歌 舞 伎 - 観 劇 記 - |
平成22年
1月:麥秋
4月:寺子屋、三人吉三巴白浪、藤娘
5月:寺子屋、吉野山、魚屋宋五郎、お祭り
6月:ANJIN/イングリッシ・サムライ
6月:女房のえくぼ/幸助餅
8月:暗闇の丑松、京鹿子娘道成寺
9月:月宴紅葉繍、沼津、荒川の佐吉、寿梅林萬歳
11月:天衣紛上野初花/河内山と直侍
12月:摂州合邦辻/達陀
1月初春新派公演
平成22年1月 三越劇場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
小津安二郎、野田高梧 「麥秋」より 山田洋次脚本・演出 麥秋 (ばくしゅう) 一幕 |
間宮家祖父 安井 昌二 祖母 水谷 八重子 娘・紀子 瀬戸摩 純 息子・康一 田口 守 嫁・史子 波乃 久里 隣の矢部家母 英太郎 矢部家息子 児玉 真二 |
劇団新派8年ぶりの新作は、小津安二郎監督の「麥秋」をもとにして、映画監督の山田洋次が脚本、演出を手がけた話題作である。 昭和29年、北鎌倉の間宮家の娘に縁談が持ち上がり、縁談をまとめようと躍起になる家族・・・と御馴染みのあらすじであるが、脚本・演出が絶妙で、なかなか楽しめる芝居となっている。 昭和の大道具、小道具も心憎いほど、手が込んでおり、舞台を引き締めていた。 隣の家のおばさん役の英太郎が要所を締め、印象的であった。 |
歌舞伎座さよなら公演
御名残四月大歌舞伎
平成22年4月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
菅原伝授手習鑑 寺子屋 (てらこや) 一幕 |
松王丸 幸四郎 千代 玉三郎 武部源蔵 仁左衛門 戸浪 勘三郎 園生の前 時蔵 |
寺子屋を開く武部源蔵は、匿っている管丞相の嫡子を救うため、寺子を身代わりにすることを思いつくが、どの子も田舎育ちばかり。 そんな中、母親千代に連れられて寺入りしてきた小太郎は、品もあり身代わりに相応しく、源蔵は妻の戸浪に、その決意を明かす。 まもなく、首実験の為松王丸と武士が現れ、身代わりの子・小太郎の首を差し出し、首実検を無事終える。 が、後で身代わりの子は、松王丸の実子であることがわかり・・・ 何度も上演される名場面である。幸四郎の苦渋に満ちた演技が重厚で見応えある芝居となっている。 |
河竹黙阿弥作 三人吉三 巴白浪 (さんにんきちざともえのしらなみ) 大川端庚申塚の場 一幕 |
お嬢吉三 菊五郎 お坊吉三 吉右衛門 和尚吉三 團十郎 夜鷹おとせ 梅枝 |
節分の夜更け、大川端庚申塚でのこと。夜鷹のおとせに娘姿の盗賊、お嬢吉三が近づき、懐から百両を奪い取ってしまう。それを見ていたお坊吉三がそれを巻き上げようとして、二人は刀を抜いて切りあいになるが、そこへ和尚吉三が通りかかり、仲裁に入る。 二人は金を和尚吉三に預けることにし、今日の出会いをきっかけに三人は義兄弟の契りを結ぶ。 七五調の御馴染みの名台詞と芸達者の菊五郎、吉右衛門、團十郎の演じるそれぞれの吉三が、これぞ歌舞伎となっていた。 |
藤娘 (ふじむすめ) 長唄囃子連中 |
藤の精 藤十郎 |
松の大木のもとに、塗り笠を被り、藤の枝を手にした娘姿の藤の精が現れ、男心のつれなさや、娘の恋を艶やかに踊り、松を好きな男に見立てて、差しつ差されつ杯を交わすうちにほろ酔いとなる。 藤十郎の華やかで、可憐な舞踊である。 |
五月花形歌舞伎
平成22年5月 新橋演舞場
歌舞伎座新築工事のため、今月より完成までは新橋演舞場がメインとなります
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
菅原伝授手習鑑 寺子屋 (てらこや) 一幕 |
松王丸 海老蔵 千代 勘太郎 武部源蔵 染五郎 戸浪 七之助 園生の前 松 也 |
