歌 舞 伎 − 観 劇 記 - |
平成14年
1月:一谷嫩軍記、春興鏡獅子、人情噺文七元結
2月:菅原伝授手習鑑
3月:俊 寛、十六夜清心
4月:鴛鴦襖恋睦言、元禄忠臣蔵、忍夜恋曲者、壇ノ浦兜軍記
5月:寿曽我体面、素襖落、義経千本桜、京人形
6月:鬼次拍子舞、船弁慶、魚屋宗五郎
7月:御摂勧進帳、吉野山、暗闇の丑松
8月:播州皿屋敷、真景累ヶ淵
9月:佐々木高綱、怪異談牡丹燈籠
10月:椿 姫
11月:本朝廿四孝、松浦の太鼓、鞍馬獅子
12月:榛説弓張月
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
一谷嫩軍記 (いちのたにふたばぐんき) 熊谷陣屋 |
熊谷直美 幸四郎 藤の方 松 江 源義経 染五郎 熊谷妻相模 雀右衛門 |
源平一の谷の合戦で、源次の武将熊谷直実は平気の敦盛を討ち取り、首実験に来た義経にその首を差し出すシーンで、熊谷の妻、相模が・・・・ 実は、敦盛と同じ年の息子がおり、思わず駆け寄って・・・ もののふ(武士)の人間性の一面を旨く描き出していた名作である。 |
新歌舞伎18番の内 春興鏡獅子 (しゅんきょうかがみじし) 福地桜痴 作 |
獅子の精 勘九郎 胡蝶の精 岡村研祐 胡蝶の精 中村江梨 |
正月15日、鏡曳きの余興に、将軍の前に連れ出された女小姓弥生が踊る前半と、後半はがらりと変わって獅子となって踊る対比がダイナミックで絢爛である。胡蝶の精の小役がまた可愛い。 |
人情噺 文七元結 (にんじょうばなしぶんしちもっとい) 三遊亭円朝 口演 竹柴金作 補綴 |
左官長兵衛 吉右衛門 女房お兼 松 江 手代文七 染五郎 娘お久 宋之助 角海老女房 玉三郎 |
左官の長兵衛羽酒と博打が好きで貧乏のどん底。見かねた娘お久が、自分から吉原の角海老に身を売り、さすがの長兵衛も今度こそは酒も博打も止めようと決心するが・・・ 名人円朝の人情噺をうまく脚色し、なかな楽しませてくれる芝居となっていた。特に吉右衛門の酔っ払いぶりは天下一品であった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
菅原道真公没後千百年 通し狂言 菅原伝授 手習鑑 (すがわらでんじゅてならいかがみ) (昼の部) 加茂堤 筆法伝授 道明寺 (夜の部) 車引 賀の祝 寺子屋 竹田出雲 三好松渚 並木千柳 作 |
梅王丸 團十郎 桜 丸 梅 玉 藤原時平 芦 燕 松王丸 吉右衛門 千 代 玉三郎 八 重 福 助 武部源蔵 富十郎 |
今回は、菅原道真没後千百年との事で一日通しての「菅原伝授手習鑑」であった。我々は、残念だが、夜の部のみしか観劇できなかった。 昔から学問の神様(天神様)と言われた菅原道真(菅丞相)を中心にした義太夫の名作を歌舞伎化したものである。 丞相に仕えていた武部源蔵は、丞相が九州へ流されることになった時、その一子菅秀才を匿って寺小屋を開いて暮らしていた。 そこへ、藤原時平がかぎ付け、一子を首にして差し出せとの命令が届く。やむなく身代わりの首を首実験にきた松王丸に見せてその場を繕うが、実はその身代わりの首は、松王丸の子供であり、松王丸が委細承知の事であったと言う悲劇。 身代わりの子の母親(松王丸の妻)の玉三郎が難しい役を良くこなしていた。源蔵、八重、松王丸の演技も見応えがあった。 寺子屋での、習字のシーンで、悪がきたちの振る舞いがまた愉快であった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
平家女護島 俊 寛 (しゅんかん) 近松門左衛門 作 |
俊寛僧都 幸四郎 丹左衛門 三津五郎 丹波少将 橋之助 海女千鳥 孝太郎 平半官頼 友右衛門 瀬尾太郎 左團次 |
