歌 舞 伎
− 観 劇 記 -

平成18年

2月:春調娘七草、一谷軍記、浮塒鴎幡随長兵衛

3月:吉例寿曽我、吉野山、道明寺

5月:江戸の夕映え、雷船頭、外郎売、権三と助十

6月:君が代松竹梅、双喋々曲輪日記、藤戸、荒川の佐吉

8月:野口雨情ものがたり・船頭小唄

9月:車引き、引窓、六歌仙容彩、寺子屋

11月:伽羅先代萩、源太、願人坊主


二月大歌舞伎

平成18年2月 歌舞伎座

演 目 役 者 観 劇 記


春調娘七草

(はるのしらべ
  むすめななくさ)
  
 長唄囃子連中
 
  
  

静御前
        芝 雀

曽我十郎
        橋之助

曽我五郎
       歌 昇


  正月七日。父の敵、工藤祐経の館に、やさ男の兄十郎と血気盛んな弟五郎、そして春の七草を手にした静御前がやってくる。
  敵を前にして気が逸る兄弟をなだめながら七草粥を準備する静との対比を舞踊劇にまとめたもの。
  曽我五郎の血気溢れる舞踊と静の優雅な踊りが目を惹いた。


一谷嫩軍記

(いちのたに
   ふたばぐんき)

  陣 門
   組 打
  

   一幕

熊谷直実
        幸四郎

無官太夫敦盛
        福 助

平山武者所
       錦 吾

玉織姫
       芝  雀 

 
  御馴染みの熊谷直実と平敦盛の物語。源平合戦のさなか、白馬で海上に出た敦盛を馬(栗駒)で追いかける直実。一騎打ちの末、敦盛を組み敷いた直実。
  潔く、首を打たれようとする敦盛が自分の子と同じ年頃であるため、躊躇する直実。
  御馴染みの名場面の連続に流石に見応えのある芝居となっている。
  幸四郎の直実は手馴れたもので、非情な戦場の臨場感と複雑な胸中、漂う無常観を見事に熱演している。打たれる敦盛(福助)は初役であるが、良く演じていた(前回は染五郎)。
  今回も馬の演技はなかなか見応えがあった。憎まれ役の錦吾は相変わらず上手い。


お染久松
浮塒鴎

 (うきねのともどり)

 清元連中
 

女猿曳
        芝 翫

お染
        菊之助

久松
       橋之助


  浅草の大店の一人娘お染めは、親の勧める縁談がいやで、家を飛び出し、好きな丁稚の久松と隅田川の土手で心中覚悟の様子。
  それを見た背中に猿を背負った女猿曳が、お染と久松の気を引き立たせようと華やかで情緒豊かな清元を背景に軽妙な語りと踊りで盛り立てて行く。
  広々とした隅田川縁(べり)を背景にしての舞台は見応え充分であった。

 

河竹黙阿弥 作

極付(きわめつけ)
幡随長兵衛
 (ばんずいちょうべい)

 公平法問諍

 三幕


幡随院長兵衛
        吉右衛門

水野十郎左衛門
        菊五郎

長兵衛妻お時
       玉三郎

唐犬権兵衛
       段四郎

 
  
  江戸の村上座で上演中の舞台に酔った客が乱入。その場を納めたのがあの幡隋長兵衛。その様子を桟敷席からじっと見ていたのが旗本水野十郎左衛門。そして酔って暴れていたのが水野の配下のもの。
  日頃からいがみ合いが続く旗本奴と町奴であったので、ここで頂点に達した。ついに水野から長兵衛に呼び出しがかかる。
  死を覚悟した長兵衛は 弟分の権兵衛や妻のお時に後事を託し、単身水野の屋敷に行く。
  講談でも御馴染みの名場面である。いやいや長兵衛の吉右衛門はまさにはまり役。痛快であった。
  脇を固めた、玉三郎、段四郎、そして菊五郎と申し分の無い豪華な配役であった。

 



三月大歌舞伎

平成18年3月 歌舞伎

演 目 役 者 観 劇 記

吉例寿曽我
(きちれいことぶきそが))
  
