歌 舞 伎 - 観 劇 記 - |
平成26年
1月:天満宮菜種御供、梶原平三誉石切、松浦の太鼓、鴛鴦襖恋睦
2月:心謎解色糸
5月:毛抜き、勧進帳、魚屋宗五郎
6月:春霞歌舞伎草紙、実盛物語、大石最後の一日、お祭り
8月:蛍、江戸みやげ狐狸狐狸ばなし
9月:鬼一法眼三略巻き、隅田川続俤、双面水照月
11月:寿三番叟、井伊大老、熊谷陣屋
12月:笑う門に福来たる
寿 初春大歌舞伎
平成26年1月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
並木五瓶作 山口広一補綴 天満宮 菜種御供 (てんまんぐうなたねごくう) 時平の七笑 一幕 |
藤原時平 我 當 菅原道真 歌 六 判官代輝国 新之介 頭の定岡 松 江 |
身に覚えの無い謀反の嫌疑をかけられた右大臣菅原道真に、大宰府への流罪の宣命が下される。 左大臣藤原時平は道真を弁護するが、勅命には逆らえず、道真は引き立てられていく。 実は、これは道真を陥れるために時平が仕組んで罠であった。 時平は天下を狙う大願成就と、独り舞台に残り、本心を顕し高笑い・・・・ |
梶原平三 誉石切 (かじわらへいぞうほまれいしきり) 鶴ヶ丘八幡頭の場 一幕 |
梶原平三景時 幸四郎 六郎太夫 東 蔵 梢 高麗蔵 俣野五郎景久 錦之助 |
梶原景時や、大庭景親、股野景久兄弟ら平家方の武将が鎌倉の鶴ヶ岡八幡宮に参詣するとこに、青貝師六郎太夫と娘の梢が刀を売りに来る。 景時は目利きをして、名刀と鑑定するが、股野の意見で二人の人間を重ねて切る「二つ胴」で切れ味を試すことになる。 と、大変な設定であるが、景時が情と智を兼ね備えた捌き役を演じる。高麗蔵と錦之助が熱演であった。 |
秀山十種の内 松浦の太鼓 (まつうらのたいこ) 二幕三場 |
松浦鎮信 吉右衛門 大高源吾 梅 玉 室井基覚 歌 六 お縫 米 吉 |
吉良邸の隣家である松浦鎮信の屋敷で句会が催されており、赤穂浪士が討入りしないことに業を煮やしていた。 そこへ、隣の吉良邸から討入りを知らせる山鹿流陣太鼓が鳴り響いてくる。 赤穂浪士の吉良邸討入りの前日から当日を描いた、忠臣蔵の外伝物の傑作の一つ。 |
鴛鴦襖恋睦言 (おしのふすまこいのむつごと) おしどり 常磐津連中 長唄囃子連中 |
遊女喜瀬川 魁 春 河津三郎 染五郎 股野五郎 橋之助 |
河津三郎に相撲で負け、約束どおり遊女喜瀬川を河津に譲ったが、執念深い股野は、雌雄の執念が深いとされる鴛鴦の雄の生き血を河津に飲ませ、その心を乱した上で殺そうと企む。 雄鳥を殺された鴛鴦の雌鳥の精が現れ、やがて雄の精も現れ、恨み重なる股野を散々に悩ませると、どこともなく去っていく。 長唄の「相撲」と常磐津の「鴛鴦」からなる舞踊劇。 |
歌舞伎座新開場杮茸落
二月花形歌舞伎
平成26年2月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
鶴屋南北作 通し狂言 心謎解色糸 (こころのなぞとけたいろいと) 序幕 深川八幡の場 二軒茶屋松本の場 雪の笹薮の場 二幕目 本町糸屋横手の場 同 奥座敷の場 元の糸屋横手の場 三幕目 大通寺墓所の場 四幕目 深川安野屋の場 同 州崎弁天橋袂の場 大詰 小石川 本庄網五郎宅の場 同 伝通院 門前の場 |
お祭左七/ 半時九郎兵衛 染五郎 本庄綱五郎 松 禄 芸者小糸 菊之助 糸屋の娘 九郎兵衛女房 七之助 鳶頭風神喜三兵衛 男女蔵 松本女房お蔦 高麗蔵 安野屋十兵衛 歌 六 |