平家を滅ぼそうと謀った談合が発覚し、鬼界が島に流された俊寛、丹波少将、平半官の元に、都から赦免状を持った丹左衛門の一行が到着。 しかし、丹波少将の妻となった千鳥は連れて行けないとの事。頑と言い張る瀬尾を殺し、その罪を負って島に残る代わりに千鳥を乗船させた俊寛。 遠ざかる舟を見送る俊寛。「悟りきっても凡夫心」の心境を見事に幸四郎が演じきった。このシーンの舞台は圧巻であった。波の動きと遠ざかる舟、見事な舞台装置であった。 |
通し狂言 十六夜清心 (いざよいせいしん) 三幕五場 河竹黙阿弥 作 |
清 心 仁左衛門 十六夜 玉三郎 俳諧師白連 左團次 白連女房お藤 秀太郎 |
遊女十六夜と深い仲になったことがバレ、寺を追われた清心。二人で川へ身を投げたが、十六夜は白連に助けられ、泳ぎの達者な清心も死に切れず別々に・・・ そして、再び出合った二人が悪の道に走る様を描いている。開き直った清心と十六夜の演技が何とも言えず良かった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
鴛鴦襖 恋睦言 (おしのふすまこいのむつごと) 藤間勘祖 振付 常磐津連中 長唄囃子連中 |
河津三郎 梅 玉 股野五郎 橋之助 遊女喜瀬川 福 助 |
鴛鴦と書いてオシドリと読ませる。共にオシドリを意味する漢字だそうだ。「オシドリ夫婦」は仲の良い夫婦のことを言うが、この舞台も当然、この言葉どおりの夫婦ものだ。 最初、遊女喜瀬川を挟んで、白塗りの河津と、赤顔の股野の3人がセリ上がりで登場し、遊び気分の多い楽しい踊りを展開し、後半は河津が雄の鴛鴦、喜瀬川が雌の鴛鴦となってしっとりと踊った後、敵である股野に挑みかかるという設定になっている。 それこそ序破急の展開は見応えがあった。常磐津と長唄囃子が良かった。 |
元禄忠臣蔵 (げんろくちゅうしんぐら) 南部坂雪の別れ 景山青果 作 |
大石内蔵助 吉右衛門 瑤泉院 鴈治朗 |
雪の日、大石が浅野内匠頭の未亡人の瑤泉院(ようぜいいん)の元に尋ねる。本心を言わない大石に怒った瑤泉院であったが、大石から手渡された「東下り日記」を読み、やっと大石の本心を知り、万感を込めて見送るというストーリーである。 御馴染みの場面を吉右衛門と鴈治朗のコンビが見事に演じていた。 |
忍夜恋曲者 (しのびよるこいはくせもの) 将門 常磐津連中 |
傾城如月 魁 春 大宅太郎光圀 團十郎 |
平将門の遺児夜叉姫(形成如月)の棲む古御所に武者光圀が探りに来た。 光圀の正体を見抜くために、あの手この手の色仕掛けでもちかける如月のくどき、そして正体を現した姫がガマの妖術を使うという舞踊劇である。 夜叉姫の気品、幽玄美、凄み等なかなかのものであった。 |
壇ノ浦兜軍記 (だんのうらかぶとぐんき) 阿古屋 |
遊君阿古屋 玉三郎 岩永左衛門 勘九郎 畠山重忠 梅 玉 |
畠山重忠は、恋人景清の行方を取り調べるのに、阿古屋に三味線、琴、胡弓を弾かせるのであるが、その大役を玉三郎が見事に弾きこなしたのは見事であった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
寿曽我体面 (ことぶきそがのたいめん) |
工藤祐経 三津五郎 曽我五郎 新之助 曽我十郎 菊之助 |
分別をわきまえた兄曽我十郎、と血気あふれる弟五郎が大勢の中で、父の仇工藤祐経(すけつね)と対面。さて兄弟はそして祐経は如何に。そんな一幕ものであった。 長い年月をかけて作り上げてきた歌舞伎の様式美、技巧、型が見事であった。 |
新歌舞伎十八番内 素襖落 (すおうおとし) 福地桜痴 作 |
太郎冠者 富十郎 姫御陵 時 蔵 次郎冠者 十 蔵 |
大酒のみの太郎冠者、主人の使いで出向いた先ですすめられるままに杯を重ね、酩酊していく様がまた見事。土産にもらった素襖を主人に手渡すまいとの振る舞いがまた絶妙、そんな感じの無条件に楽しめる芝居であった。 |
義経千本桜 (よしつねせんぼんさくら) 川連法眼館の場 |
