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天文学者と地理学者

 天文学者と地理学者は、以前にコメントしなかった作品に掲載していました。

 以前にこの作品にコメントしなかった理由は、ただ単に男性を一人描いていることが理由でした。

 コメントしてみようと思ったのは、並べてみると結構面白いことがわかったからです。どちらもフェルメールらしい詳細な描写で、窓からの光の描写が奇麗です。


 まず、天文学者は、イスに腰掛けて、机の上の天球儀に手をかけています。本で読んだことを確認するために、まわそうとしているのかもしれません。この天球儀の描写は見事です。また、机の上のタズベリーの描写にも独特のものがあり、いつもの光の粒があります。机に本が置かれていますが、本を描いたのも珍しいです。


 一方、地理学者の絵は、天文学者の絵に比べて、明らかに明るく思えます。天文学者が、夕方・たそがれに描かれているなら、地理学者は、日中でしょうか?それとも、窓から入る光の量が違うのでしょうか?さらに考えると、地理学者の人物は、天文学者の人物より若く、そのために、フェルメールは、明るくしたのでしょうか?私には、フェルメールは何かを考えて、そうした気がします。


 地理学者は、机の上で地図を拡げている。右手には、地図間の距離を測るのか、コンパスを持っている。目線は、地図にはなく、思慮しているように空にある。


 もちろん、この二つの作品は、フェルメールが依頼を受けて制作されたものとも言われています。それなら、この二人は同一人物なのですが、髪型は似ていますが、私には明らかに別々の人物のように思えます。一応その人物は、1676年にカタリーナが破産したあとに、フェルメールの遺産の管財人にも任命された、アントニー・ファン・レーウェンフークと言われています(⇒フェルメール・106ページ)。彼は、顕微鏡の発展にも貢献しており、航海術・天文学・数学など、広く科学に関心を示してました。

天文学者 地理学者

 
 この二つの絵は、制作年の年期が作品に入っています。天文学者が1668年、地理学者が1669年です。

 このように二つの絵を比較しながら、見ていくと面白いです。残念なのは、二つの絵は、同じ美術館が所有していないことです(⇒所有美術館)。


(2002年10月11日作成)



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