左七と小糸、綱五郎とお房、九郎兵衛とお時という3組の男女が織りなす奇妙な縁で繋がれた恋愛模様。赤城家の家宝である「小倉の色紙」を巡って展開していく。 先ずは、江戸の華である鳶職の左七と深川芸者小糸との馴れ初めから始まり、家宝の「小倉の色紙」が盗まれて起こる悲劇に巻き込まれていく。 2組目は、色紙紛失の罪をかぶる綱五郎と糸屋の娘。 そして、もう一組は、赤城家に仕えていた九郎兵衛とお時。二人は駆け落ちをして、身を持ち崩してからは悪事を働き生計を立てている・・・ 文化7年(1810年)に初演された4世鶴屋南北の世話物で、41年ぶりの上演とか。歌舞伎座では初めての上演。 3組の男女のそれぞれの運命と葛藤が趣向を凝らし、見応えのある舞台となっている。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
歌舞伎十八番の内 毛抜き (けぬき) 一幕 |
弾正 左團次 小原万兵衛 権十郎 八剣玄番 團 蔵 小野春道 友右衛門 小野春風 松 江 |
小野小町の子孫である春道の館を訪れた弾正。訪問の目的は、主人への輿入れが延期されている理由を知ることであった。 春道の娘は、髪の毛が逆立つ奇病で、輿入れが延期されていることがわかるが、弾正は、毛抜きが急に踊りだす様子から、悪人の企てを見破る・・・ 弾正が春道の館の座敷で待ち合わせの時に見せる、越元や若衆に言い寄って振られる様子や、毛抜きが踊る時に見せる見得も見事に決まっている。 |
歌舞伎十八番の内 勧進帳 (かんじんちょう) 長唄囃子連中 |
武蔵坊弁慶 海老蔵 富樫左衛門 菊之助 亀井六郎 亀三郎 源義経 芝 雀 |
兄頼朝との不和により義経は、弁慶ら家来と共に、山伏姿になり奥州平泉を目指し、安宅の関に入る。 お馴染み歌舞伎18番の勧進帳。今回は海老蔵の弁慶と菊之助の富樫の対決である。 話の展開はわかっていても、演じる役者によって大分感じが違うのが面白い。 |
河内黙阿弥作 新皿屋鋪月雨暈 魚屋宗五郎 (さかなやそうごろう) 二幕 |
魚屋宗五郎 菊五郎 女房おはま 時 蔵 磯部主計之助 錦之助 召使おなぎ 梅 枝 浦戸十左衛門 左團次 |
奉公に出した妹が不義の咎で、主人磯部主計之助に手打ちにされたと知り、悲しみに暮れているところに、妹の朋輩のおなぎが弔問に訪れる。 妹の罪は濡れ衣であることがわかり、宗五郎は禁酒中にも関わらず、遂に耐え兼ねて酒を飲んでしまう。 酔った宗五郎は、妹の無念を晴らすために磯部邸に乗り込んでいく・・・ これも、何回も見ていますが面白いですね。今回の宗五郎は菊五郎、禁酒の誓いを破って大酒を飲み、酒乱の体となっていく件が、大きな見せ場となっている。 |
六月大歌舞伎
平成26年6月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
長谷川時雨作 お国、山三 春霞歌舞伎草紙 (はるがすみかぶきぞうし) 長唄囃子連中 |
出雲阿国 時 蔵 名古屋山三 菊之助 若集 亀 寿 女歌舞伎 友右衛門 小野春風 右 近(尾上) |
桜の花が咲き誇る京都の四条河原では、出雲の阿国が一座の面々と共に歌舞伎踊りを披露していると、そこに今は亡き名古屋山三の幻が現れる・・・ 歌舞伎の始祖として知られる阿国と同時代に実在した、伊達男である山三とは、互いに恋い慕う仲であったという。 絵巻物を見るような綺麗な幻想的な舞踊であった。 |
源平布引滝 実盛物語 (さねもりものがたり) 一幕 |
斎藤実盛 菊五郎 瀬尾十郎 左團次 小万 菊之助 葵御前 梅 枝 九郎助 家 橘 |
平家全盛の時代、琵琶湖の畔にある九郎助夫婦の家に、平家方の斎藤実盛と瀬尾十郎が詮議のために訪れる。 この家には、源氏再興を目指しながら命を落とした木曽義賢の妻で、臨月の葵御前が匿われており、生まれてくる子供の検分であった・・・ 源氏の白旗を巡って繰り広げられる時代物の名作。木曽義仲の誕生秘話。 |
真山青果作 真山美保演出 元禄忠臣蔵 大石最後の一日 (おおいしさいごのいちにち) 一幕 |
