まちづくりの考え方・すすめ方〜個別意向の積み上げによる合意形成

まちづくり研究所 田村孝平 丸山 豊 杉田典夫


2.まちづくりの検討─それぞれの住まいと生活から、共同建替えを中心に住宅改善


●それぞれの住まいと生活から


 まちづくりの検討というと、一般的に、道路をどこにつくるのかといった公共の問題を優先的に検討する場合がほとんどです。  そして住民の中でも、まちづくりとは道路や公園をつくることであって、自分の住まいや生活をどうするかは私的な問題として扱い、  自らまちづくりの課題から取り下げている人も少なくありません。これまでのまちづくりの様々な事例をみれば、そのように考えてしまうのは無理もないことでしょう。
 では個々の住まいや生活の問題は取り上げなくていいのかというと、そうではありません。  そのまちで暮らしている人々にとって最大の関心は、自分の住宅がどうなるのか、生活がどうなるのかということです。
 よく言われることですが、「総論賛成、各論反対」という問題は、まちづくりの中で「各論」である個人の生活や生業を取り上げない、  あるいは後まわしにすることによって起こります。言いかえるならば、個人の財産である土地・建物の権利と居住生活を尊重し、それぞれの生活が自立する条件を考えずにまちづくりは成立しないということです。
 したがって、第一に「各論」であるそれぞれの住まいの問題、生活の問題をまず考えます。  そして個別意向をふまえた上で、周辺の環境、つまり生活道路を含めた全体の問題(=「総論」)を考えます。  こうして「各論」と「総論」の具体化を繰り返しながら、双方が一致したところで、同時に一体的に整備をすることになります。

●共同建替えを中心にした住宅改善の検討


密集住宅地は、一般的に「接道が悪く、狭小な敷地に木造老朽住宅が密集している」状況を示しています。そこで暮らしている多くの人々が生活道路をつくってほしいと 願っていますが、このような地区で道路を整備するためには、そこで暮らしている人々の住宅敷地を使わなければならない場合がほとんどです。
 ところが道路用地に該当した人が補償金で地区外に転出するという選択しかできないとすれば、まちづくりの効果は半減し、何よりも住み続けたいという人々の願いに応えることができません。
 共同建替えは、「住み続けたい」という個々の生活要求に根ざしながら、土地を共同利用し、生活道路の整備と同時にそれぞれの住まいの再建を実現する、住み続けるためのまちづくり手法です。

 

共同建替えモデル構想

 以下の図は共同建替えのイメージを示すためのモデル構想図です。

 左側の図は従前の配置図、つまり現状です。木造1〜2階建の戸建て住宅が密集し、狭い坂道や階段道しかありません。右側の図は、共同建替え後の配置図(モデル構想)です。共同建替えで3〜4階建の集合住宅を建設。これにより生活道路、広場、駐車場などの用地を生み出します。

【左図】従前配置図

【右図】共同建替え後の配置図(モデル構想図)

 
断面図

 集合住宅の上階と道路をブリッジで接続し、エレベーターを地域に開放すれば、道路から離れた周辺居住者も階段道の上り下りを軽減することができます。

(制作協力:環境計画研究所)


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