 鶴ヶ丘石段の場
 大磯曲輪外の場

 
  

八幡三郎
        愛之助

近江小藤太
        進之助

工藤祐経
       我 當

大磯の虎
       芝  雀


  工藤裕経の家臣八幡三郎と近江小藤太は、巻物を奪い合いながら、鎌倉の鶴ヶ丘八幡宮の石段から冨士山を望む大磯に行き着く。   ここで工藤裕経や、曽我十郎、五郎らが加わり、巻物の奪い合いが続くが、曽我十郎は、近くの郭で待つ虎御前のもとへと行く。
  八幡宮の大石段での奪い合いから、その石段全体が争う三郎と小藤太を乗せたまま上に回転し、階段の下から富士山の絵が現れる舞台変換には驚いた。これだけでも、見る価値のある舞台であった。
  場所を変えながらの「対面」や「だんまり」が惹きつけられた。


義経千本桜

吉野山
(よしのやま)

  竹本連中
  清元連中

佐藤忠信
源九郎狐
        幸四郎

静御前
        福 助

逸見藤太
        東 蔵

 
  桜が満開の吉野山にやってきた静御前。義経から預かった狐の皮で出来た鼓「初音の鼓」を打つとどこからとも無く佐藤忠信が現れてくる。
  この忠信が、実は鼓の皮となった狐の子で、親狐を慕う子狐が、忠信に化けて静を護っている、御馴染み義経千本桜の道行き編である。
  忠信が屋島合戦の模様を物語ったり、随所で、本来の狐の本性を現す様が、見事な舞踊劇。
  幸四郎の演技が、ただもう見事であった。藤太役の東蔵が相変わらず面白く見せてくれる。


十三世片岡仁左衛門十三回忌追善狂言

菅原伝授手習鏡
道明寺

 (どうみょうじ)

  

菅丞相
        仁左衛門

覚寿
        芝 翫 

宿禰太郎
       段四郎

刈谷姫
       孝太郎

判官代輝国
       富十郎


  大宰府への左遷が決まった菅原道真(菅丞相)が、船出を待つ間に立ち寄ったのが伯母の覚寿の館。ここには、丞相の養女刈屋姫がいる。
  そこへ宿禰太郎等が丞相の迎えと称し、丞相を駕籠に乗せ連れ出す。そして殺めようとすると、丞相は木像であった・・・
  本物の迎えである判官代輝国が来て、物語は急展開して行く。
  菅原道真を祀る道明寺の縁起を描いた道真の奇跡を伝える芝居である。
  覚寿の芝翫が、貫禄ある老女を見事に演じているが、全体としてはスローテンポで、折角の追善狂言としては盛り上がりに欠ける舞台であった。

 


團菊祭/五月大歌舞伎

平成18年5月 歌舞伎座

演 目 役 者 観 劇 記
大仏次郎 作
市川團十郎 演出

江戸の夕映
(えどのゆうばえ)
  
   三幕五場
 
  

本田小六
        海老蔵

堂前大吉
        松 緑

おりき
       菊之助

お登勢
       松  也


  明治を迎えたばかりの江戸の夏。直参旗本の本田小六は、幕府を見捨てる気になれず、許婚のお登勢をおいて、函館戦争へ。
  同じ旗本でも、おおらかで現実を肯定する堂前大吉は、芸者おりきと気ままな生活をしているが、友人である小六のその後が気になっていた。
  そんな折り、戦に破れ、ひっそりと江戸に戻っている小六に巡り逢い・・・・
  と展開して行く。海老蔵の一途さと、松緑の人の良さからの葛藤と衝突が物語をクライマックスに持って行き、江戸の真っ赤な夕映えの下、大団円となる演出は、もう見事であった。
  松緑の演技が何とも小気味良かった。
 

雷船頭
(かみなりせんどう)

