北京音楽留学体験記
by てんてん

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(2002/7/8)
第十九話:「7月7日の巻」


 ご無沙汰しております。5月に出産し、赤ちゃんのいる生活に馴染んできた今日このごろです。
 さて、7月7日はたなばたさまですが、留学生活を通して、私にとっての7月7日は別の意味合いを持つようになりました。

 中国では7月7日は「七七事変」と言って、1937年7月7日の蘆溝橋事件を忘れないために、連日連夜、日中戦争関連のドキュメンタリーや日中戦争を題材にした映画を放送しています。
これほどまでに放送されていると、否が応でも考えざるをえません。日本で歴史を勉強した時は、これほどまでに教えられませんでしたが。

 映画の中の日本兵は皆悪人顔で、しゃちこばって話し、話す言葉は、「ばかやろー」か「みしみし」のこの二つ。
私はこの「みしみし」が一体何をさすのかが始めはわかりませんでした。

 ある時、Z老師宅で、夕飯をごちそうになっている時に、Z老師が「日本でごはんのことをみしみしっていうんだよね。」と食卓の話題にしました。
私は「みしみしとは言わないですよ。ごはんっていいます。」というと、一斉に食卓を囲んでいた家族の方がたに「違うよ。ごはんのことをみしみしっていうんだ。」と逆に反論されました。
そこで、あの映画を思い出し、きっと、中国の人は日中戦争の映画を見て、めしのことを「みしみし」と覚えてしまったんだと愕然としました。

 何より悲しいのは、日本を理解する時に日中戦争が題材であることで、それもばかやろーとか、めしという言葉だとかが、悲しく思えます。そして、それを見た多くの中国の人がそれを信じていることです。
 でも、多くの日本人がデフォルメされた中国人の像から、中国を理解していることと同じことだと言えます。
 本当の理解は、国と国、会社と会社などの大きな単位でなく、個々人の交流と信頼関係によって、理解が深まるのではと思う留学生活でした。

 特に芸術というのはお互いの尊敬の上に理解しようというものがあり、中国へ音楽留学する意味というのが、二胡の技術の向上以外にも大きな意味が横たわっているのを感じるものでした。

 そのような映画にへんてこな着物を着た芸者が出てくるのも付け加えたいと思います。


 さて、次回は、晴れて転校の巻で、このお話の中でやっと、ZY音楽学院に入寮します。どんな学生生活が待っているのでしょう。

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