歌 舞 伎
- 観 劇 記 -

平成25年


2月:吉野山、新皿屋敷月雨暈

3月:妹背山婦女庭訓、暗闇の丑松

5月:伽羅先代萩、廓文章

6月:花の生涯


8月:髪結新三、かさね

10月:大和三銃士

11月:仮名手本忠臣蔵

12月:三婆



平成25年2月 日生劇場

演 目 役 者 観 劇 記

義経千本桜
吉野山
(よしのやま)


 清元連中
 竹本連中

   

佐藤忠信実は源九郎狐
      染五郎

逸見藤太
      亀 鶴

静御前
       福 助


  桜が咲き誇る吉野山に、源義経の後を追ってきたのは、静御前と家臣の佐藤忠信。義経一行を探す二人は、初音の鼓を義経に見立て、屋島の合戦の様子や忠信の兄が犠牲になった戦話を語る。
  しかし、忠信の様子がどこかおかしい。実は初音の鼓の皮に張られた狐の子が、忠信に姿を変えていたのだ。
  義経のことを思う静御前と、鼓に張られた狐の親を慕う子狐、夫々の思いが重なる舞踊となっている。
  今回は、冒頭に幸四郎の口上があり、染五郎舞台復帰の挨拶があった。花道の競りあがりで、染五郎が登場すると、万来の拍手であった。亀鶴が軽妙な言い回しで舞台を引き立てていた。


河竹黙阿弥作
遠し狂言 
新皿屋舗月雨暈
(しんさらやしきつきのあまがさ)

 弁天堂
 お蔦部屋
 お蔦殺し
 魚屋宗五郎

 4幕5場


愛妾お蔦
      福 助

磯部主計之助
      染五郎

召使おなぎ
      高麗蔵

小奴三吉
      亀 鶴

岩上典蔵
      桂 三

瀬戸十左衛門
      左團次

萬屋宗五郎
      幸四郎

小奴三吉
      亀 鶴


  旗本磯辺主計之助に見染められたお蔦は、磯部家に奉公していたが、彼女に横恋慕した岩上典蔵の悪事を知った為無実の罪を着せられ、主計之助によって手打ちにされてしまう。
  妹の死を知った宗五郎は、酒を飲んで泥酔し、磯辺に乗込む。
  前半は、怪談「播州皿屋敷」を下敷きにして作られたもの。後半は通称「魚屋宗五郎」として個別に演じられるが、今回は、お蔦が手打ちにされる発端の弁天道からの遠し狂言となっている。
  染五郎の凛々しさと、幸四郎の酩酊振りは見応えがあった。



三月花形歌舞伎

平成25年3月 新橋演舞場

演 目 役 者 観 劇 記

妹背山婦女庭訓
(いもせやまおんなていきん)

 三笠山御殿

 一幕

   

お三輪
      菊之助

漁師鱶七
実は金輪五郎今国
      松 禄

烏帽子折求女
実は藤原淡海
       亀三郎

蘇我入鹿
       彦三郎

入鹿妹橘姫
       右 近

  三笠山にある御殿の主、蘇我入鹿のもとへ、藤原鎌足の使者としてやってきた漁師鱶七を入鹿は人質としてしまう。
  そこへ、酒屋の娘お三輪が、恋い慕う求女(もとめ)の後を追って御殿に迷い込んでくる。お三輪は意地悪な官女達に散々嬲られた挙句、求女は橘姫と祝言を済ませたと聞いて嫉妬の余り形相が一変し・・
  重厚な時代物狂言「妹背山婦女庭訓」より、変化に富んだ物語の展開を、菊之助の好演で、魅力的な舞台となっている。官女たちの苛めぶりも堂に入っていた。


長谷川伸作
村上元三演出
大場正昭演出 
暗闇の丑松
(くらやみのうしまつ)

 三幕


暗闇の丑松
      松 禄

丑松女房お米
      梅 枝

四郎兵衛
      團 蔵

お熊
      萬次郎

四郎兵衛女房お今
      高麗蔵


  料理人丑松には、お米という恋女房がいたが、強欲なお米の母お熊は、二人を離別させ、お米を金になる妾奉公に出そうとしていた。
  それを知った丑松は、お熊と見張りの浪人を殺害し、お米を兄貴分の四郎兵衛に預け、江戸を離れる。
  一年後、、丑松はお米を引取ろうと江戸に戻るが、お米は四郎兵衛に騙され、苦界に売り飛ばされていた・・・
  何度見てみても良い芝居だ。今回は松禄が丑松初役と言う事で、正に熱演であった。