大石内蔵助 幸四郎 磯貝十郎左衛門 錦之助 おみの 孝太郎 荒木十左衛門 我 當 堀内伝右衛門 弥十郎 |
吉良邸討ち入り後、大石内蔵助以下赤穂浪士47名の内17名は細川家お預けとなる。内蔵助は、細川家からの手厚いもてなしを受けながら処分を待つ日々を送るが、浪士たちに対して驕りが見えると叱責する。 内蔵助をはじめとする浪士たちの最期の姿を丹念に描き出した傑作。 |
お祭り 清本連中 |
鳶頭松吉 仁左衛門 若い者 千之助 |
江戸、山王祭の日。屋台囃子が賑やかに聞こえる中、町に戻ってきたのはほろ酔い機嫌の鳶頭。上機嫌の鳶頭は、馴染みになった女郎との思い出話を始めるが、そこへ若い者たちが打ってかかってくる・・・・。 江戸の大祭を題材にした、域で洒脱な華やかな清本の舞踊であった。仁左衛門の舞踊・演技に拍手喝采であった。 |
納涼新派公演
平成26年8月 三越劇場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
久保田万太郎作 大場正昭演出 蛍 (ほたる) |
船木とき・しげ 波乃 久里子 船木栄吉 市川 月乃助 おきみ 瀬戸 摩純 よし子 伊藤 みどり 鈴木重一 永島 敏行 |
浅草鳥越に二人の錺職人がいた。実直な栄吉に比べ、兄弟子の重一は、酒に明け暮れ、酔った挙句、女房ときの母親を刃物で傷つけてしまう。 刑務所に入った重一の心を組んだ親方は、ときと離縁させ、栄吉と所帯をもたせる。 大正の大震災の後、出所した重一は、親方の世話もあり苦労人のよし子と再婚する。 重一は人が変わったように一筋に稼業に精を出したが、親方が亡くなると・・ 浅草鳥越神社の祭礼を背景に、涼やかな静が良い雰囲気で醸し出されている。 |
北條秀司作 成瀬芳一補綴・演出 江戸みやげ 狐狸狐狸ばなし (こりこりばなし) |
おきわ 市川 春猿 重善 永島 敏行 おそめ 小川 絵莉 甚平 立松 昭二 又市 田口 守 伊之助 市川 月乃助 |
元歌舞伎の女形で、手拭い染屋の伊之助の女房おきわは、昼間から酒浸りで、生臭坊主の重善と不貞の仲。 その重善に金満家の娘おそめとの縁談が持ち上がり、激怒したおきわは、重善の「一緒になりたいなら旦那を殺してこい」との言葉を真に受けてしまう。 そして、おきわは毒を盛り、首尾よく旦那である伊之助を殺すが、弔いを済ませ逃げようとするおきわと重善の前に、死んだはずの伊之助が現れる・・・ 男の幽霊騒ぎと、騙し騙されの壮絶な化かし合い、まさに抱腹絶倒であった。春猿と月乃助の熱演に拍手。 |
秀山祭九月大歌舞伎
平成26年9月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
鬼一法眼三略巻、菊畠 (きいちほうがんさんりゃくのまき) 一幕 |
吉岡鬼一法眼 歌 六 知恵内 吉岡鬼三太 松 緑 虎蔵 源義経 染五郎 皆鶴姫 米 吉 笠原湛海 歌 昇 |
菊が咲き誇る兵法学者お吉岡鬼一法眼の館の庭先。かつて源氏に仕えていた吉岡3兄弟の長兄である鬼一は、今は平家に仕えている。 その鬼一の館に奉公している奴の知恵内は、実は秘蔵の虎の巻を手に入れるために姿を変えた鬼一の弟の鬼三太で、平家に与する兄の真意を探っている。 主君である牛若丸もまた、平家討伐の大望を抱きながら、虎蔵という奴に身をやつし奉公している。 そんな二人の素性を知った鬼一の娘皆鶴姫は・・ 満開の菊畠を背景に繰り広げられる華やかな時代物絵巻であった。 |
奈河七五三作 隅田川続俤、法界坊 (すみだがわごにちのおもかげ) 三幕 |
聖天町法界坊 吉右衛門 道具屋甚三 仁左衛門 おくみ 芝 雀 おらく 秀太郎 手代要助 錦之助 |