寺子屋を開く武部源蔵は、匿っている管丞相の嫡子を救うため、寺子を身代わりにすることを思いつくが、どの子も田舎育ちばかり。 そんな中、母親千代に連れられて寺入りしてきた小太郎は、品もあり身代わりに相応しく、源蔵は妻の戸浪に、その決意を明かす。 まもなく、首実験の為松王丸と武士が現れ、身代わりの子・小太郎の首を差し出し、首実検を無事終える。 が、後で身代わりの子は、松王丸の実子であることがわかり・・・ 先月も見たが、何度も上演される名場面である。今回は若手が張り切っての上演であった。海老蔵が良い味を出していた。 |
義経千本桜 吉野山 (よしのやま) 竹本連中 清元連中 |
佐藤忠信、源九郎狐 勘太郎 静御前 福 助 |
兄源頼朝との不和により都を離れた義経を追って静御前は、家来の佐藤忠信と桜が満開の吉野山に分け入っていくが、忠信の姿を見失ってしまう。 初音の鼓を打ち鳴らすとどこからともなく忠信が姿を表し、旅の憂さを晴らすために壇ノ浦の戦いの様子を語り始める。 ところがこの忠信は、狐の化身であった、と展開する。 勘太郎の時折り狐を思わせる仕草がなかなかであった。 |
河竹黙阿弥作 新皿屋舗月雨暈 魚屋宋五郎 (さかなやそうごろう) 二幕 |
魚屋宋五郎 松 禄 女房おはま 芝 雀 磯部主計之助 海老蔵 浦戸十左衛門 左團次 |
魚屋宋五郎は、磯部邸へ妾奉公で出した娘が、不義の咎により手打ちにあったとしる。そこへ、娘の崩輩が弔問に来て、濡れ衣により手打ちに合ったことを知る。 禁酒していた酒を呑んで気を晴らそうとするが、酒の勢いでお屋敷に直談判に行き、とぐろを巻くという痛快な舞台である。 松禄の酩酊振りや、お屋敷の家老役の海老蔵とのやりとりは、歌舞伎の名場面に相応しい見応えのあるものであった。 |
お祭り (おまつり) 清元連中 |
鳶頭 染五郎 |
年に一度の祭礼で、賑やかな雰囲気の中、ほろ酔い機嫌の鳶頭が子役や喧嘩相手までも登場して踊る様は楽しく、そして粋で華やかであった。 今回は歌舞伎名作4作品を、今売り出し中の若手中心の公演であった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
ANJIN イングリッシュ・ サムライ 演出 グレゴリー・ドーラン 脚本 マイク・ポウルトン 河合祥一郎 |
家康 市村正親 三浦按針 オーウェン・ ティール 宣教師ロドリゲス 藤原竜也 |
オランダ船リーフデ号のイギリス航海士ウイリアム・アダムスが日本に漂着。家康の下、活躍し後に旗本となった三浦按針の生涯を描く、感動作。 舞台展開が見事で、脚本・演出とも小気味好く纏めてあり、184分の長丁場があっという間に過ぎた。 なお、今回は舞台の映像化されたものを鑑賞した。 |
藤山寛美歿後二十年
六月喜劇特別公演
平成22年6月 新橋演舞場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
茂林寺文福 館直志 合作 女房のえくぼ 演出 浅香 哲哉 |
藤山直美 小島秀哉 小島慶四郎 大津嶺子 渋谷天外 |
運送業・丸福の主人は、美人ホステスに振られ、その後いやいや結婚したのが今の女房。ところが結婚したとはいえ、不器量の女房には見向きもしない生活であったが、女房は文句一つ言わず懸命に働いている。そんな折り、美人ホステスを奪った男が落ちぶれて現れた。 相変わらず、達者な直美にただ破顔、拍手喝采であった。 |
一堺漁人作 藤山寛美二十快笑の内 幸助餅 演出 米田 亘 |
藤山直美 西郷輝彦 小島秀哉 小島慶四郎 大津嶺子 渋谷天外 |
