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壷のひまわり

 8月24日(昨日)、残暑著しい東京の街を、歩き回りました。沢山の目標を持って東京を訪れましたが、一つの目的は、損保ジャッパン東郷青児美術館の『ひまわり』を観ることでした。今年の夏、アムステルダムのゴッホ美術館で、ロンドンのナショナル・ギャラリーで、ほぼ同じ図柄の作品を観ました。他にも背景(薄いクリーム・ブルー)と、絵柄が少し異なるものが、ミュンヘンのノイエ・ピナコテーク美術館とフィラデルフィア美術館にあります。


 作品としては、三つの中で一番、ズーンと来たのは、ナショナル・ギャラリーのものでした(写真1)。クリーム・イエローの背景に、様々な時期のひまわりが描かれ、枯れる直前のもの、今がピークのもの、濃淡がはっきりついていて、14本のひまわりが、それぞれ、実に素晴らしかったです。近くに『ゴッホの椅子』もあり、さすが、世界のロンドン・ナショナル・ギャラリー、良いものを持っているなあ〜、という感じでした。


 ナショナル・ギャラリーのひまわりが描かれたのが、1888年8月で、ゴーギャンが来るのを待ちわびている時期です。きっと、この絵を観てくれ、そして凄い、といってくれとゴッホは思いながら、描いていたのでしょう(私の憶測ですが・・・)。実際にひまわりを観て描いていたと思います。あとの、2作品(写真2,3)は、1889年1月に描かれたものとされていて、ゴーギャンとの共同生活を思い出しながら、自分の作品を模写したものです。ですから、花の濃淡が、ナショナル・ギャラリーのものよりも、淡いです。


 では、ゴッホ美術館のものと、損保ジャッパン東郷青児美術館のものと、どちらが先に描かれたのでしょうか?私は、ゴッホ美術館のものが先だと思います。こちらの方が、花の濃淡がついており、ナショナル・ギャラリーのものに近いです(写真2)。
 

 さらに、ナショナル・ギャラリーのものやゴッホ美術館のものと、損保ジャッパン東郷青児美術館のものとには、大きな違いがあります。何かわかりますか?

 

写真1 写真2 写真3
ナショナル・ギャラリー ゴッホ美術館 東郷青児美術館

 そうです。壷に書かれたサイン(Vincent)です。花瓶は、二色で描かれ、中央より、やや上で、線を引き色分けされてます。その線より、上にサインが入れられているのは、ナショナル・ギャラリーのものだけです(写真4)。『壷のひまわり』5作品(ノイエ・ピナコテーク美術館とフィラデルフィア美術館の2作品を含む)で、これだけが上にサインがあります。他の3作品は、その下にサインがあります(写真5)。そして、損保ジャッパン東郷青児美術館のものには、サインがありません。

写真4 写真5 写真6
ナショナル・ギャラリー ゴッホ美術館 東郷青児美術館




 ゴッホという画家の性格・手法を考えると、彼は壷を二色で塗ったあと、最後に色分けた部分で線を引き、そのままの筆で、サインをしていると思います。これは、私の直感ですが、ナショナル・ギャラリーのものとゴッホ美術館のものの線の色(とりわけゴッホ美術館のものはよくわかる)とサインの色が全く同じなのがよくわかると思います。そして、損保ジャッパン東郷青児美術館のものは、この最後の作業がされていないと思います。ふつう、レプリカを作った時、2作目にサインをいれず、3作目に入れるとは考えにくいです。


 損保ジャッパン東郷青児美術館で、ゴッホひまわりの解説図録を買いましたが、このことは記載されてませんでした(ななめ読みですが・・・)。ただ、本の中で、左下のひまわりが、より低い位置に描かれているので、この作品が一番最後に描かれたとしています(⇒写真4,5,6)。この時、ゴッホはさらに沢山のレプリカを作製しようとしていましたが、幻覚症状が出て作製できなかったみたいです。


 58億円の安田火災のヒマワリは、大きなガラスの中に飾られていました。まるで、宝物殿のごとく・・・、くだらない、と思いました。作品は、ベアで観れれば観れるほど良い、です。三つの花瓶のヒマワリは、順番をつけるなら作製順だと、私は思います。ゴッホの黄色の絵具は、不変でないと聞いてます。変色して来たら、水の泡だな〜、と思います。それなら、ゴッホの絵を観て、いい絵具を使って、自分で描いてやろう、と考えました。無謀ですが・・・


 正直なところ、私はゴッホの絵は、模写する気がしませんでした。佐伯祐三の絵もそうですが、模写することで、未来が広がらない絵は模写する価値がありません。イメージが膨らみ、面白いというものは、模写する価値があります。例えば、ゴッホの自画像なら、それを模写するより、誰かが描いたゴッホの絵やゴッホの写真を、ゴッホ的に描くと、面白いものができるかもしれません。


 皆さんは、『壷のひまわり』を観てどういう風におもわれますか?感想を聞かせて頂けると有難いです。






もう一つのタイプのヒマワリも是非みてみたいと思ってます。

次のページでは、今話題になっているゴッホの「三幅対・さんぷくつい」について述べたいと思います。


(2003年8月26日作成)

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