  常磐津連中
  

船頭
        松 緑


        右 近

 
  隅田川に漕ぎ出した、いなせな船頭。急に辺りが暗くなり、雷鳴が轟くと、天から太鼓を背負った雷が落ちてくる。
  船頭とその雷の息のあった、やり取りが実に楽しい舞踊となっている。
  

歌舞伎十八番の内

外郎売

 (ういろううり)


  大薩摩連中
  

外郎売実は曽我五郎
        團十郎

工藤祐経
        菊五郎 

曽我十郎
       梅 玉

小林朝比奈
       三津五郎


  工藤祐経が大勢引きつれ、大磯の廓で休息していると、外郎売りがやってくる。
  実は、その外郎売は工藤を仇と狙う曽我五郎で、仇討ちのチャンスを狙っていた。
  所望され、小田原名物の痰切り薬の外郎の故事来歴や効能を立て板に水の如く早口で披露しながら敵討ちの機会を狙っていくが、兄十郎に時節を待てと停められてしまう。
  歌舞伎十八の外郎売りの早口の言い立てが見所聞き所となっているこの芝居を、病気回復した團十郎が元気良く演じて見せた。
  芝居の途中で、急性前骨髄球性白血病再発のため昨年8月末から入院・休養していた市川團十郎が、菊五郎と共に病気見舞い御礼の口上を行ったが、まさに復帰を飾るに相応しい、久しぶりの豪華な團菊祭であった。

 

岡本綺堂 作

権三と助十
  (ごんざとすけじゅう)

  二幕

権三
       菊五郎

助十
       三津五郎

権三女房おかん
       時 蔵

家主六郎兵衛
       左團次

小間物屋彦三郎
       松 也

  
  神田橋本町の裏長屋では、住民総出で年に一度の井戸替えの最中であった。
  ところが、ここに住む駕篭かきの権三と女房のおかんは、いつもの喧嘩をしながら酒を飲んでいる。相棒の助十は助十で、弟の助八との喧嘩に明け暮れている。
  そんな折、この長屋の家主六郎兵衛のところに、かつてここに住み、人殺しの濡れ衣で捕まり牢死した小間物屋の息子彦三郎がやってきて、事の真相を追究していく。
  大岡越前の名裁きを背景に真犯人を焙り出していく様が、江戸の風物を背景に、実に愉快に生き生きと描かれている。
  生き証人の権三や助十のうろたえぶりや、家主の智慧出し等々なかなか楽しい芝居であった。

  


六月大歌舞伎

平成18年6月 歌舞伎座

演 目 役 者 観 劇 記

君が代松竹梅
(きみがよしょうちくばい)  
   長唄囃子連中
 
  

松の君
        翫 雀

梅の君
        愛之助

竹の君
       孝太郎


  めでたさの象徴とされる松竹梅は冬の寒さに耐えることから「三寒三友」と呼ばれている。
  平安朝の公達衣装に身を包んだ踊り手3人、不老長寿の松の君は格調高く、竹の君は伸びやかで強いしなやかさを、そして梅の君は艶やかで華やかさを、長唄の君が代の調べにあわせて、共に踊る姿はただただ綺麗で優雅であった。


双蝶々
   曲輪日記

(ふたつちょうちょう
      くるわにっき)

   角力場

   一 
 

濡髪長五郎
        幸四郎

放駒長吉・与五郎
        染五郎

遊女吾妻
       高麗蔵

 
  大坂堀江の角力小屋の前は人気があり賑わっていた。特に今日は連勝を続ける大関濡髪(ぬれがみ)長五郎に、飛び入りの小兵放駒(はなれごま)長吉が挑戦するとあって大変な熱気となっていた。ところが、あろうことか大関の濡髪が負けてしまう。
  実は大の濡髪贔屓の与五郎(染五郎二役)が、遊女の吾妻を身請けしようとしているのを何とか諦めさせようとして打った大芝居であった・・・
  今回の幸四郎と染五郎の丁々発止とした絡みが良かった。また「つっころばし」と呼ばれる典型的な、なよなよとした頼りない優男ぶりはなかなかのものであった。  