相撲に入れ込む余り身代を潰してしまった大黒屋幸助は、金の切れ目が縁の切れ目、贔屓の力士・雷(いかづち)に裏切られたことから、心を入れ替え、懸命に働き立派な餅屋の店を構えるまでになった。 するとそこへ、大関となった雷が江戸より戻ってくる。 藤山寛美没後二十年を記念して、「藤山寛美二十快笑」の内の代表的な人情喜劇の上演であった。 最後に、藤山直美より舞台挨拶あり。また演舞場ロビーには、亡き藤山寛美の舞台写真が多数掲示されており、改めて素晴らしい役者であったことを思い起こさせてくれた。 |
八月花形歌舞伎
平成22年8月 新橋演舞場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
長谷川伸作 村上元三演出 寺崎裕則演出 暗闇の丑松 (くらやみのうしまつ) 三幕 |
暗闇の丑松 橋之助 四郎兵衛女房お今 福 助 丑松女房お米 扇 雀 四郎兵衛 弥十郎 料理人祐次 獅 童 |
料理人の丑松にはお米という恋女房がいるが、お米の強欲な母は、二人を別れさせ、金持ちの妾奉公に出そうとする。それを知ると丑松はその母と見張りの浪人を殺害し、兄貴分の四郎兵衛にお米を預け、江戸を離れる。 一年後に戻ると、板橋宿で女郎になっているお米に再会。お米が四郎兵衛に騙され、苦界に売り飛ばされた事情を語るが、信じてもらえず・・・・・ 不幸な運命に翻弄される男女の姿を描いた名作、見応えのある舞台となっている。 |
京鹿子娘道成寺 (きょうかのこむすめどうじょうじ) 長唄囃子連中 |
白拍子花子 福 助 白拍子化 松 江 大館左馬五郎照剛 海老蔵 |
桜が咲き誇る紀州の道成寺。白拍子花子が再興された釣鐘を拝ませて欲しいと頼み、その代わりに舞を所望され、次々と華やかな踊りを披露し、鐘の中に飛び込んでしまう。 実は花子は、恋の恨みから蛇となって道成寺の釣り鐘を焼いた清姫の怨霊であった・・・ 御馴染みの長唄舞曲の大曲、京鹿子娘道成寺である。福助の華麗な踊りに、豪壮な海老蔵が最後を締めてくれた。 |
秀山祭九月大歌舞伎
平成22年9月 新橋演舞場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
藤間勘祖振付 月宴紅葉繍 (つきよのうたげもみじのいろどり) 長唄囃子連中 |
在原業平 梅 玉 小野小町 魁 春 |
平安時代の歌人で六歌仙に数えられている在原業平と小野小町の二人が月を眺めながら舞い遊ぶさまを季節感溢れる舞台で展開。 |
伊賀越道中双六 沼津 (ぬまづ) 一幕 |
呉服屋十兵衛 吉右衛門 雲助平作 歌 六 お米 芝 雀 荷持安兵衛 歌 昇 |
東海道を旅する呉服屋十兵衛は、荷物を持たせた雲助の平作が怪我をしたので、持参の印籠の妙薬で治療する。そして、平作の娘お米に一目ぼれし、平作の家に立ち寄ることになる。 その夜、お米が十兵衛の印籠を盗もうとする・・・ 偶然が引き起こす悲劇を巧みに描いた義太夫狂言の名作。歌六が、老いた雲助平作を実に見事に演じていた。 今回、中村歌六、中村歌昇が萬屋から播磨屋に複することになり、劇中で吉右衛門とともに口上披露があった。 |
真山青果作 真山美保演出 江戸絵両国八景 荒川の佐吉 (あらかわのさきち) 四幕八場 |
荒川の佐吉 仁左衛門 相模屋政五郎 吉右衛門 丸越女房お新 福 助 鐘馗の仁兵衛 段四郎 大工辰五郎 染五郎 |
腕の良い大工からやくざの世界に憧れた佐吉は、親分の鐘馗(しょうき)の仁兵衛のもとで子分の身であった。そんな中仁兵衛親分は浪人に切られ、縄張りを奪われてしまう。 本所の裏長屋で零落した生活をしている仁兵衛は、姉娘のお新が産んだ盲目の男子を佐吉に託し、いかさま賭博に手を出し殺されてしまう。 残された佐吉は大工の仲間辰五郎の助けを借り、仕方なく男の子を苦労して育てていく・・・と展開して行く男の生き様をを描いた世話物である。 2度目の観劇(前回は平成18年)であったが、仁左衛門の前回に劣らぬ熱演で、何度見ても良く出来た芝居である。 |
