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  5. わしの変奏曲を聴け!

大権現様の、わしの音楽を聴け! 第14回
「わしの変奏曲を聴け!」


(な)最近、こういう方から、「こんな作品を作ったので」と教えていただいたので、聴かせていただいた。交響曲第5番第2楽章の中間です。(2007年2月現在、全楽章を作成中)
(大)この楽章は変奏曲なのだが、これはその第2の変奏にあたる。
(な)自宅で、このような作品を作ることができるとは、楽しいですね。自分で自分の思った通りに音を作り演奏できるのです。この方、
吉川善雄氏は、20年以上前に、交響曲第5番全曲をコンピュータで作成し、レコードになったこともあるという、猛者です。当時としては、恐ろしく手間のかかる作業だったようで。
(大)ピアノを弾くように簡単にできないところが大変だったようだな。
(な)当時の作成に関する詳細は説明が残されているのですが、残念ながら割愛します。ですが、いろいろな面で進歩した今でも、容易にできるわけではないことは同じですね。
(大)昔は、なにやら、音符を数字に置き換えるそうで。書くだけなら、楽譜がよほど簡単だな。
(な)この部分の変奏は、私も好きです。まず、ビオラとチェロで旋律が流れるのですが、ここまではある程度予想がつく、「お約束」的な変奏なのですね(主題は例1.変奏は例2)。
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(大)お題になった旋律の音符を、細かくしていくのだ。第1の変奏は16分音符の連続でなめらかになり、この第2の変奏では、さらに細かく32分音符になる(例3)。
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(な)チェロなどで予想通りに変奏されたあと、なんと第1バイオリンで繰り返しが始まるのですね。
(大)「繰り返し」と書いてしまうと大したことじゃないようにも思われるが、この展開は予想外になるのだ。
(な)第1バイオリンが変奏を続ける下で、チェロとビオラはピチカートになるのですが、その響きがいい。第2バイオリンが持続音をこの変奏に乗せるのですが、そのなめらかな色合いが変奏に溶け込む響きといったら、感動。コントラバスは低音でしっかり支えているし、さらには、ファゴットとクラリネットによる、かすかに湧き上がってくるような音。全体が静かになめらかに進んでいくサウンドは、たまりません(例4)。
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(大)どうだ、この完璧な管弦楽法は! ほめても小遣いはやらんぞ。
(な)その後で、さらに繰り返しを強く演奏するのですね。
(大)そうだ。旋律は低弦に戻り、他は和音を鳴らす。オーケストラ全体での楽器のバランスがとても難しい個所なんだが、吉川氏のように、こうして自分で音を作るようになると、なんとでもなるな。
(な)今回聴かせていただいたデータでは、その後が無いのですが、ここから先もまた、印象的ですね。
(大)たしかに、管楽器による戯れがそこにあるとは、誰も予想はできないであろう。緊張しっぱなしのこの交響曲において、オアシス的な存在だ。そもそも、旋律を細かくしていく手法は、それこそ変奏の常識的パターンとしてあるのだが、これを冒頭からしばらくやってしまうと、途中からの変化が妙に期待されてしまってな。凝った作りにしてしまうのだが、この流れを構築するのが大変なのだ。
(な)この楽章は2つの主題からできていて、前半では繰り返していますね。
(大)その通り。前半は、A−B−A−B−A−となっていて、Aが順次変奏されていく一方、Bはさして変奏せずに力強く鳴るようにしてある。交響曲第9番の第3楽章がよく似ている。規模は、あちらのほうがかなり大きいが。
(な)旋律がひとつしかないと、聴いているほうが飽きてしまいますからね。
(大)なにおう!無礼な!


(2005.2)



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