柿茸落五月大歌舞伎

平成25年5月 新歌舞伎座

演 目 役 者 観 劇 記

伽羅先代萩
(めいぼくせんだいはぎ)

  御 殿
  床 下


  一幕二場

   

乳人政岡
      藤十郎

沖の井
      時 蔵

松島
       扇 雀

仁木弾正
       幸四郎

荒獅子男之助
       吉右衛門


  お家横領を企む仁木弾正らは、幼君鶴千代の命を狙おうとするが、乳人政岡が自分の子千松と共に幼君の守護に務めている。
  そこへ、管領の奥方栄御前が来訪し、幼君に毒の入った菓子を勧めると、横から走りよった千松がその菓子を頬張る・・・。 
  仙台藩の伊達騒動を題材にした時代物の大作。二幕目の床下での幸四郎と吉右衛門の絡みは見応えがあった。


夕霧、伊左衛門
廓文章
(くるわぶんしょう)

  吉田屋

  竹本連中
  常磐津連中


藤屋伊左衛門
      仁左衛門

吉田屋女房おきさ
      秀太郎

扇屋夕霧
      玉三郎

吉田屋喜左衛門
      彌十郎


  放蕩の末、勘当された伊左衛門は、紙衣姿に零落しながらも夕霧逢いたさに、新町の吉田屋へやってくる。
  吉田屋の主人喜左衛門夫婦の情により座敷に通され、夕霧に会うことができるが、伊左衛門は素直になれず、夕霧に拗ねて連れなくあたる・・・・
  廓の情趣溢れる上方和事の代表作。男女の機微を演じた仁左衛門、玉三郎は流石であった。

  今回は歌舞伎座新開場の柿茸落とし公演で、新しく建て替えられた歌舞伎座での初観劇であった。




舟木一夫特別公演

平成25年6月 新橋演舞場

演 目 役 者 観 劇 記
舟橋聖一原作
斎藤雅文脚本
金子良次演出

花の生涯

   

井伊直弼
     里見浩太郎

長野主膳
     舟木一夫

村山たか
      葉山葉子

      長谷川
        かずき

     原口剛

     坂西良太

     林啓二

     西川美也子

     

  井伊直弼が未だ部屋住みであった頃、国学者・長野主膳に出会い、師弟関係を結ぶ。
  主膳は、兄の死を受けて彦根藩主となった直弼に招聘され、藩校・弘道館国学方に取り立てられ、藩政改革に協力する。
  直弼の信認も厚く、大老となった後も、将軍後継者問題の解決、日米修好通商条約締結、開国近代化、安政の大獄等に関与する。
  井伊直弼が桜田門外で暗殺されるまでの主膳との交流や遊芸の師匠村山たかとの関りを折込み、幕末の一大ロマンとして良く纏められている。



歌舞伎座新開場杮葺落
八月納涼歌舞伎

平成25年8月 歌舞伎座

演 目 役 者 観 劇 記
河竹黙阿弥作
梅雨小袖昔八丈
(つゆこそでむかしはちじょう)

  髪結新三 

  3幕

   

髪結新三
     三津五郎

弥太五郎源七
     橋之助

手代忠七
      扇 雀

家主長兵衛
      弥十郎

下剃勝奴
      勘九郎

白子屋娘お熊
      児太郎

白子屋後家お常
      萬次郎


  小悪党の髪結新三は、白子屋のひとり娘お熊と手代の忠七が恋仲であることを知り、忠七を騙してお熊をかどわかしてしまう。
  娘を取り戻そうと、白子屋に頼まれた侠客の弥太五郎源七は、新三のもとに行くが、啖呵を切られ追い返されてしまう。
  続いて訪れたのが、老獪な家主の長兵衛には、さしもの新三も敵わず、お熊を取り返されてしまう。 
  江戸の市井に生きる人々の息吹を感じさせる世話物の傑作。長兵衛役の弥十郎の台詞は、見応えがあった。


色彩間苅豆

(いろもようちょっとかりまめ)