佐藤忠信 松 緑 源義経 團十郎 静御前 雀右衛門 川連法眼 左團次 |
静御前が川連館へ来て見ると、道中に供をしてきた佐藤忠信は既に到着しているとの事。 そういえば道中の忠信の様子がおかし事を思い出し、静は義経から預かった鼓を打つと、忠信(実は狐)が現れ、その鼓の皮は自分の親のものであると白状する。 忠信の狐の本性をあらわす演技が見ものであった。 |
銘作左小刀 京人形 (きょうにんぎょう) |
左甚五郎 菊五郎 京人形の精 菊之助 |
名人左甚五郎が心を込めて作り上げた等身大の京人形。女の心と言われる鏡を懐に入れると十雛踊りを披露するが、鏡を一旦取り落とすとギクシャクとした踊りとなる。 優美さとギクシャクした踊りを菊之助が見事に演じていた。また、見事な傾城ぶりで、周囲の観客席の小母さんたちのため息が聞こえてきた程であった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
鬼次拍子舞 (おにじひょうしまい) |
長田太郎 新之助 松の前 菊之助 |
山の中で、長田太郎と白拍子の松の前が、お互いの心を探りあいながら名笛を奪い合う拍子舞。 なお、拍子舞とは、一曲のうちの一部を役者自ら歌いながら舞う歌舞伎舞踊の一種である。 |
新歌舞伎十八番内 船弁慶 (ふなべんけい) |
静御前 松 緑 源義経 玉三郎 舟 長 吉右衛門 舟子岩作 菊之助 舟子浪蔵 新之助 武蔵坊弁慶 團十郎 |
まず辰之助改め四代目尾上松緑襲名披露の口上があった。若い四代目の誕生である。先代の風格が出せるか、今後の楽しみでもある。 九州へ落ちていく義経一行が、兵庫県の大物浦で静御前と別れる場面。松緑が静御前の優艶な踊りと、平知盛の霊を見事に演じ分けた。 |
魚屋宗五郎 (さかなやそうごろう) 新皿屋舗月雨暈 (しんさらやしきつきの あまがさ) 河竹黙阿弥 作 |
宋五郎 菊五郎 磯部主計之助 松 緑 |
所謂、生世話物(きぜわもの)、狂言である。 奉公先の殿様に妹を殺された魚屋の宋五郎が、訪れた妹の同僚からことの真相を聞き、あまりの不条理な理由にやり切れず禁酒を破って酒を煽り、酔うにつれ人が変わっていく様がリアルに見事に演じられていた。 いつの世の酒乱もかくありなん、そんな感じの芝居であった。菊五郎の宋五郎は傑作であった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
御摂勧進帳 (ごひいきかんじんちょう) 加賀国安宅の関の場 初世桜田治助 作 岡鬼太郎 補綴 |
武蔵坊弁慶 右 近 九郎判官義経 亀治郎 富樫左衛門 門之助 |
歌舞伎十八番でご存知勧進帳は、富樫の温情で無事安宅関を通過したが、今回の芝居では、弁慶が囮として捕らえられるというお話し。 弁慶が泣いたりわめいたりした後、頃合を見て縄を切り、番卒の首を次々と引っこ抜き、大きな桶に投げ込み、金剛杖でその首を洗うようにかき混ぜると言う奇想天外な芝居。 首が次々と桶から飛び出すシーンはただ呆気に取られるだけであった。ユーモアたっぷりのおおらかな芝居で、無条件に面白い。 俗に「芋洗い弁慶」と呼ばれている代物。得意満々の弁慶、右近が傑作であった。 |
義経千本桜 吉野山 (よしのやま) |
佐藤忠信 猿之助 静御前 芝 翫 逸見藤太 段四郎 |
静御前が家来の佐藤忠信を供に、都から全山桜の盛りの吉野山にやってきて、義経の形見の初音の鼓を手に踊ると、忠信の様子が変になった。 そう忠信は実は狐で、初音の鼓の皮は親狐のものであったと言う、御馴染みの芝居である。 佐藤忠信、実は源九郎狐の猿之助の狐ぶりは見事であった。 |
暗闇の丑松 (くらやみのうしまつ) 三幕 長谷川伸 作 |
暗闇の丑松 猿之助 女房お米 笑 也 料理人巳之吉 門之助 四郎兵衛 段四郎 お米母 東 蔵 |
