと飲ませろよ!みたいな感じ。

とりあえず部屋に戻って入浴。
午前1時、カオさんが「いま飲んだら絶対明日起きられなくなるから!」と強く引き止めるのを振り切って、市場で買ったビールとくるみ(みやげ物だったのに・・・)を片手にチエンさんの部屋にGO!

パイさんチエンさんとなんかいろいろ話しながら飲みながら食べながら、他人の部屋に長々と居座る。
話題は主に人生観ですか? 疲れてたのであんま覚えてないけど〜(笑)
チエンさんが『にこ通』上の私の文章から私のプロファイリング(人物像分析)をしようとしていたことを知る。
でも残念ながらネット上での私はネコかぶってるから、あんまり参考にならなくってよ。おほほほほ(^o^)

チエンさんと言えば。
「北京にいる間も『にこ通』更新してたの?」
してへんて(^^;;
五ツ星ホテルなら、ロビーにネットOKのパソコンが置いてあったかもしれんけども。
「私の友達が、更新具合で私が北京で無事に過ごしているかどうか、チェックするって言ってたのに。」
・・・・・・・・。(笑)

  #チエンさんのお友達へ。
    チエンさんは北京でとってもお元気でした、はい。(笑)

ところで、中国の缶ビール(缶飲料全般だろうけど)って、まだプルトップを引き抜いて取ってしまう方式なのね。
今の日本はポイ捨て防止のためにプルトップが抜けない方式になってて、プルトップを起すだけで飲み口が開くようになってるんだけど、中国の缶は引き起こしてさらに取り去ってしまわないと飲み口が開かない。
昔は日本も全てこういう方式だったんだけど、もうプルトップが抜けない方式に慣れてしまってるので、缶を開けるときに戸惑ってしまう。

2時半、ようやく自分の部屋に帰る。(2人ともお付き合いありがとうございました。m(_ _)m)
部屋に戻ると当然みんなもう寝てて、私も歯を磨き、服を着たままベッドにもぐりこむ。
目覚ましが鳴るまであと2時間。

[目次] [前話へ] [次話へ]
[index]