歌 舞 伎 − 観 劇 記 - |
平成21年
3月:元禄忠臣蔵/江戸城刃傷、最後の大評定、御浜御殿綱豊卿
4月:伽羅先代萩
5月:金閣寺、心猿/近江のお兼、らくだ
6月:正札附根元草摺、双蝶々曲輪日記/角力場、蝶の道行、女殺油地獄
8月:石川五右衛門
10月:毛抜き、蜘蛛の拍子舞、河庄、音羽嶽だんまり
11月:仮名手本忠臣蔵
12月:引窓、雪傾城、野田版鼠小僧
歌舞伎座さよなら公演
三月大歌舞伎
平成21年3月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
真山青果作 真山美保演出 元禄忠臣蔵 江戸城の刃傷 (えどじょうのにんじょう) 2幕 |
浅野内匠頭 梅 玉 多門伝八郎 弥十郎 片岡源五右衛門 松 江 |
江戸城松の廊下で、浅野内匠頭が吉良上野介に刃傷に及び城内が騒然となる。やがて取り押さえられ、多門伝八郎の強硬な反対意見も入れられず、評議の結果切腹となる。 そして家来の片岡源五右衛門と対面を果し、切腹していく。と赤穂事件の発端から内匠頭の最後までをドラマテッィクに描いている。 |
真山青果作 真山美保演出 元禄忠臣蔵 最後の大評定 (さいごのだいひょうじょう) 2幕 |
大石内蔵助 幸四郎 大石妻おりく 魁 春 大石長男松之丞 巳之助 |
赤穂城明渡しの期日が迫り城内が混乱する中、家老の大石内蔵助はその態度を明確にしない。江戸よりの知らせで、吉良上野介が無事であることを聞き、最後の大評定を行う。 その席で大石は心中を明かさず、総ての行動を一任して欲しいと告げ、賛同者の血判を求める。 |
真山青果作 真山美保演出 元禄忠臣蔵 御浜御殿 綱豊卿 (おはまごてんつなとよきょう) 2幕 |
徳川綱豊卿 仁左衛門 御祐筆江島 秀太郎 富森助右衛門 染五郎 愛妾お喜世 芝 雀 |
次期将軍の徳川綱豊は愛妾達と浜遊びに興じ、政に関心が無いように装っている。しかし、学問の師である新井勘解由(富十郎)には赤穂の浪人たちに仇討ちさせてやりたいと心中を述べる。 そんな中、お喜世の兄で赤穂浪人の富森助右衛門が浜遊びの見物を願い出る。この場に吉良も招かれていることを知り襲撃しようとする。 しかし、綱豊は是を遮り、その軽率な振舞いを叱り、ただ命を狙うだけでは意味がないと諭す。 仁左衛門と染五郎の台詞の応酬が見応えのある舞台となっていた。 |
歌舞伎座さよなら公演
四月大歌舞伎
平成21年4月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
通し狂言 伽羅先代萩 (めいぼくせんだいはぎ) 5幕 花水橋 竹の間 御殿 床下 対決 刃傷 |
足利頼兼 橋之助 絹川谷蔵 染五郎 乳母政岡 玉三郎 沖の井 福 助 松島 孝太郎 八汐 仁左衛門 仁木弾正 吉右衛門 |
江戸時代に実際に起こった伊達藩のお家騒動を劇化した名作。 奥州の大名足利頼兼が身持ち放埓の為、隠居を命じられ、家督は頼兼の子の鶴千代が相続することになるが、これを不服とする仁木弾正を始めとする一派が鶴千代を亡き者にしようと動き出す。 それを我が子を犠牲にしてまでも、必死に食い止めようとする乳母政岡。やがてお家騒動が幕府に知れ、評定所で裁かれることになる・・・ 御馴染みの芝居を「歌舞伎座さようなら公演」に相応しい豪華配役での競演となった。 特に乳母政岡の玉三郎や、憎まれ役の八汐を演じた仁左衛門の熱演が光った。 政岡の子千松や鶴千代を演じた子役達がなかなかの演技を見せていた。 |
五月大歌舞伎
平成21年5月 新橋演舞場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
祇園祭礼信仰記 金閣寺 (きんかくじ) 1幕 |
松永大善 吉右衛門 雪姫 芝 雀 此下東吉 染五郎 狩野之介直信 福 助 松永鬼藤太 錦之助 |
