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(2000/10/1) 第七話:「Z老師のおもしろ逸話集1の巻」 今回はお約束通り、Z老師との日常と、Z老師のおもしろ逸話集です。 我が愛すべきZ老師のレッスンの時間はむちゃくちゃです。 レッスン時間は、一応1時間の約束なのです。 が、昼の3時ごろから始まり、世間話をして、やれやれレッスンかと思うと、別の話になって、大抵私が「Z老師、お腹がすいて、二胡がひけません。」と言うと、レッスンが中断し、ご家族みんなと晩御飯を食べ、また、レッスンを続けるという、疲労困憊のレッスンでした。 語学学校の寮に帰るのは早くて夜8時という具合でした。 でしたが、中国の人の日常がいつもそこにあり、私は馴染むまで時間がかかりましたが、今では、懐かしい所になりました。 昔は芸事を学ぶのは住み込みで習っていたそうですね。 Z老師に一日振り回されることもありましたが、昔の学び方はこんなんだったんだろうかと想像していました。 私は身体が弱く、お腹をすぐに壊したので、阿姨(あーいー:おばさんの意味。ここではZ老師の奥様をさす)がおかゆを作ってくれました。 Z老師も阿姨も江南の出身なので、少し甘い緑豆が入っているやさしいお粥でした。 夕御飯は丸テーブルで、お孫さんまで一緒にご飯を食べていました。 皆食べるのが早く一人とろとろ食べていると、「てんてんはなんで、食べないんだ。」と、私の器にがんがんおかずを入れられます。 阿姨が「どうして、小食なのか。だから、そんなにやせっぽっちなんだ。」と本気で怒っていました。 ある日、菜っぱの慢頭が食卓に出てきました。 お孫(小学5年くらいの男の子)さんが、7つ食べたそうで、私は無理矢理に5つ食べさせられました。 その後、体調を崩したことは言うまでもありません。 さて、Z老師のお宅と、老師の練習場でレッスンがあったのですが、その練習場へ初めて行った時に、こんなことがありました。 私はバスにのり、後ろから、Z老師が自転車でバスを追っかけて来ました。 事前に降りるバス停のこと、どの胡同(フートン:横丁)かとか、全部打ち合わせていたのにもかかわらず、バスの窓に向かって、「てんてーん、てんてーん、次のバス停で降りるんだー。そこで、必ず待ってるようにー。」と名前を大声で、叫びながら、バスに接近して来ました。 バスの乗客は、私を見ながら「あの爺さん、危ないじゃないか」と文句を言い始めました。 私ははらはらしながら、大声で、「老師。わかってるから。大丈夫。」と叫びましたが、さらに、老師はバスに接近し、「わかってる?次だよ。次だからね。」と言うと、バスがぶるるると急発進し、Z老師はみるみる小さく遠ざかっていきました。 私はZ老師の方が心配だよ。 また、二人で北京の王府井のデパートに行ったことがありました。 ストップウォッチを見にいくためです。 デパートへはZ老師はもちろん自転車で、私はその後を走らされてついて行きました。 デパートの階段で、Z老師はぴたりと止まり、「てんてんや、階段を上がる時こそ、気功を使うのです。」と、私は「へっ????」。 そして、そんな私をほうって、一段一段深く呼吸をしながら、上っていきます。後ろを振り向き「てんてん、まねをしなさい。」と。 私はわからないままに同じ動作で上っていきました。 若いカップルが話かけてきます。「何やってるの?」 Z老師は「気功を使って、階段を上るんだ。一緒にどうか?」 カップルは怪訝な顔をして去って行きました。 うーん、万事この調子なんです。 次回は楽器の試験の巻をお送りします。 |
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