まちづくりの考え方・すすめ方〜個別意向の積み上げによる合意形成

まちづくり研究所 田村孝平 丸山 豊 杉田典夫


1.斜面住宅地の問題点とまちづくりの目標


●車が入らない、坂段がきつい


 車が進入できず、階段道や急な坂道の斜面住宅地では、「階段道がつらい」「病気や怪我をしたとき、災害のときが心配」「車が横付けできれば」といった声があちこちから聞こえてきます。そして住んでいる多くの方が生活道路の実現を切実に願っています。同時に、住み慣れたこのまちに住み続けたいという思いもたいへん強いものです。北大浦地区で実施した居住者アンケートの結果では、76%の方がこれからも住み続けたいと考えています。
 しかし、こうした願いがあるにもかかわらず斜面住宅地では、敷地が狭く車道に接道していないとか、複雑な権利関係、各世帯の高齢化などが、住み続けるための住宅の更新を阻んでおり、住宅の老朽化が進んでいるのが実態です。
 北大浦地区では、わずかにバイクが通れる1〜2m幅の道路が、等高線に沿ってとおっており、地区内の生活道路として利用されています。この「バイク道」と垂直につながって1〜2m幅の「階段道(タテ道)」  があり、さらに1m幅程度の「ヨコ道」が「階段道」のあいだをとおり「あみだくじ」のようになっています。場所によっては「ヨコ道」がなく「櫛の歯」状の道路配置になっています。
 住宅の多くは「階段道」や「ヨコ道」と接道していますが、さらに、「階段道」にも接していない無接道敷地も少なくありません。
斜面
階段

●住宅の老朽化と高齢化


 このような道路条件のもとで、住宅の建替えができず老朽化が進行しています。車を利用する若年世帯は地区外に転出し、
 人口の減少と高齢化が平坦地よりも加速度的に進行しています。
 そして高齢で年金生活の世帯では、住宅の建替えがいっそう困難になります。 
 このような悪循環が、まちの活力を低下させ、地元商店街が停滞する一大要因となっています。  
住宅宅地の問題点
住宅宅地の問題点

●まちづくりの目標


面住宅地のまちづくりは3つの目標を持っています。第一に「住みつづけられるまちづくり」、第二に「災害に強いまちづくり」、第三に「活力のあるまちづくり」です。 住み慣れたこのまちで安心して住み続けられるようにすること、そして若い世帯を呼び戻し地域の活力を取り戻す。地域コミュニティを再生するということです。
 これらの目標を達成するためには、それぞれの住宅の改善・更新とともに周辺環境(生活道路)の整備、これを一体的に進めることが基本問題です
まちづくりの目標
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