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(2000/10/18) 第九話:「レッスン中のお客様<河南小曲>の巻」 てんてんでございます。 レッスンは週2日、Z老師の出張以外は滞りなく続いていました。 Z老師は一応は二胡業界でも古いので、来客が多く、来客と話しをしながら、私のレッスンを見ることもありました。来客は音楽関係者なので、レッスンに口を出すこともあり、ずいぶん鍛えられたと思います。 今回のお客様は河北省(河南省に近い町)の二胡の先生で、S老師という方でした。Z老師と子ども向けのテキストを書くのだそうで、打ち合わせに来られていました。 S老師は中年の男性で、やさしそうな老師に見えました。 Z老師は「てんてん、いい機会だから、S老師に河南小曲を習いなさい。その土地の風格を知るにはいい機会だ。じゃ、S老師頼みました。」と気を遣い、自分の部屋に去って行きました。 <河南小曲> は、日本にいた時から、理解しにくい曲でした。大体、この河南地域の墜胡なるものもその当時見たこともなかったし、実際聞いたこともなかったので、滑音の雰囲気がつかみにくものでした。 それを初見でやれって? それも、すぐに? S老師についてひけと? そんなあ。。。 でも、その曲を習ってみると印象は変わりました。こんな風に音を作っていたのかと、とってもおもしろく感じました。 レッスンは、S老師がいくつかのフレーズを切って、楽譜を赤ペンで手直ししながら、二胡をひき、すぐ後に同じようにひくというものでした。譜面の読み間違いには厳しく、うまくできているとすぐに表情が変わりにっこりして下さいました。 中国の老師は反応が正直で、老師の顔を見ると、できがわるいのか、なんとかやれているのかすぐにわかります。 一つの曲を通して、わくわくどきどき、老師から何かをキャッチし、また返す。そんなレッスンでした。 最後にZ老師が、先ほどS老師からもらった名刺を大事そうに手渡し、こういいました。 「てんてん、この名刺と赤いぺんのついたこの楽譜を大事にしなさい。君が引き継いだものは、とても大事なもので、それが君の宝になるんだよ」と。 こうして、一つ一つの曲を、いろんな思い出とともに、いろんな老師たちから受け継いでいくのです。 私はこうして引き継いだものをまた、誰かに渡したいと思っています。けれども、短期間で受け継いだものなので、それをはたして、渡すことができる水準なのかどうかも難しいことだと思っています。どうなりますやら。 さて、次回は上海へレッスンへ行くの巻です。
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