陣地地区において、共同建替えを中心とした事業の考え方について、
懇談会や家庭訪問を繰り返した。 個別訪問では、現在の住宅や住環境が生活にどんな不便をもたらしているか、
反対に地区の良いところ、また、家族生活の歴史や隣近所とのおつきあいなどについて何回もお話を聞いた。
回を追う毎に立ち入った話となり、相続が解決できていない家庭、子世帯と同居したいけれどできない現状、
育ち盛りの子どもに部屋を与えたいなど、切実な声を聞き取ることができた。
借地人同士でも対立の要因となっていた菜園問題(菜園の権利の扱い)の解決方針が大きなテーマとなっていたが、
借地している全体の面積のうち6割を借地人の権利と認めることで方針が立ち、土地所有者・借地人双方の合意を得た。
権利者は当初年をとって共同住宅はなじまないという思いも強かったが、この不安定な権利の問題をなんとかいま解決して
おきたいという思いから、次善の策として共同建替え事業を選択したようだ。
いずれかの参加メニューにより生活再建を図る方向で事業参加していこうという確認がなされたため、平成8年5月に共同建替え事業の検討に関する確認書を交わした、
これを検討合意と呼ぶ(表─ 1)。 この後鶴瀬東2─1 地区建設協議会が発足し、共同建替え事業の先進例見学や、共同住宅での住まい方についての勉強会、補助金申請など行ってきた。
平成9年度に入り、生活再建についてより具体的な検討に踏み込んだ。事業参加形態について具体的なイメージを持つために、概算による権利床を提示し、
権利の小さい方は増床やコミュニティ住宅についてもあわせて検討してもらった。それぞれの家庭の事情により、転出(金銭給付)を選択する地権者も出てきた(表─2 )。
各人の参加形態のイメージができつつある中で鶴瀬東2─1 地区共同建替え事業に関する合意書
(建設合意と呼ぶ)に取り組んだが、生活再建のイメージがなかなかつかめない地権者などの迷いも大きく全員合意までに手間取った。
平成10年度末に土地の鑑定評価と建物調査を行い、これまで概算で検討してきた権利床が、
より具体的になった。あわせて隣接する土地所有者にも事業参加を呼びかけ共同住宅の敷地条件がよりよくなった(図─ 5)。
建設合意には時間がかかったが、「全員合意で進める事業」を基本にして行政からの対応、地元での日常的な近隣関係の構築などに努力し、
昨年10月に関係権利者全員の合意を得ることができた。
建設協議会共同化部会として、12月には基本設計に関する業務委託契約を交わし、現在基本設計が進んでいる。
これまで集合住宅に住んだことのない地権者が大半で、マンションに対する不安は大きいものがある。
音の問題については「上下階の音についてはどこのマンションでも問題となる」「気兼ねするような窮屈な生活はいやだ」
など共通して話が出る。また、従後とじこもりがちの生活にならないよう、できるだけ今の生活パターンを変えない、ハード的ソフト的な働きかけや工夫が必要だ。
周辺地権者の要望もとりいれるため、建設協議会主催で懇談会を開催した。
もちろん「なるべく空地を多くとって階高を抑えてほしい」という要望が出るので、
分棟方式で接地性のある建物にしていくことをお話しし、今後も計画が煮詰まる前に再度周辺の方の意見を聞く会を持つ予定としている。
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