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フェルメールの作品は盗難に遭いやすいことは、ご存知の方は多いと思います。その要因は、1)画家が有名であること、2)寡作であること、3)どの作品も真珠のように奇麗であること、そして、1番狙われる要因は、4)作品が小さいこと(参照フェルメール全作品大きさ比較)、などです。
今まで、起こった事件を振り返ってみましょう。今回は、内容のほとんどを盗まれたフェルメールを参照にまとめました。作品名は、マウスポインタを画像に載せると出て来ます。クリックしますと、ホームページ内のコメントにリンクします。
背景が黄色のものは無事作品が戻ったもので、灰色のものは、解決していないものです。
恋文の犯行が、パレ・デ・ボザール美術館でおきたのは、作品が貸し出されていたためです。
IRA(アイルランド共和軍・カトリック系過激派組織)の略です。
ラスボロー・ハウスは、バイト卿の私邸で、沢山の美術品コレクションがあった。後に、アイルランド・ナショナル・ギャラリーに寄贈しました。
世紀の大泥棒マーティン・カーヒルは、絵を盗んだことで窮地に陥り、最終的にIRAに射殺されました。
これらの結果を踏まえてわかることとして、下記があります。
1)フェルメール作品のような有名な絵を盗んでも、人命にはかなわないということ
2)盗めても、絵を闇で売ることはできないということ
3)警備に問題があったということ
1)について
A・Bの絵画テロリストの要求は受け入れられませんでした。Bの被害者のバイト卿の「絵を破壊されても、その用意は出来ている。」(盗まれたフェルメール・第八章 女性アート・テロリスト「手紙を書く女と召使い」を盗む・153ページ」の言葉は、賞賛に値すると思います。
2)について
世紀の大泥棒マーティン・カーヒル(彼は、映画『ザ・ジェネラル』のモデル)は、仲間に「ラスポロ・ハウスから絵を盗んだことを後悔している。」と、言っていたらしいです(⇒盗まれたフェルメール・第九章 窃盗犯に悪運をもたらしたフェルメール・185ページ)。フェルメールほどの絵になると、正規のルートでないと売れないのです。
3)について
@・B・Dに関しては、警備に問題があったように思われます。とくにDの被害総額が、2億ドル(⇒盗まれたフェルメール・第十章 暗礁に乗り上げたガードナー事件捜査・188ページ)と言われているのに、その場に居た警備員たちが、1週間の訓練を受けた20歳代の学生アルバイトの青年たちで、その時給が6ドル85セントだったというのは、寂しいです。また、同じようなことが、ボストン美術館でも起こりかけていて、その時は警備員が中に入れなかったそうです(⇒盗まれたフェルメール・第三章 至上最大の美術品泥棒−ガードナー美術館事件・54〜56ページ)。
確かに、警備が甘かったりしたら、今後も作品の盗難はありえるかもしれません。しかし、その結果は、世紀の大泥棒でも、不幸な死に至ったのです。ですから、「フェルメール作品」は、盗んでも良いことはありません。
また、@の犯罪を犯した青年も、勘違いしていることがあります。確かに、人は生まれながらに持ってくるものが50%です。親は選べないわけですから・・・。しかし、残りの半分は、自分の努力です。東パキスタンへの寄付を考えるのでしたら、別に自分が出来ることをしなくては、なりません。幸い優秀な修復チームが、いたので「恋文」は甦りましたが、もし、いなかったら、取り返しがつかないところでした。作ることは難しいが、破壊は簡単なのです。フェルメールは苦労して、作品を描いてます。
次は、これらの盗難が、もたらした思わない「副産物」について述べたいと思います。このページを終えるにあたり、読まれてた人には是非、盗まれたフェルメールを読んで頂きたい、一度読まれた人にも読み返して欲しい。素晴らしい本だと、私は思います。
(平成14年7月16日作成)