川崎哲男脚本

昇竜哀別瀬戸内
藤 戸
     (ふじと)

   長唄囃子連中

老婆藤波・藤戸の悪竜
        吉右衛門

佐々木盛綱
        梅 玉 

浜の女おしは
       福 助

  
  領主として備前国藤戸に着任した佐々木盛綱の前に藤波という老婆が現れ息子を返せと泪ながらに訴える。
  実は一年前の「藤戸の戦い」のとき、浅瀬を教えてくれた漁夫を、盛綱が無常にも殺してしまった。藤波はその母という。
  盛綱は過去を悔い、心から詫びをいれるが、そこに怨念のため悪龍となった漁夫の霊が襲い掛かってくる。
  盛綱は前非を悔い、ただ無心に仏に祈るだけであった・・・。
  戦いで子を失う親の悲しみを描いた能の「藤戸」を素材にした鎮魂の舞踊劇である。
  平成10年、厳島神社が世界遺産に選ばれた時、世界平和を祈念して奉納されたもの。初めての歌舞伎座登場であった。


真山青果作

江戸絵画八景
荒川の佐吉

 (あらかわのさきち)


   四幕八場
  

荒川の佐吉
        仁左衛門

丸総女房お新
        時 蔵 

相模屋政五郎
       菊五郎

大工辰五郎
       染五郎


  腕の良い大工であった佐吉はやくざの世界に憧れ、両国界隈に縄張りを持つ仁兵衛のもとで三下奴の身となっていた。
  ところが仁兵衛は、浪人成川郷右衛門に切られ縄張りを奪われてしまう。
  死ぬ間際に仁兵衛より、日本橋の大店丸総の跡取り息子の囲われ者となっている娘お新の生んだ盲目の子供卯之助を託されてしまう。
  友達の大工辰五郎の助けを借りながら、苦労して卯之助を育てて行く・・・
  落ち目になり荒んでいく周囲の人間の弱さを目の当たりにしながらも、純粋な気持ちで卯之助を育てながら働いて、本物の強い男になって行く様を仁左衛門が好演している。
 それとなく協力する大親分の相模屋政五郎の菊五郎や、友達の大工役の染五郎が脇をしっかりと締めていた。

 


舟木一男第十回記念特別公演

平成18年8月 新橋演舞場

演 目 役 者 観 劇 記
谷 正純作
野口雨情
 ものがたり

    船頭小唄  


  宮永 雄平演出
    
  

野口雨情
       舟木 一男

妻つる
      荻野目慶子

先妻ひろ
      長谷川稀世

愛人芸者まち
      葉山 葉子

  舟木一男第10回記念公演とうたっての舞台である。
  明治から大正、昭和にかけて多くの詩を作った、雨情の流転の生涯を演じたもの。
  雨情を巡る女達や、石川啄木を始め当時の詩人達、作曲家中山晋平等の交流と激動の時代を背景に、旨く雨情の実像を浮かび上がらせていた。
  また、船頭小唄や波浮の港、雨降りお月さん、赤い靴、七つの子などの代表作をエピソーを折込みながら紹介し、感動的にまとめていた。
  舟木も余裕を持って演じ、先妻(長谷川稀世)や、芸者まち(葉山葉子)が脇をしっかり固めていた。

  


秀山祭九月大歌舞伎
初代中村吉右衛門生誕百二十年

平成18年9月 歌舞伎座

演 目 役 者 観 劇 記

菅原伝授手習鑑

車 引
   (くるまひき)

   

梅王丸
       松 緑

松王丸
      染五郎

杉王丸
      種太郎

藤原時平公
      段四郎


  御所に仕える梅王丸、桜丸、松王丸は、三つ子の兄弟であるが、主人が異なるため、敵味方同士となっている。
  その対立振りを示す荒事の様式美が見事。爽やかな隈取をした梅王丸の松録が、すっかり貫禄を付けて来た一幕であった。


双蝶々曲輪日記

引 窓
   (ひきまど)


