密集市街地で生活再建をめざした取り組み
〜富士見市鶴瀬東地区の事例〜

(株)まちづくり研究所 岸岡 のり子


4.事業組立


4-1民間事業と公共事業の一体化


永く、土地所有者にとっては「権利関係を解消し自己利用したい」という希望、借地人には「ここに住み続けたい」 「住宅を改善したい」という希望があった。それぞれの希望を実現させるには、住宅再建と地区施設整備を一体化して行うことがキーポイントである。
一般に密集市街地については、住宅の老朽化・高齢化・権利関係などが悪循環となって地区の停滞を招いて いると分析している(図─6)。 これらの現象を理由に住環境整備事業が進まないという話を各地で聞くが、 当地区では「問題が複雑で個人の努力では解決不能だからこそ、この悪循環を一挙に解決する方策として、 地区施設整備と共同建替え事業を一体的に進める」という方針を示し、行政と地権者の理解と協力のもとに 事業が進展している。
密集市街地の特徴
図ー6密集市街地の特徴

4-2事業計画(案)


公共は、共同化により公共用地を確保することができ、 対して民間(権利者)は用地補償費や建物補償費を共同建替え事業に繰り入れることで、 事業の実現性が高まっている。当事業では、密集市街地整備促進事業による補助金と公共が行う地区整備事業による補償費を、 共同建替え事業の収入金として組立てている。これにより、地権者はいわゆる等価交換で共同住宅の床を取得することができる。 保留床は地権者が買い戻すことで処分し、第三者分譲はできるだけ抑え建物が周辺と調和したボリュームでおさまるよう計画している。
 それぞれの従後の土地所有形態(図─5 )を勘案した土地の交換・分合についても課題となっている。他事業との合併施行についても検討しながら、  最終的にはスケジュールと地権者負担とを勘案したうえ判断したい。