浅草聖天町に住む願人坊主の法界坊は、釣鐘建立の勧進をして歩いているが、実は集めた金を道楽や飲み食いに使ってしまう生臭坊主。 京都の公家吉田家の嫡男要助、没落した御家の再興を目指して、姿を変え機会を伺っていた。 その要助を陥れようと画策するが失敗で、怒りの治まらない法界坊は、要助の婚約者である野分姫を無理やり口説こうとして・・・ 色と欲に溺れた破戒僧の執念を描いた狂言。 |
浄瑠璃 双面水照月 (ふたおもてみずにてるつき) 常磐津連中 竹本連中 |
法界坊の霊 野分姫の霊 吉右衛門 おくみ 芝 雀 渡し守おしづ 又五郎 手代要助 松若丸 錦之助 |
お組と要助は荵売りに変装して逃れる途中、隅田川の土手で法界坊と野分姫の合体した怨霊にとりつかれ、さらに常陸の大掾の追手に囲まれるが・・・ 醜悪な破戒僧と可憐な野分姫を一人で踊り分ける吉右衛門は見事であった。 まさに、世話物の人気狂言と言える舞台であった。 |
吉例顔見世第歌舞伎
初生松本白鸚三十三回忌追善
平成26年11月 歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
寿式三番叟 (ことぶきしきさんばそう) 竹本連中 囃子連中 |
翁 我 當 二番叟 染五郎 三番叟 松 緑 |
見事な松羽目の舞台に、翁、千歳が格調高い舞をみせると、続いて三番叟が五穀豊穣を祈ってめでたく舞い納める。 前半の翁の荘重な踊りに対し、後半は三番叟の躍動感に満ちた踊りと対比させた舞踊。 まさに、顔見世の幕開きに相応しい舞踊であった。 |
北條秀作作・演出 井伊大老 (いいたいろう) 井伊大老邸の奥書院 より桜田門外まで 二幕五景 |
井伊大老 吉右衛門 お静の方 芝 雀 昌子の方 菊之助 仙英禅師 歌 六 |
開国か攘夷かで国中が揺れていた幕末。開国を決断した大老井伊直弼は、暗殺の危機にさらされていた。 危険を承知で雛祭りの前夜、直弼は側室お静の方のもとを訪れる。二人の間に生まれ、幼くして命を落とした娘の命日であった。 そこへ、危機か迫っているとの連絡が入るが、自らの来るべき運命を悟った直弼は、津々と雪が降る中、お静と語らい、酒を酌み交わしていた。 翌朝雪の降る中登城し、桜田門外で暗殺される・・・ 桜田門外の変の前夜の様子を中心に直弼の人間性を見事に描いた舞台であった。 |
一谷嫩軍記 熊谷陣屋 (くまがいじんや) 一幕 |
熊谷直実 幸四郎 相模 魁 春 堤軍次 松 緑 源義経 菊五郎 弥陀六 左團次 藤の方 高麗蔵 |
源平争乱の時代。戦から戻った源氏の武将熊谷直実は、息子小次郎の初陣を心配する妻相模や我が子である平敦盛を案じる母藤の方に向かい、須磨の浦で敦盛を討ちとった様子を語り聞かせていた。 そこへ、源義経が現れ、敦盛の首実検が行われるが、直実の差し出した首桶の中の首は、敦盛ではなく、自分の息子・小次郎の首であった。 義経の思いを汲み取り、後白河院の落胤である敦盛を助け、我が子を犠牲にしたのであった・・・ 世の無常を感じさせる重厚感のある展開であった。 |
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
矢野誠一原作 小畠欣治脚色 佐々木清脚本 浅香哲哉演出 笑う門に福来たる ~女興行師吉本せい 三幕 |
藤山 直美 市川 月之助 あおい輝彦 林 与一 石倉 三郎 仁支川 峰子 |
笑いの王国・よしもとの創始者、吉本せいの波乱万丈の人生。 大阪は船場の荒物問屋に嫁いだ米穀商の娘は、芸事三味の夫に代わり、生まれたばかりの赤子を抱え、店を切り盛りしてきたが、やがて夫が芸人を集めて、興行師の真似事まで始め、店が傾いてしまう・・・ 夫と二人興行師として生きていこうと決心し、様々な苦難を乗り越え、夫が急逝した後も、「笑いの王国」を築いていく様を感動的に描いた舞台。 |
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