  かさね


  清元道中


かさね
      福 助

与右衛門
      橋之助

 
 腰元のかさねと浪人の与右衛門は一目を忍ぶ仲。二人は木下川堤までやってきて、流れてきた髑髏に刺さった鎌を引き抜くと、美しいかさねの顔が、恐ろしい形相へと変化する。
  これは、与右衛門が以前に行なった悪事の因果。与右衛門は、悪の本性を顕し、鎌でかさねを殺してしまう。
  古くから伝わる「累(かさね)伝説」から生まれた歌舞伎舞踊劇。



平成25年10月 新橋演舞場

演 目 役 者 観 劇 記
アレクサンドル・デュマ
「三銃士」より
斎藤雅文脚色
きだつよし演出

大和三銃士
(やまとさんじゅうし))

   

   中村 獅童

   榎本 孝明

   真琴 つばさ

   藤井 隆

   濱田 崇裕

   早乙女 太一


  関ヶ原合戦から13年後。時代が豊臣から徳川へと傾く中、時代の流れに翻弄されながらも、自らの運命を信じ、駆け抜けていった三人の侍。淀君、秀頼、片桐且元、そして家康を絡めて描く歴史エンタテインメント。
  意欲的な設定と、痛快で面白い展開ではあるが、ミス・キャストが目立ち、学芸会のようなのは残念。熊野や大台ケ原のセットは迫力があった。
  フランスのアレクサンドル・デュマの「三銃士」を、日本の戦国時代に置き換えたものだが、もう一ひねり欲しかった。



吉例顔見世大歌舞伎
平成25年11月 歌舞伎座


演 目 役 者 観 劇 記
通し狂言

仮名手本忠臣蔵
(かなでほんちゅうしんぐら)

大序
 鶴ヶ岡社頭兜改めの場

3段目
 足利館門前進物の場
 同 松の間刃傷の場

4段目
 扇ヶ谷塩冶判官
   切腹の場
 同 表門城明渡しの場

浄瑠璃
 道行旅路の花婿

   
 塩冶判官
   菊五郎

 高師直
   左團次

 足利直義
   七之助

 大星由良之助
   吉右衛門

 原郷右衛門
   東 蔵

 薬師寺次郎左衛門
   歌 六

 早野勘平
   梅 珠

 鶯坂伴内
   團 蔵
    
 腰元おかる
   時 蔵


  「義経千本桜」、「菅原伝授手習鑑」と共に歌舞伎の三大名作と言われる「仮名手本忠臣蔵」の通し上演。今回は昼の部の観劇であった。
  江戸時代に実際に起こった赤穂浪士討入事件に材をとり、大星由良之助を始めとする四十七士の仇討ちまでを、彼らを取り巻く人間模様を描きあげている。

大序
  口上人形から始まる古式ゆかしい幕開け。足利家執権の高師直、饗応役の塩冶判官が、将軍の弟、足利直義を出迎える。

三段目
  物語の発端が描かれる「松の廊下」篇。師直の陰湿な仕打ちに耐えかねた判官はついに師直に斬りかかる。

四段目
  殿中での刃傷沙汰を問われ、自らの屋敷に蟄居。そして切腹とお家断絶。城を明渡す由良之助。

浄瑠璃・道行
  恋中のおかるとの逢瀬を楽しんでいた為に、主君判官の一大事に居合わせなかった塩冶家家臣の早野勘平は、おかるの実家へと向かう。

昼の部はここまで。何度見ても名作であるが、今回の演出は少し間延びしていたのは残念。



平成25年年忘れ新派公演
平成25年12月 新橋演舞場


演 目 役 者 観 劇 記
有吉佐和子原作
小幡欽治脚本
斎藤雅文演出

三婆
(さんばば)

三幕

   

 波野 九里子

 水谷 八重子

 沢田 雅美

 笹野 高史

 鈴木 章生

 鴫原 桂

 井上 恭太



  昭和28年初夏。金融業者であった夫が、妾の家の風呂場でぽっくり死去。あわてて、通夜の場を本宅へ移し、葬儀を済ます。
  死んで借財だけが残り、その返済のために妹と本宅の裏庭の一部が売却される。
  住むのに困った妹が残された本妻の住む家に転がり込んできて、さらに妾も部屋を貸して欲しいと申し込んできた・・・
  本宅に、本妻と妾と小姑の三婆が同居し、さらに、死んだ夫の会社の専務までが転がり込んでくる。年忘れ公演に相応しい抱腹絶倒の人情味溢れる喜劇であった。


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平成25年




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