ライブスチームの運転


45. 久しぶりの1番ゲージライブスチーム (その8)  (H28.2.24掲載)

 (その7の続き)

今回は、”シェイ(Shay)式蒸気機関車”を取り上げます。

阿里山シェイ 28トン
阿里山シェイ 28トン
阿里山森林鉄路で活躍したシェイです。アスターホビー社さまから何度もシェイは発売されていますが、 このモデルは2011年発売のようです。

阿里山シェイ 28トン
28トンクラス 2トラックのシェイのようです。 阿里山森林鉄路では18トン機と28トン機が活躍していたようですので、このシェイは大型機になるようです。

阿里山シェイ 28トン
貨車1両、連結しています。貨車にはガスボンベを積載しています。 この機関車の燃料はアルコールではなく、ブタンガスなのです。

阿里山シェイの運転室
阿里山シェイの運転室
運転室を見てみます。逆転機はテコ式です。よく見ると前進・後進共に歯は4つ刻んであります。分かりますでしょうか?。 写真ではセンター位置にあります。

阿里山シェイの下側
阿里山シェイの下側
写真の右側が前で、左側が後ろです。後ろのトラックの前に何かあります・・・。

アップしてみると・・・、
阿里山シェイ 下側のアップ
阿里山シェイ 下側のアップ

阿里山シェイ 下側のアップ
そうです。軸動ポンプです。 ”その7”で取り上げました”Baldwin B1 Rear Tank”は2009年発売で軸動ポンプを搭載していますので、 2011年発売の本機に軸動ポンプを搭載されているのは自然かもしれません。 でも、よく見るとポンプ本体が横置きになっています。 一般に軸動ポンプもハンドポンプも下から吸って上から排出する作りの縦置きです。横置きとなると、 逆流を防ぐため、ポンプ本体の中に入っているステンレスボールを押さえるには、 縦置きと違って重力が働かないので、バネなどで押さえる必要が生じます。このシェイは縦置きでは配置する空間スペースがないため、 苦心して横置きで搭載されたのかもしれません。


阿里山シェイ 2台
阿里山シェイ 2台
写真の右側がこれまでにご紹介しましたシェイで、左側が1977年発売と思われる2トラックのシェイです。

阿里山シェイ 2台
2台のシェイが仲良く並んでいます。手前の1977年発売モデルはアルコール焚きで、ハンドポンプは搭載されていますが、 軸動ポンプは搭載されていないようです。

阿里山シェイ 2台
2両のシェイのオーナーさまは同一の方で、つまりお一人で2両のシェイをお持ちです。 もしかして、シェイというよりもギヤードロコがお好みかと思い、 「クライマックス(Climax)やハイスラー(Heisler)はいかがでしょう?」とお尋ねしたところ、 あまり関心がないようで、理由をお聞きすると「左右非対称ではないので」との明解な回答が得られました。 そうですよね。交通機関のなかで、左右非対称なものは珍しいです。それが”シェイ”なのです。


 さて、45mmゲージのライブスチームを走らす上で、難しいと思うのは速度調整です。 加減弁を開き過ぎると暴走してしまうことです。私の8550は走行中でも加減弁を操作し易いようレバーを付けましたが、 それでも不充分で暴走を止められず高架から落下し排障器を破損してしまいました。 ((27.アスター製 ”8550”のこと  (H27.12.27掲載))、参照)  この点、シェイなどのギヤードロコは有利だと思います。阿里山シェイ 28トン機は全く暴走の心配なく走行していましたし、 写真はないのですがオシレーティングエンジンを搭載したテンダー機はギアダウンされてあり、スムーズな走りでした。

 5インチゲージの場合、45mmゲージとは違って、テンダーもしくは次位に連結した台車に乗って加減弁を操作しますので、 暴走の恐れはないのですが、別の問題があります。 OS製フォルテ・ドルテ・コッペルの動輪直径は同じで86mmですので、ピストン1行程で機関車は、86mm×円周率=270mm進みます。 動輪の大きな機関車の場合、例えば、C55・C57・C62ですと、1750mm/8.4=約208mmですので、 ピストン1行程で機関車は、208mm×円周率=653mm進みます。 C58ですと、1520mm/8.4=約181mmですので、ピストン1行程で機関車は、181mm×円周率=568mm進みます。 C12・C56・D51ですと、1400mm/8.4=約167mmですので、ピストン1行程で機関車は、167mm×円周率=524mm進みます。 整理しますと、

 <ピストン1行程で進む距離>
  OS製フォルテ・ドルテ・コッペル : 270mm
  1/8.4 C55・C57・C62       : 653mm
  1/8.4 C58              : 568mm
  1/8.4 C12・C56・D51       : 524mm


となり、国鉄制式機はピストン1行程で、OS製フォルテ・ドルテ・コッペルの2倍以上の距離を進むことになります。 石炭を活発に燃焼するには通風が必要で、そのためにはピストンがある程度以上の速度で前後動をする必要があります。 しかしながら、それでは動輪の大きな機関車では走行速度が早くなってしまい、 特に運客する場合はカーブでお客様が乗用台車から振り落としてしまう危険性が高まります。そのため、 私は動輪の大きな機関車を運転する場合、速度は安全速度(6Km/h以下)とし、ブロアバルブを少し開けて通風の不足分を補う運転をしています。  45mmゲージでも5インチゲージでも、速度に関してはこのような留意事項があるようです。 また、シェイなどのギヤードロコは45mmゲージだけではなく、5インチゲージでも有利だと思います。 速度オーバーでお客様を乗用台車から振り落としてしまう危険性は少ないですし、また、何よりも力持ちですので大勢のお客様をいっぺんに 運べますので。

 通常の蒸気機関車は2気筒ですが、 OS製シェイ(5インチゲージ)は3気筒ですのでエンジンの位相角は120度ズレているかと思います。 仮に気筒1個のピストンが死点の位置にあっても、あとの気筒2個のピストンは死点位置ではないので(120度、240度)、 始動できるのではないか?、と思い、試してみようと思いました。そう思った背景はOS製コッペルは2気筒ですが、 前進フルギアではなく、1歯引き上げても発車するからです。 それで、所属する倶楽部のメンバーの方が保有するOS製シェイをご厚意で運転させていただいた折、発車時、 テコ式逆転機を前進フルギアとはせず1歯引き上げた状態で加減弁を開いたのですが・・・・。 結果は残念ながら始動できませんでした。やむなく、加減弁は開いたそのままの状態で、 テコ式逆転機を前進フルギアにしたとたん、発車しました。また、通常の蒸気機関車は下り坂では惰行走行できますが、 シェイは惰行走行できません。下り坂でも加減弁を開けないと走行しない、です。 傘歯車(ベベルギヤー)が影響するのでしょうか?。

 実機も阿里山を下って嘉義駅に向かう場合、加減弁を開けていたのではないでしょうか。加減弁の開け具合いは、 エンジンブレーキのかけ具合いも意味するのではないかと思います。 逆転機を操作して進行方向と反対にすれば、まさにエンジンブレーキとなったでしょうし。 実際にはおそらく非常事態でない限り、しなかったかと思いますが・・・。 速度はでませんが全軸駆動により牽引力があり、 急勾配・急曲線に強いシェイの特徴は模型・ライブスチームの世界でも同じことがいえると思います。

 シェイのメカニズムはユニークで、運転も大変楽しく面白く、 2台のシェイのオーナーさまと同様に私も好きな機関車です。なにしろ、”シェイ”は前から見たら、ボイラーは右側に偏っているのですから!!!。


(その9に続きます)  


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