北京音楽留学体験記
by てんてん

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(2002/10/5)
第二十二話:「しまった。独奏会をのがす、
そして、広東音楽との出会いの巻」


 いろんな手続きが一段落したある日、台湾の友人が「てんてん、昨日のMさんの二胡独奏会行った?」と話しかけてきました。
私は学校の手続きにおわれ、琴房楼(練習室)の掲示板を見落としていました。
Mさんというのは、その頃、ZY音楽学院の大学生で、すでに若手の演奏家として、北京では有名な方でした。もう今では卒業されて、今年の2月には日本に来られていた方です。
 台湾の友人に「てんてん、なにしてんの。今度はちゃんと教えてあげるからさ。」と慰められました。その言葉どおり、二胡関係の演奏会やテレビで放映されていると、必ず、「てんてーん、テレビやってるよ。」と声をかけてくれました。
その後もいろんなことで助けてくれたのは台湾の友人たちでした。
私は何にも、助けてもらったお返しをできずにいます。今でも心にひっかかっています。

 主な演奏会は北京の音楽ホール(西単近く)であり、その場合は外部でもチケットを入手することができました。
ところが、スポンサーがついての招待券のみの演奏会も多く、一学生が入手することは困難で、老師や仲間の力によるものでなければ、なかなか聞きにいくことができませんでした。
また、学内のホールでは、いろんな演奏家の特別講義があり、今は亡きメニューインの公開講義や、広東音楽の有名な奏者のYさんの集中講義などがありました。
また、学生の演奏会がちょこちょこありましたし、学期ごとの試験もいくつかのホールで行われていました。

 先の広東音楽の奏者のYさんはなるべく普通話(北京語)で話そうと努力してくださっていましたが、講義がすすみ熱くなると、広東語に近くなるので、聞き取るのが更に難しくなりました。
広東音楽の発展についていくつかの演奏家(呂文成や劉天一など)の交流や教育の方法について、話しをしていましたが、肝心な所がさっぱりわからないという感じでした。
 特に強く主張していたのは、広東音楽の際には広東高胡を使う点でありました。
五架頭と呼ばれている楽器編成では、二弦(広東高胡)、提琴(椰子の実でできた板胡であるが、いわゆる北方のものではない)、三弦、月琴、横簫の5つの種類で構成されています。
 なんとなく、広東高胡を使わないのは、本来の広東音楽ではないと言いたげでした。
膝に挟み込む奏法や、それによって持ち方も二胡とは若干異なりますし、ビブラートや運指の方法、開放弦を好んで使う点、開放弦に特殊なビブラート(私にはトリルに聞こえる)を使うなど、非常に興味深いものでした。

 確かに北京や上海で聞く高胡はオーケストラでよく用いられているものであり、膝で挟んでひく広東高胡とは音色も随分違っています。
ただ、北京で聞く、本場の広東高胡は北京の寒く乾燥した季節の中ではあまりよい響きではありませんでした。
北京では北京の楽器が、上海では上海の楽器が用いられ、発展するのは気候やそこからくる材質の問題、言葉の発音の響きなどからも当然なことと言えます。ですので、北京で広東高胡を用いる人は広東で勉強した方かそこの出身の方だと言えましょう。
 広東音楽は流行して、大都市の主要な民楽オーケストラでは、広東音楽もよく演奏されていますが、広東地方のものとは雰囲気は大幅に違うのではないでしょうか?うねり方が。。。。
 私たちもよく知っているのは<雨打芭蕉>や<平湖秋月>、<早天雷><孔雀開屏>などいろいろあるのではないでしょうか?
 私はいまだ、広東音楽の本場に足を踏み入れたことはありませんが、いつの日か訪れてみたいと思っています。

 さて、広東高胡に会えるのはこの半年後のエピソードです。
このエピソードはその時に、詳しくお話したいと思います。その時にCDなどの紹介もしたいと思います。



 *おまけ:
これらは北京・上海・広州の高胡です。膝に挟む広東高胡はどれでしょうか?
なお、広東高胡の弓は壊してしまい、現在は北京製のほそっこいものを使用しています。
上海高胡は某M氏より借用中のものです。
(画像をクリックすると別ウィンドウで拡大表示されます。)

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