北京音楽留学体験記
by てんてん

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(2000/9/27)
第六話:「基礎改造計画練習の巻」


 てんてんでございます。
前のお話の続きで、Z老師が、私のために立てた基礎改造計画の全貌をお話ししようと思っています(一向に話がすすみませんね)。

 その前にZ老師についてお話したいと思います。
皆さんは、一体どんな人物かと思われているかと思います。

Z老師は若い頃はある楽団のソリストでしたが、後に教育家として、音楽学院に勤められて、定年はしているものの、アジアの二胡コンクールでは、大体は審査員をつとめられる有名人です。
でも、一方で、北京ではあの爺さんかと、少し煙たがられているようです。
物忘れが激しく、音楽関係者はあからさまに、「ぼけているんでしょ」と言っていました。
自分でも都合が悪くなると、そう言います。
しかし、弟子の私が、後ろからじーっと見ているとなんだか、計算しつくされているようなそんな気がするのです。

 Z老師の年代は子どもの頃は抗日戦争で、青年の頃は国内の戦争、働き盛りの時には文革と、それは考えられない程の苦労があっただろうと推察しています。Z老師の処世術なのではと思っています。

 なぜ、こんな経歴をお話するかと言えば、私の会う老師というのは、偉そうな先生でもなく、一風変わったというか、二胡おたくというか、もう、かなわんおじいさんというか。いろんな面を見せて下さいました。
 うーん、これらの話は次回にお話したいと思います。

 では、問題の基礎改造計画です。
 私は以前に中国琵琶を学んでいたものの、二胡に関しては、日が浅く、いろんな問題点がありました。

 一番に音律の問題です。
中国音階は平均律とも純正律とも違うようで、五度相生律というものらしく、その他に地域によって、ある音を高めにとったり、中立音と呼ばれるピアノの鍵盤上にはない音があったりと、その違いに驚きと違和感を感じていました。

 昔々にヴァイオリンをしていたのと、中国音階になれないのとで、音律がおかしいとのこと。特にD調第一把位のミとラが不安定だとか。左手の運指の配置を安定し、音律を正しくする練習曲を処方されました。
 また、第二把位の音も安定しないのと、換把の際にスムーズでないこと、弓の接弦が甘いことなど、また、右手の問題は、快弓の時に手首が固くなってしまうようで、それらに対応する練習曲を処方されました。
 結局、メニューは、まず開放弦の練習(必ず五分はする)、長弓練習、快弓練習、小指の練習を含めた活指練習、五声音階をいろんな調式(D・G・F・A・C・フラットB)ですること、溜手曲という細かい音が並んでいる練習曲、快弓換弦練習などで、全部で12、3曲ぐらいでした。

 これらの練習曲をまじめにすると、なんと4時間かかってしまうのです。
さすがに閉口しましたが、慣れると2時間半に短縮でき、その後から、もらっている曲、次にするであろう曲の譜読みをし、一日、4、5時間はひいていたでしょう。あっという間に、時間が過ぎていきます。
 でも、この基礎改造計画のおかげで、ずいぶん助かりました。

 よく言われるのですが、何か楽器をしてた方が二胡の上達は早いかと?
実際は持っている癖を直すのに倍の時間がかかるので、よしあしがあるようですね。老師もそう言ってました。
 二胡をひく理想的な手になるのにはそれから更に時間がかかり、現在でも、苦心しています。

 次回は<Z老師のおもしろ逸話集1>をお送りします。



  • いろんな練習曲がのっている<二胡広播教学講座>Z老師著は今は絶版です。考級曲集は少し練習曲が少な目と思われる方、練習曲に悩める方、最近は二胡の練習曲教本はいっぱい出版されています。自分のお気に入りを見つけて下さい。
     ずいぶん古くはなりました(特に小曲がね)が、私はこの2冊を使っていました。
     <二胡練習曲選>王国潼 張韶 編選 人民音楽出版社(写真左)
     <二胡練習曲選続集>王国潼 周耀コン 張韶 編選 人民音楽出版社(写真右)
     (画像をクリックすると別ウィンドウで拡大表示されます。)


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