謀反を企む松永大善は、将軍足利義輝を殺害し、その母を金閣寺の2階に軟禁する。 一方、金閣の天井に墨絵の龍を描かせるため、狩野之介直信と画家雪舟の孫である雪姫を連れてくるが、雪姫の親の仇が大善であることを知り、仇を討とうと切りかかる。しかし、取り押さえられ縛られてしまう。 雪姫は祖父雪舟の故事を思い出し、縛られたまま降りしきる桜の花びらをかき集め、足で鼠を描くとその鼠が・・・ 舞台一杯に背景が見えなくなるほどの大量の桜吹雪、そして滝に登場する龍、足元の鼠と見せ場の多い舞台である。 その中で、父雀右衛門が演じた雪姫を、芝雀(しばじゃく)が初役ながら見事に演じ切った。 |
心猿 近江のお兼 (しんえん、おうみのおかね) 長唄囃子連中 |
心猿、近江のお兼 福 助 |
大津坂本の日吉神社が舞台。山王様の使いの猿が紳馬を連れて登場、賑やかな踊りを披露。 続いて琵琶湖を望む堅田の伝説で知られた、怪力娘お兼が暴れ馬を静めたり、布晒しを使い、襲ってくる男を手玉に取る舞踊。 文化10年(1813年)初演の近江八景を見立てた八変化舞踊の秋の部である。相変わらず魅せてくれる福助であった。 |
岡鬼太郎作 眠駱駝物語 らくだ 3場 |
紙屑買久六 吉右衛門 手斧半次 歌 昇 妹おやす 高麗蔵 馬吉 由次郎 |
駱駝と渾名された遊び人の馬吉が河豚に当たって死亡。 遊び仲間の手斧半次が葬式を出そうとするが、金が無い。通りかかった紙屑買いの久六を手伝わせ、金を出し渋る家主より金をせしめ様とする・・・ 死んだ馬吉の手足を取り、踊りを踊らせたり、手に入れた酒でのの宴会の盛り上がりと、落語を元にした、おかしみ溢れる展開だ。観客はもう爆笑の渦、文句なしの面白い舞台である。 |
歌舞伎座さよなら公演
六月大歌舞伎
平成21年6月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
正札附 根元草摺 (しょうふだつき こんげんくさずり) 長唄囃子連中 |
曽我五郎 松 録 舞鶴 魁 春 |
御馴染み曽我五郎は、父の仇である工藤祐経の館へ向かおうとするが、それを止めたのが小林朝日奈の妹舞鶴であった。 女ながらの大力無双の舞鶴は、五郎の持つ鎧の草摺り持って、強引に引き止める。 引き合い事を取り入れた長唄の名作舞踊。 |
双蝶々 曲輪日記 (ふたつちょうちょう くるわにっき) 角力場 1幕 |
濡髪長五郎 幸四郎 放駒長吉 吉右衛門 山崎屋与五郎 染五郎 藤屋吾妻 芝 雀 |
関取の濡髪(ぬれがみ)長五郎と、素人角力の放駒(はなれごま)長吉との大一番で盛り上がる角力小屋前。濡髪贔屓の山崎屋与五郎は恋仲の芸者吾妻と逢引中だが勝負の行方が気になったしょうがない。 勝負は放駒があっけなく勝ってしまう。そして、放駒は自分の贔屓に頼まれ断り切れずに、芸者吾妻の身請けを手伝うことになるが、濡髪に訳を説明され説得されてしまう。 濡髪と放駒の達引が見所であるが、与五郎役の染五郎がなかなか見せてくれた。 |
武智鉄二構成・演出 蝶の道行 (ちょうのみちゆき) 竹本連中 |
助国 梅 玉 小槙 福 助 |
この世で結ばれることが出来なかった二人が、蝶の姿になって戯れ遊ぶが、地獄の責めに逢い、その羽ばたきを止めるのでした・・・ と義太夫舞踊であるが、真っ暗らの舞台で、スポットを浴びた2匹の蝶々が綺麗に光って舞う様は圧巻であった。 |
近松門左衛門作 女殺油地獄 (おんなごろしあぶらじごく) 3幕 |
河内屋与兵衛 仁左衛門 豊嶋屋お吉 孝太郎 豊嶋屋七左衛門 梅 玉 芸者小菊 秀太郎 |
河内屋の放蕩息子与兵衛は馴染みの芸者小菊の客に喧嘩を売ろうとしていると、その場に居合わせた油屋の豊嶋屋のお吉に意見されてしまう。しかし、言う事を聞くはずも無く、やがて侍に無礼を働き、切られそうになる。 その場をやっと逃れた与兵衛だが、さらに悪事を重ね、ついには金策に困り、お吉に頼っていく。しかし断られると・・・・ 最後の油が蒔かれた家での殺戮場面は、まさに油地獄であった。仁左衛門と孝太郎の、油まみれの熱演は強烈であった。 |