寿梅鉢萬歳 (ことぶきうめばちまんざい) 竹本連中 囃子連中 |
萬歳 藤十郎 |
人形浄瑠璃の四変化舞曲の一つ。初春の訪れを手ゲル萬歳がやって来て、吉例の舞を舞い始め、繁栄と長寿を願うと、華やぐ町へと去っていく。という目出度く明るい舞踊だ。 |
吉例顔見世大歌舞伎
平成22年11月 新橋演舞場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
河竹黙阿弥作 宇野信夫補綴 通狂言 天衣紛 上野初花 (くもにまごう うえののはつはな) 河内山と直侍 序幕 湯島天神境内 上州屋店先 二幕 大口楼廻し部屋 同 三千蔵部屋 吉原田圃根岸通 三幕 松江邸広間 同 書院の間 同 玄関先 四幕 入谷村蕎麦屋 大口屋寮 浄瑠璃 「忍逢春雪解」 大詰 池之端河内山妾宅 5幕11場 |
河内山宗俊 幸四郎 片岡直次朗 菊五郎 遊女三千蔵 時 蔵 金子一之条 段四郎 松江出雲守 錦之助 腰元浪路 梅 枝 錦之助 田之助 秀太郎 |
河内山宗俊は、金の無心のため、質店の上州屋に訪れ、そこの娘が腰元として奉公にでている先の主人・松江出雲守から妾になれと迫られていることを知る。 川内山は礼金と引き換えに娘を連れ戻すことを約束する。 そして、上野寛永寺の使僧に化け、出雲守の屋敷に乗込み、無事に娘を引取ることに成功するが、帰りがけに家臣に素性を暴露されて、と展開していく。 講談「天保六花撰」をもとに作られた作品で、江戸城のお数寄屋坊主河内山宗俊と、その悪事の片棒を担ぐ御家人くずれの片岡直次朗を中心に、直次朗と相思相愛の遊女三千蔵、剣客の金子市之丞など、御馴染み江戸の小悪党と交差する人間模様を、生き生きと描いた作品。 大団円の潔さが、まさにこの作品の真骨張であった。 |
十二月大歌舞伎
平成22年12月 日生劇場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
管専助 若竹笛躬作 通狂言 摂州合邦辻 (せっしゅうがっぽうがつじ) 四幕 |
玉手御前 菊之助 羽曳野 時 蔵 合邦道心 菊五郎 おとく 東 蔵 奴入平 松 禄 俊徳丸 梅 枝 次郎丸 亀三郎 |
河内国の大名、高安左衛門は、亡き正妻が生んだ俊徳丸を跡継ぎと定める。年長であるが、母が側室のために世継ぎになれなかった次郎丸は、俊徳丸を亡き者にして家督を奪おうと画策する。 そんな中、左衛門の後妻となった玉手御前は、住吉大社参詣のおりに、俊徳丸に毒酒を飲ませ、恋慕の心を打ち明けるが、毒がまわり、俊徳丸の容貌が酷く崩れてくる・・・ 玉手御前の菊之助が道ならぬ恋に身悶えする女形の大役である玉手御前を、実に妖艶に演じていた。 |
萩原雪夫作 平岡定海監修 平城京遷都1300年記念 春を呼ぶ二月堂お水取り 達陀 (だったん) 四場 |
僧集慶 松 禄 青衣の女人 時 蔵 亀 寿 右 近 亀三郎 松 也 |
鎌倉時代、大仏で名高い南都東大寺の二月堂では、修二会(しゅにえ)の法会が行われていた。その堂内で法会を取り仕切る僧の集慶、高らかに東大寺所縁の故人達の名を記した過去帳を読み上げていると、青衣の女人が忽然と現れてくる。かつて情を交わした若狭であった。 彼女と過ごした過去を思い出すが、その煩悩を払い除け、松明の炎が燃え盛る二月堂で、達陀の行法に打ち込む。 東大寺に伝わる伝説を巧みに取り入れ、幻想的な雰囲気と艶やかな情感を出しながら、集慶と大勢の練行衆との迫力ある群舞へと展開する構成は見事であった。 |
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