料理人丑松とその妻お米の若夫婦。しかしお米の母は、お米を金持ちの妾にしようと折檻の手を緩めない。生一本の丑松は、母とその用心棒を殺し、お米を兄貴分の四郎兵衛に預け逃げる。 一年後、丑松は雨宿りに入った板橋の女郎屋で、出てきた相手の女郎を見て、びっくり。四郎兵衛に騙されて女郎にされていたお米だった。 江戸時代の風呂屋の釜場や、板橋の安女郎屋の場面がリアルに描かれていた。秀作。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
播州皿屋敷 (ばんしゅうさらやしき) 一幕 浅田一鳥 作 |
朝山鉄山 橋之助 岩淵忠太 亀 蔵 お菊 扇 雀 |
8月恒例の納涼歌舞伎である。今回は御馴染み皿屋敷と累ヶ淵を見た。 一まーい、二まーいと井戸の中から聞こえるか細い声。宝の皿を割った咎で井戸に身投げしたお菊の伝説をもとにした怪談。 腰元お菊への想いが叶わない腹いせに、悪家老鉄山はお家転覆と皿紛失の罪をなすりつけ、井戸に吊るし折檻の上斬殺する。亡霊となって復讐を遂げる様を見事に描いている。まさしく、納涼歌舞伎であった。 |
真景累ヶ淵 (しんけいかさねがふち) 豊志賀の死 一幕三場 三遊亭円朝口演より |
豊志賀 福 助 弟子新吉 勘太郎 娘お久 七之助 伯父勘蔵 勘九郎 |
浄瑠璃の師匠である豊志賀は、息子ほど年の離れた新吉と深い仲となっているが、病気がちでひがみぽっくなっている。 稽古に通ってくる若い娘お久と新吉との仲を勘ぐり、嫉妬に燃えつつ・・・ 円朝の怪談噺をもとにした、女の執念を描いたもの。豊志賀を演じる福助の老婆ぶりがまた板についていて見事であった。七之助のお久も良かった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
佐々木高綱 (ささきたかつな) 岡本 綺堂 作 |
佐々木高綱 梅 玉 おみの 時 蔵 娘薄衣 扇 弱 僧智山 我 當 |
宇治川の合戦や頼朝の強兵で手柄を立ててきた勇将佐々木高綱の後日談。 戦の際、罪の無い馬子を殺し、その馬を奪った自分の行為や、頼朝の戦勝後の心変わりなどで心穏やかでは無い日々を過ごしていた折、自分を仇と狙う馬子の娘おみのと出会うが、結局出家することを誓い、高野山へと旅立つ様を描いたもの。 苦渋を秘めた梅玉の心の演技が見ものであった。僧智山との関わりもなかなか見せた。 |
通し狂言 怪異 談牡丹燈籠 (かいだんぼたんどうろう) 七幕十四場 三遊亭円朝 口演 三世河竹新七脚色 寺崎祐則 補綴 |
関口屋伴蔵 吉右衛門 女房お峰 魁 春 娘お露 孝太郎 召使お米 吉之丞 萩原新三郎 梅 玉 |
お馴染の牡丹燈籠である。浪人萩原新三郎に恋焦がれて死んだ旗本飯島平左衛門の娘お露は、夜毎召使のお米を連れて、新三郎のもとに通ってくるが、この二人が幽霊であることを知り、金無垢の海音如来と護符で身を守ろうとする新三郎。 所が、強欲な下男の伴蔵が、幽霊より百両で、如来像をすり替え、護符を剥がすことを請け負ったので、結局新三郎は幽霊に取り殺されてしまう。 カランコロンと下駄の音を響かせ、牡丹燈籠を片手に毎夜訪れる幽霊の設定とストーリー、なかなかの傑作であった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
椿 姫 (つばきひめ) アレクサンドル デュマ・フィス作 渡邊美香 翻訳 齋藤雅文 脚色 栗山昌良 演出 |
マルグリッド・ゴーチェ 大地 真央 アルマン・デュヴァル 赤坂 晃 ジレー伯爵 岡田 真澄 ジョルジュ・デュヴァル 上條 恒彦 |