南与平
       吉右衛門

女房お早
      芝 雀

濡髪長五郎
      富十郎

実母お幸
     吉之丞

  人を殺めた大関の濡髪(ぬれがみ)長五郎が、南方与力の後妻となった実母お幸のもとに、逃亡前の暇乞いにやってくる。
  ところが、実母の義理の息子の与兵衛が、この日亡父の跡目を継ぎ、代官に取り立てられたところ。
  その初仕事が、殺人犯の長五郎を捕縛することであった。
  実の親子と義理の親子、中秋の名月の光が差し込む引窓の開閉を巧みに使いながら、互いに気遣う善意の人々の苦悩・・・・。秀作であった。
  初代吉右衛門の名演で評判をとった作品を現吉右衛門が見せてくれた。富十郎の力士姿の演技は、始めて見たが、これも素晴らしい。今までのイメージとは違う一面を見せてくれた。


 

六歌仙容彩
  (ろっかせん
    すがたのいろどり)

    業平小町
   文   屋


   長唄囃子連中
   清元連中


小野l小町
       雀右衛門

在原業平
      梅 玉

文屋康秀
      染五郎


  古今和歌集の歌人が、江戸の現世に登場したらという趣向の舞踊。
  小野小町と業平の美人、美男による典雅な動く絵巻にうっとりした後は、一転して色好みの文屋康秀が女官たちと戯れる飄々とした味わいのある舞踊となる。
  染五郎の戯れ踊る姿はなかなかのもの。面白かった。



菅原伝授手習鑑

寺子屋
    (てらこや)


松王丸
       幸四郎

武部源蔵
      吉右衛門

春藤玄著
      段四郎

園生の前
      福 助


  御馴染みの寺子屋である。今回は武部源蔵に吉右衛門、松王に幸四郎と最高の組み合わせとなった。
  菅原道真の家臣の源蔵は、妻と寺子屋を営みながら、道真の子菅秀才をかくまっていた。
  それを嗅ぎつけた敵の藤原時平は、管秀才の首を差し出すように命じ、臣下の松王丸と春藤玄著に首実検に差し向ける。
  源蔵は苦悩の末、身代わりの子の首を出すが、その子は実は、松王丸の子であった・・・・・
  同じみの筋ではあるが、何度見ても泣かされる名場面である。子供を犠牲にせざるを得なかった公人としての悲痛な事情と、親としての慟哭、幸四郎、吉右衛門が見事に演じていた。

  今回は、久しぶりに桟敷席での観劇であった。やはり、桟敷席での観劇は、素晴らしい。お金には変えられないものがある。


吉例顔見世大歌舞伎

平成18年11月 歌舞伎座

演 目 役 者 観 劇 記

通し狂言
伽羅先代萩
(めいぼくせんだいはぎ)

      花水橋
    竹の間
    御 殿
    床 下
    対 決
    刃 傷


   

乳母政岡
       菊五郎

沖の井
      三津五郎

八汐
      仁左衛門

仁木弾正
      團十郎


  足利家の当主、そしてその子供鶴千代が悪臣に命を狙われる。
  その首謀者である執権仁木弾正の妹八汐と、鶴千代の乳母である政岡とが、鶴千代の命を巡り、御殿で繰り広げられる女同士の痛烈な戦い。毒味役でもあった政岡の子供の身代わり死、そして悪役八汐の死と続く。
  執権
仁木弾正の失墜と大団円に向かって波乱万丈に展開していく見所たっぷりの芝居である。
  今回は仁左衛門の悪女ぶりと、それに対抗する菊五郎の乳母が良かった。
  この狂言は10年ぶりの通し上演で、たっぷり楽しむことが出来た。


七枚続花の姿絵

源 太
願人坊主
   (げんた、がんにんぼうず)


  常磐津連中


梶原源太、願坊主
       三津五郎


  舞踊の名手、三津五郎の独り舞台である。
  梶原源太景季と言えば、歌舞伎では風流を解する色男の代名詞。そして願人坊主は、ひょうきんな坊主くずれの大道芸人。全く異なる二人を見事に演じ分けていた。

 



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