皮膚病全般に標準治療を行っております。
主な疾患につき当院での治療方針を説明いたします。
1、アトピー性皮膚炎
保湿剤によるスキンケアを基本としますが、赤み痒みなどの炎症に対しては、ステロイド軟膏をしっかり外用します。目安としては、チューブの軟膏を人差し指第一関節分出した量1finger
unit=0.5gを手のひら2枚分の面積に塗ります。タクロリムス軟膏は顔面や頸部など皮膚の薄い部分に有効です。近年ではJAK阻害剤軟膏も処方いたします。いずれも皮膚に限局した感染症の副作用は起こりえますが、全身的な副作用はまず起こりません。安全な薬です。痒みの自覚症状を緩和するために、抗ヒスタミン剤の内服を併用することもあります。眠気の副作用が起こることもありますが、副作用の少ない薬剤もありますのでご相談ください。
標準治療では痒みが治まらず、生活に支障をきたす場合には、シクロスポリンが有効です。副作用の発現に留意するために、定期的に血圧測定や採血を行います。
最重症のアトピー性皮膚炎には、生物学的製剤デュピルマブの注射を行います。2週間間隔で皮下注射を続けますが、最初の2回は当院で注射指導し、3回目以降は処方された注射器で自宅で自己注射をします。大変有効の上、副作用はほとんどありません。手技も簡単です。高額療養費制度もご利用可能です。
アトピー性皮膚炎は、長くかかる慢性疾患です。状態が良い時もあれば、悪い時もあります。その時の状態に適した治療をいたしますので、定期的な通院をお勧めします。
2、にきび
にきびとは、顔や胸などの多数の皮脂腺を伴った毛包において、皮脂分泌の亢進と毛穴の詰まりが起こり、アクネ菌が増殖し、毛包に炎症が起こった状態です。成人女性では、口の周り、顎に好発し、月経前に悪化します。ケアとしては,1日2回石鹸で洗顔し、頭髪がにきびの部位にかからないような工夫が必要です。化粧はしても構いませんが、油性ファンデーションはなるべく避け、日焼け止めクリームもノンコメドジェニックのものが望ましいです。睡眠は十分に取りましょう。にきびをむやみに触らないことが大切です。
治療は、洗顔と保湿後に、アダパレンや過酸化ベンゾイル、あるいはその配合剤、過酸化ベンゾイルと抗菌剤の配合剤などを1日1回就寝前に外用します。炎症があれば抗生物質の内服が必要です。漢方薬を併用することもあります。
炎症はひいたものの、陥凹した瘢痕を形成した場合には、当院では、CO2フラクショナルレーザーで、にきび跡をきれいにする治療を行います。最も大切なことは、瘢痕を作らないように早期に受診し、治療を開始することです。
3、乾癬
頭部、肘、膝、臀部など、物理的摩擦が加わりやすい部位に、赤く盛り上がった発疹に雲母のように白い垢が付着し、フケがたくさん出てきます。一般に夏は軽快しますが、冬に悪化します。爪が混濁して厚ぼったくなることもあります。原因不明ですが、メタボリック症候群との関連が指摘されています。治療としては、ステロイド軟膏とビタミンD3軟膏の外用を基本に、紫外線療法を併用します。全身に広範囲に分布することが多いため、ナロウバンドUVB療法を行います。定期的な通院が困難で、全身的合併症がない場合には、紫外線療法を行わずシクロスポリンの内服を併用します。通院の頻度や医療費のコストを説明の上、個々人に最も適した治療を提案いたします。
なお重症の乾癬や関節症性乾癬には、生物学的製剤の注射が有効です。当院は生物学的製剤使用承認施設です。慈恵医科大学附属柏病院と連携して、生物学的製剤の処方を行います。導入検査は連携施設で、導入後の定期的な検査は当院とかかりつけ医で行います。
当院では、IL-17A阻害剤セクキヌマブを採用しています。体重60kg以上の方は1回につき2本、60kg未満の方は1本注射します。初回投与後、1週、2週、3週、4週に投与し、それ以降は、4週間に1回の間隔で投与を続けます。2回目までは必ず医療機関で、医師の直接の監督のもとで投与を行い、3回目以降は自宅で自己注射が可能です。
4、尋常性白斑
皮膚のメラニン色素を作るメラノサイトが破壊され、白い斑点ができます。日常生活での誘引なく自然に発症します。治療としては、外用療法のみでは効果は不十分です。当院では、エキシマライトによる治療を行います。従来のナロウバンドUVB療法よりも少ない照射回数で色素の再生を認めます。週に1~2回の照射を数か月ないし数年続けることにより、少しずつ点状の色素斑が新生し、次第に白斑部分は縮小していきます。ただし、発症後数年経過した古い病変では、反応が乏しい傾向があります。高齢者よりも若年者、特に小児では有効例が多いです。より早期に紫外線治療を開始することが大切です。治療が無効な場合には、メイク製品の使用をお勧めすることもありますので、ご相談ください。
5、皮膚外科
粉瘤(アテローマ)、ほくろなどの良性腫瘍、日光角化症やボーエン病などの表皮内癌、大きさにより基底細胞癌の手術も行います。陥入爪にフェノール法を行います。
原則は午後から予約制で行います。内服薬があれば薬剤情報をぜひご持参ください。
6,原発性腋窩多汗症(ワキ汗) ソフピロニウム臭化物ゲルを処方します。1日1回腋窩に外用します。抗コリン作用があるため、閉塞隅角緑内障の患者さん、前立腺肥大による排尿障害がある患者さんは使用禁忌です。
自費でボツリヌストキシンの注射療法も行っております。「注入・注射療法のご案内」をご参照ください。