今回は現代劇である。大地の舞台を観るのはこれで2回目であった。前回は「ミツコ」で、やはりヨーロッパを舞台にしたものであった。今回は、歌舞伎をお休みしてこちらの観劇となった。 椿姫はオペラ化もされている。今回は原作をもとにした舞台であるが、良く出来ていた。 椿の花が好きで、いつも身に着けていたから椿姫と呼ばれるようになったマルグリッド・ゴーチェの半生である。 19世紀半ばのパリ、上流階級の男達をパトロンにして生きていくマルグリットが、青年アルマンと出会い、真実の愛に目覚めていくが、そこにアルマンの父が現れ・・・ 何度見ても、ヒロインの大地は、綺麗で見事な演技であった。 今陽子、秋川リサ、寺田路恵、菅野菜保之、松本紀保らが脇を固めていた。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
本朝廿四孝 (ほんちょうにじゅうしこう) 二幕 十種香 奥 庭 近松 孝二 作 |
八重垣姫 雀右衛門武田勝頼 菊五郎 白須賀六郎 團十郎 腰元濡衣 芝 翫 長尾謙信 富十郎 原小文治 仁左衛門 |
長尾謙信の娘八重垣姫は、死んだ許婚の武田勝頼に似た花造りの蓑作を見初め、腰元の濡衣に仲介を頼むが、蓑作は実は死んだはずの勝頼であった。 その勝頼を暗殺のため、謙信が白須賀六郎と原小文治を差し向けたのを知った八重垣姫は、勝頼を助けたい一心で、諏訪明神の兜を身に付け、狐に守護されて諏訪湖を渡っていく。 このシーンが幻想的で、綺麗な仕掛けであった。八重垣姫の役は娘役の代表的なもので「三姫」の内の一つと言われ、難しい役とのことであったが、見事にこなしていた。 |
松浦の太鼓 (まつうらおのたいこ) 二幕三場 両国橋の場 松浦邸の場 同玄関先の場 |
松浦鎮信 仁左衛門 大高源吉 三津五郎 妹お縫 孝太郎 宝井基角 左團次 |
これは、痛快な舞台だ。ご存知大石内蔵助と同じ山鹿素行門下の松浦鎮信は、大石がなかなか討ち入りをしないのでイライラする毎日、ついに奉公に上がっていた大高源吉の妹お縫を止めさせてしまうが、大高源吉の句から真実を悟るという物語。 愛嬌たっぷりで魅力的な松浦を仁左衛門が楽しく演じていた。 |
鞍馬獅子 (くらまじし) 清元 連中 |
御厩喜三太 染五郎 郷の君 菊之助 |
都落ちした義経を慕って彷徨(さまよう)うちに物狂いとなった妻の郷の君が、鞍馬山に差し掛かったとき、獅子舞の男と出会い、薙刀で打ちかかるが、獅子舞は実は義経の家来の御厩喜三太であった。 それを知ると、郷の君は心が鎮まると言う話し。獅子舞と狂女のからむ舞踊で、見応えがあった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
通し狂言 榛説弓張月 (ちんせつゆみはりづき) 三幕八場 上の巻 伊豆国大嶋の場 中の巻 讃岐国白峯の場 下の巻 琉球国北谷斎場 の場 曲亭馬琴 原作 三島由紀夫 作 |
源為朝 猿之助 高間太郎 勘九郎 高間妻磯萩 福 助 紀平治太夫 段四郎 白縫姫 玉三郎 |
あの三島由紀夫が曲亭馬琴の原作をもとに奇想天外な大スペクタクルとして纏め上げたものを猿之助が演出を担当し、主役の為朝も演じている。 「上の巻」の舞台は伊豆の大島である。崇徳上皇と後白河天皇の皇位争いが激化した保元の乱で、崇徳上皇についていた為朝は、その敗北により伊豆に流される。ここで、再挙の時を待つ。 「中の巻」では、伊豆から讃岐に渡った為朝の前に、崇徳上皇の霊が現れ、平家を討つために九州の肥後に来るようにと言う。 肥後に着いた為朝は夫の再挙のために兵を率いて待っていた妻の白縫姫とその息子に再会する。 挙兵の為に舟を出すが、海上で嵐にあい、琉球に漂着する。 「下の巻」の舞台は琉球である。悪臣が国家転覆を図っているの知り、その悪臣を討ち取り、琉球王に推されるがそれを断り、再び天馬に跨り、日本を目指して飛び去っていくという奇想天外な物語である。 最後の天馬に跨るシーンは、猿之助得意の宙乗りであった。これこそ、娯楽大巨編と言ったところだ。 |
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