ホームフェルメールと巨匠たちグウェン・ジョン(1)

グウェン・ジョン(1)

 グウェン・ジョン(1876〜1939年)は、女性の画家です。彼女は、イギリスのウェイルズで四人兄弟の二人目の子供として生まれています。彼女の母親も画家で、弟アウグスツスも有名な画家です。そして、彼女自身はかの有名なロダンを敬愛して、彼のモデルであり、妻のような存在でした。ただ、出会ったのがロダンの64歳の時(グウェン28歳)です。それから、ロダンが亡くなる14年間、人生を彼に捧げてます。彼女の情熱は相当なもので、2000通以上の手紙をロダンに送っています。その書簡は、パリのロダン美術館に残されてます。また、ロダンも彼女の情熱の愛に答えるように、亡くなる2年前に、『貴方を愛している、貴方の幸せを願っている。』と書いています。


 1910年頃から彼女の独自の画風スタイルが確立して来ます。それは、室内における風景、女性の肖像画などです。この絵も、それに相当するものです。この絵は、名画に教わる 名画の見方(152ページ)で、フェルメールの青衣の女を、引用したものと書かれています。確かに左の窓、壁の絵など、似てる気もしますが、私個人的には、あまりそのような素養はなかったのではないかと思って見てます。


 むしろ、フェルメール作品の中には、フェルメールの知己があった画家(ヘラルト・テル・ホルフピーテル・デ・ホーホなど)から引用した題材が多数あるように思えます。グウェン・ジョンは、この絵で自分自身を見つめ直しているのではないでしょうか?本を読むという行為と手紙を読むという行為は、表すものが違うような気がします。手紙は、つねにその場にいない相手を意識するものです。もし、手紙を読んでいれば、ロダンに対する思いを綴ったように感じられます。本を読む時は、色々な事を考えながらも、段々本に夢中になり、「私ならこうするなあ〜。」とか考えると思います。


 そういうことは、べつにしても、この絵はとても素適で、魅力あるものです。黒い洋服を着た娘と窓の奇麗な白のレースのカーテンの対比、壁にかかった小さな絵、編んだ籠のようなソファ、一つ一つの小物が、実に繊細に描写されています。


 また、女性の顔が美しく描かれ、その目線はしっかりと本(ひょっとして聖書?)を捕えています。彼女は、ソファに右足をかけているのか、右手を置いているように見えます。ブラウンの髪が奇麗で、頭の頂点の黒のリボンが素適です。凄〜く地味な服装ですが、そのことが彼女が若く奇麗な女性であることを、一層引き立てています。きっと、本を読み、部屋を歩きまわっているのではないでしょうか?とても、とても素適な女性のように見えます。


 この絵は、ニューヨークの近代美術館にあります。今年(2002年)の冬に訪問した時は、是非観てみたいと思います。1911年頃に制作されており、キャンバスに描かれた油絵で、縦40.6cm×横25.4cmです。


 

窓辺で本を読む少女

 この絵を最初に見た時、その繊細な描写から、女性が女性の部屋を描いた絵というのが、何となくわかりました。絵を描くなら、日常を題材とした、こういう風な絵を描いてみたいものです。


 実は、グウェン・ジョンの作品の中には、同じような部屋で別の少女を描いた絵があります。その絵は、私が仲良くして頂いているmariのページのmariさんが、取り上げていらしゃられます。是非そちらをご覧ください(⇒本を読む女性)。さらに理解が深まると思います。二人の少女は、対のように見えます。


 次のページでは、グウェン・ジョンの『肖像画』について掲載したいと思います。


(2002年10月2日作成)


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