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  5. 楽譜を読んでみよう その3

楽譜を読んでみよう その3



4.どこで混乱するのだろうか。

 CDの演奏に合わせて楽譜上で追っかけるだけなら易しいのではないか、と思うかもしれないが、実はこれが難しい。最初は、すぐに迷子になってしまう。どのようにして迷子になるのだろうか。

(1)楽器の位置がわからない。

 前に楽器がどの位置に書かれているか一応の説明をしたが、結局ページをめくるとわからなくなってしまう。それも当然のことで、「長時間にわたって音を出していない楽器は、段そのものが省略されてしまう場合がある」のだ。そんなことをされたら、わけがわからなくなるに決まっているじゃないか。この「段の省略」は、作曲者というより出版社がその版を作る際に紙の上でのレイアウトの都合で決めてしまう。


 ↑交響曲第6番第1楽章の例。上半分は楽章の冒頭なので、その楽章で使う全楽器の段が並んでいる。しかし、下半分では音の無い楽器の段が消えている。

(2)楽器の名前がわからない。

 曲の先頭に楽器の名前が並んでいる。普通はイタリア語表記だ。楽譜によっては英語だったり、ドイツ語だったりする。これは出版社が決める。しかし、冒頭以外は場所の節約のために楽器の名前が省略形になるので、慣れていないとわけがわからなくなる。
 楽譜によっては楽器名を消してしまう場合もある。それで、一体どう理解しろというのだろうか…。

 上の例では、イタリア語で楽器名が記されている。下半分では、ファゴットとホルンのみが略名で記されている。その下の4段に名前の記載が無いのは、書かなくてもわかるはず、という意味である。

(3)速い曲は、ついて行けない

 速いといっても限界があるだろうと思うが、1小節を0.5秒以下で通過するような曲なんて珍しくない。一瞬でも目を離すと次のページに移っている。で、ページをめくって探しているうちに曲はその次のページに進んでいるのだ。迷子になって当然だろう。


 ↑弦楽4重奏曲第10番「ハープ」第3楽章の中間。演奏によっては、1小節が0.4秒以下の超高速で流れる。つまりこの例の13小節だけでみると5秒もかからない。

(4)繰り返し記号に騙される

 中学校の音楽の授業では繰り返し記号(U: と、 :U というような形)を教えてもらったはずだ。この記号が出てきたら該当する部分を繰り返すのだが、実際の演奏では繰り返さない場合もある。最初の頃、私は、なぜそんなことが起こるのかわからなかった。
 現代において、実際に繰り返すかどうかは、ほとんどの場合演奏者の美的感覚に委ねられているのだ。


 ↑ピアノソナタ第8番「悲愴」第1楽章。1番カッコ、2番カッコなら中学校で習うだろう。

(5)どの楽器が聴こえているのかわからない

 楽器の音を聞き分けることなんて簡単さ、と思ってはいけない。いちいち確認するために演奏が止められるわけでないのだ。あれよあれよと言う間に次のページに進む。その時には、別の楽器が鳴っているだろう。

(番外)慣例的な省略

 ロマン派の比較的長い曲でたまに出会うのが、曲の途中で省略をしてしまうことだ。曲が部分的に冗長であるというのが理由で、半ば慣習的に省略されてしまう。チャイコフスキーのバイオリン協奏曲が良い(?)例だ。楽譜を見れば似たような部分が続いているので、少々切り貼りしてもわからないと誰もが思うだろう。
 20世紀も末になると省略する習慣は廃れたが、それは作曲者の持ち味を大切にしようという理由だ。持ち味なんて物は言いようで、ただ単に作曲がヘタなだけなんじゃないかと思う。
 なお、NHK「名曲アルバム」のように放映時間にあわせて曲を切り貼りする場合もあるが、あれはそもそも音楽の「お試し版」である。

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(2011/5/30)



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