まちづくりの考え方・すすめ方〜個別意向の積み上げによる合意形成

まちづくり研究所 田村孝平 丸山 豊 杉田典夫


4.個別の意向と条件にもとづいて段階的に検討する


●個別ヒアリングと懇談会


 共同建替え事業は、その成立を前提としながら、個々の意向や条件にあわせて、多様な住宅改善の方策を検討します。
 そして、個別の検討は、個別ヒアリングで、これまでの生活のこと、将来の生活のこと、住まいのこと、将来の建替え意向などを 伺いながらすすめます。
 それぞれに、まちづくりへの期待があるのと同時に不安もあります。自分の家がほんとうに再建できるのだろうか、  あるいは既存の一部マンションにみられる欠陥・管理問題などから、集合住宅の生活に対する不安などもあります。  また、事業に期待しつつもそれ以前の家庭や近隣の問題などもあります。ヒアリングは個別にある一つひとつ不安を取り除く ことから始まります。
 共同建替え事業に関わる全体の問題は、検討区域ごとの懇談会(協議会)で決めきますが、個別の問題はそれぞれの家庭で個別に判断します。つまり、まちづくりの合意形成は、懇談会と個別ヒアリングを繰り返しな がらすすめるのです。

●「試しの検討」を経て参加合意へ


 必要な区域の個別ヒアリングが一巡すれば、建替え意向の強い区域を「共同建替え検討区域」として絞り込み、 「試しの検討」をすることになります。
 そして検討開始の確認をおこなった関係者間で「まちづくり協議会」を結成し、事業のしくみを具体的に検討しながら、 各世帯ごとに、土地・建物等の従前資産、共同建替え後に取得できる床面積、さらに建替えの費用だけでなく、  入居後の管理費や修繕積立金、固定資産税などを試算します。
 ここで大切なのは、従前資産の金額そのものではなく、それをもとにして、これからの住生活の可能性を見いだせるように、 各世帯の生活意向を確かめながら検討を重ねていくことです。< こうした検討の結果、それぞれの住まいの再建、生活再建の見通しが立ち、納得したところで事業参加に進んでいきます。 事業に参加するか否かは、各世帯が個別に判断します。
共同建替えの段階的な検討手順
共同建替えの段階的な検討手順

トップに戻る