八月歌舞伎
平成21年8月 新橋演舞場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
樹林 伸作 藤間勘十朗振付・演出 石川五右衛門 (いしかわごうえもん) 長唄囃子連中 |
石川五右衛門 海老蔵 茶々 七之助 豊臣秀吉 團十郎 前田利家 市 蔵 百地三太夫 猿 弥 |
天下に轟く大泥棒、釜茹でで壮絶な最期を遂げた謎の多い五右衛門を新たな視点、解釈で挑んだ新作歌舞伎。 こそ泥から始まり、修行、そして天下の大盗賊となり、天下を治める秀吉に戦いを挑むまでを痛快に描いている。と言うより荒唐無稽に描いている娯楽大作であった。 金の鯱を絡めた荒事(あらごと)や茶々との和事(わごと)、秀吉と五右衛門の実事(じつごと)、そして舞踊を絡め、最期は葛篭を背負っての宙吊りと盛りだくさんの舞台であった。 |
歌舞伎座さよなら公演
芸術祭十月大歌舞伎
平成21年10月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
歌舞伎18番の内 毛抜 (けぬき) 1幕 |
条寺弾正 三津五郎 小原万兵衛 錦之助 小野春風 松 也 腰元巻絹 魁 春 |
文屋豊秀の家臣条寺弾正は、病の為に豊秀への輿入れが遅れている小野家の息女錦の前の様子を伺いに来る。 髪の毛が逆立つ奇病を見た、弾正は主の小野春道との対面を求めて、待っていると、手にしていた毛抜きが踊りだし・・・ と、展開し奇病の仕掛けを見破り、その裏にあった悪事を暴露していくという痛快な物語となっている。 対面を待つ間の三津五郎が、給仕に来た小姓や腰元に次々と口説いては振られる場面は、軽妙な演技で笑いを誘っていた。 |
藤間勘十朗振付 蜘蛛の拍子舞 (くものひょうしまい) 花山院空御所の場 長唄囃子連中 |
白拍子妻菊 玉三郎 碓氷貞光 松 禄 源頼光 菊之の助 坂田金時 三津五郎 |
物の怪が出るという花山院の御所に、検分のため逗留していた源頼光は、俄かに病にかかる。その憂さ晴らしに碓氷貞光と酒を酌み交わして居る時に現れた蜘蛛を鞘で突くと、怪気が漂い、気を失ってしまう。 気が付くと、目の前に白拍子妻菊が現れ、病の慰みに共に拍子舞を踊るが・・・ 千筋の糸を繰出す妻菊は葛城山の女郎蜘蛛であった。とスケールの大きい舞踊劇である。 |
心中天網島 玩辞楼12曲の内 河庄 (かわしょう) 1幕 |
紙屋治兵衛 藤十郎 紀の国小春 時 蔵 河内屋お庄 東 蔵 粉屋孫右衛門 段四郎 |
大坂天満の紙屋治兵衛は、妻子がありながら遊女の小春と深い仲になり、心中の約束をしている。 それを知った兄孫右衛門は侍姿になり、小春より本音を聞きだす。それを聞いて逆上した治兵衛は、小春を刺そうとするが、侍に手を縛られてしまう・・ 治兵衛役の藤十郎の相変わらずの名演技に、ただ拍手のみ。段四郎の偽侍ぶりもなかなかであった。まさに上方和事の代表作である。 |
音羽嶽だんまり (おとわだけだんまり)) 藤間大河初お目見得 大薩摩連中 |
音羽夜叉五郎 菊五郎 奴伊達平 松 禄 畠山重忠 吉右衛門 雲霧袈裟太郎 富十郎 稚児音若(初お目見得) 藤間大河 |
音羽嶽に現れる音羽夜叉五郎や、着飾った面々が集まり、白旗を手にしながらお互いに探り合う、だんまりである。 松録の長男藤間大河の初舞台で、「初お目見得口上」が行われた。 |
歌舞伎座さよなら公演
吉例顔見世大歌舞伎
平成21年11月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
並木千柳 三好松洛 竹田出雲作 通し狂言 仮名手本 忠臣蔵 (かなてほん ちゅうしんぐら) 大序 鶴ヶ丘社頭兜改めの場 3段目 足利館門前進物の場 足利館松の間刃傷の場 4段目 扇ヶ谷塩冶判官 切腹の場 扇ヶ谷表門 城明渡しの場 浄瑠璃 道行旅路の花婿 |
高師直 富十郎 塩冶判官 勘三郎 桃井若狭之助 梅 玉 足利直義 七之助 大星由良之助 幸四郎 石堂右馬之丞 仁左衛門 星野勘平 菊五郎 腰元お軽 時 蔵 |
御馴染みの通し狂言「仮名手本忠臣蔵」である。今回は、大序から最後の11段目まで、昼夜通しての公演であった。文字通り、さよなら公演の顔見世大歌舞伎に相応しい舞台であった。 大序 鎌倉鶴ヶ丘八幡宮。幕府の典礼の指導を司る高家筆頭の高師直は、将軍足利尊氏の代参の足利直義を、饗応役の桃井若狭之助と塩冶判官と共に出迎える事件の発端が描かれる。 3段目 屈辱の余り、ついに刀を抜き、師直に切りつける塩冶判官。 4段目 殿中で刃傷事件を起こした塩谷判官の切腹。そして、血気にはやる諸士をなだめ、館を明渡す大星由良之助。 浄瑠璃 戸塚の山中で、塩冶判官の家臣星野勘平と腰元お軽が、故郷の里へ落ち延びる有名な場面 と、舞台は展開し、夜の部の討入りで大団円となる芝居である。今回は残念ながら昼の部の此処までであった。名場面の連続で、ただただ芸達者な役者達の競演を見守るだけであった。 相変わらずの満員で、切符を取るのには苦労した。 |
歌舞伎座さよなら公演
12月大歌舞伎
平成21年12月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
双蝶々曲輪日記 引窓 (ひきまど) 一幕 |
南与兵衛 三津五郎 濡髪長五郎 橋之助 母お幸 右之助 お早 扇 雀 |
南与兵衛の妻お早と姑のお幸の所に、お幸の実の子である力士の濡髪長五郎が訪ねて来る。そこへ代官となったばかりの婿の与兵衛が帰宅する。代官としての初仕事が、何んと殺人を犯した長五郎を捕縛することであった。 お早とお幸の様子から、長五郎が2階にいることを悟るが、長五郎が姑お幸の実の子であることを知り、落ち延びさせようとする。 御馴染みの名場面である。前回(平成18年)は、吉右衛門(与平)と富十郎(長五郎)であったが、今回は三津五郎と橋之助である。共に、見せ場の多い、迫力のある舞台であった。 |
御名残押絵交張 (おなごりおしえの はりませ) 雪傾城 (ゆきけいせい) 長唄囃子連中 中村光江振付 |
傾城 魁 芝 翫 役者 栄之丞 勘太郎 芝居茶屋娘お久 七之助 |
一面雪景色の浅草寺。一陣の風とともに、傾城魁が供を連れて現れる。そこへ初芝居の願掛けにやってきた栄之丞とお久に気づくと郭の情景を踊ってみせる。すると雪の精達が現れ、初芝居の成功を祈って共に賑やかに踊りだす。 芝翫が、6人の実の孫達と踊る情緒溢れる長唄舞踊である。 |
野田秀樹作・演出 野田版・鼠小僧 (ねずみこぞう) 一幕 |
棺桶屋三太 勘三郎 お高 福 助 興吉 橋之助 稲葉幸蔵 染五郎 目明しの清吉 勘太郎 大岡忠相 三津五郎 大岡妻りよ 孝太郎 |
正月、芝居子屋では稲葉幸蔵が演じる鼠小僧が大評判であった。そんな中、金にしか興味の無い棺桶屋の三太は、ずる賢く金稼ぎに励んでいる。 そこへ三太の兄の死体が運ばれてきて、兄嫁より無料で棺桶を作ってくれと依頼される。兄に莫大の遺産があることを聞き、喜んで作るが、遺言状には三太と違う名前が書かれてあった。 諦めきれない三太は、兄用に作った棺桶に忍び込み、遺産を盗み出そうとするが失敗。その後、鼠小僧となった三太は忍び込んだ先で名奉行と誉れ高い大岡忠相に出くわす・・・・ 話が急テンポで展開し、抱腹しながら最後まで楽しめる芝居である。勘三郎の最初から最後までの熱演に拍手、拍手であった。 |
平成13年|平成14年|平成15年|平成16年|平成17年|平成18年
平成19年|平成20年|平成21年
TOP | 北海道 | 東 北 | 関 東 | 中 部 | 近 畿 | 中国四国 | 九州他 |