歌 舞 伎 - 観 劇 記 - |
平成27年
2月:吉例寿曽我、彦山権現誓助剱、積恋雪関扉
3月:菅原伝授手習鑑、序幕・加茂堤、二幕・筆法伝授、三幕・道明寺
4月:碁盤太平記、六歌仙容彩、廓文章
6月:十三夜、残菊物語/新派公演
7月:南総里見八犬伝、与話情浮名横櫛、蜘蛛絲梓弦
8月:ひらかな盛衰記、京人形
9月:先づ健康、一姫二太郎三かぼちゃ、お祭り提灯
12月:本朝廿四孝、赤い陣羽織、重戀雪関扉
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
吉例寿曽我 (きちれいことぶきそが) 鶴岡石段の場 大磯曲輪外の場 一幕 |
又五郎 錦之助 歌 六 芝 雀 梅 枝 |
富士山を望む大磯の廓近くで、工藤祐経が遊女磯の虎たちを従えて訪れてくる。 そこへ、曽我五郎と十郎兄弟が駆けつけ、父の仇である工藤と対面を果たす・・・ 曽我兄弟の仇討を題材にしたもので、この対面するシーンは、緊迫感が伝わり、いい見せ場となっている。 大掛かりな舞台転換「がんどうがえし」や、背景の大きな富士山も迫力があり見応えのある舞台であった。 |
彦山権現誓助剱 (ひこさんごんげんちかいのすけだち)) 毛ケ谷村 一幕 |
菊五郎 左團次 時 蔵 團 蔵 東 蔵 |
豊前国毛谷村に住む六助は百姓ながらも剣術の達人として知られていた。年老いた母のために仕官したいと言う浪人との試合で、その思いに心打たれ、わざと勝ちを譲るが・・・。 仇討に奮起する純朴な男を描いた名作、義太夫狂言である。 |
積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと) 常磐津連中 |
幸四郎 菊之助 錦之助 |
都に近い逢坂の関にある庵で暮らす良峯小将のもとへ、恋慕う小野小町姫が訪れるが、関守は二人に馴れ初めをしつこく訪ね始める。 関守の懐から割符がこぼれ、その素性を怪しんだ少将は小町にこの場を立ち去るよう言う・・・ 「見顕し」という本性を明かす見応えのある舞台である。 |
平成27年3月 三月大歌舞伎
歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
竹田出雲、三好松洛、並木千柳作 通し狂言 菅原伝授手習鑑 (すがわらでんじゅてならいかがみ) 序幕 加茂堤 |
菊之助 梅 枝 萬太郎 壱太郎 亀 寿 |
帝の弟斎世(ときよ)親王は、舎人の桜丸と妻八重の計らいで、加茂堤にて管丞相(菅原道真)の養女刈屋姫と牛車の中で密かに逢引をする。 そこに、菅丞相の政敵藤原時平方の家臣が現れ・・・ 禁断の恋から始まる物語りです。 |
二幕目 筆法伝授 |
仁左衛門 染五郎 愛之助 魁春 梅 枝 橋太郎 宗之助 |
帝の命により、家伝の筆法を伝授するため、館にこもり準備する管丞相は、旧臣の源蔵を呼び出し、伝授の一巻を与える。そして、菅丞相は源蔵夫婦に子供の菅秀才を託す・・・ 物語後段のいい布石となっています。 |
三幕目 道明寺 |
仁左衛門 芝 雀 菊之助 秀太郎 歌 六 彌十郎 |
藤平時平の陰謀で、大宰府に流罪となった菅丞相は、船出を待つ間に養女の刈屋姫が匿われている伯母の覚寿の館に立ち寄る。 ここに、時平の命を受けた暗殺者が来るが、それから逃れ、姫との名残を惜しみながら大宰府に向かう。 歌舞伎三大名作の一つと言われるだけあって、何度見ても見応えのある芝居であった。 |
松竹創業120周年
中村翫雀改め四代目中村鴈治郎襲名披露
平成27年4月 四月大歌舞伎
歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
近松門左衛門作 渡辺霞亭脚色 玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記 (ごばんたいへいき) 山科閑居の場 一幕 |
扇 雀 染五郎 壱太郎 東 蔵 孝太郎 |
京都山科にある大石内蔵助の閑居。遊蕩三昧の内蔵助に女房と母が意見するが、碁盤を枕に寝てしまう。 そんな内蔵助に母が碁笥で打ち据えるが、内蔵助は逆に女房に離縁を言い渡す・・・ 吉良上野介の間者や、息子主税を絡めて大石内蔵助の辛抱と本心を巧みに描いた舞台。 初代鴈治郎が制定した家の芸、玩辞楼12曲の一つで、今回は実に40年ぶりの上演であった。 |
六歌仙容彩 (ろっかせんすがたのいろどり) 僧正遍照 文屋康秀 在原業平 小野小町 喜撰法師 大伴黒主 竹本連中 清元連中 長唄囃子連中 |
左團次 魁 春 仁左衛門 梅 玉 魁 春 菊五郎 吉右衛門 松 江 |
古今和歌集に和歌の名人として記された6人(六歌仙)の物語。5人の歌人が小野小町を取り巻く様を洒脱に描いた舞踊劇。 小野小町を口説こうとする僧正、小町に恋い焦がれた文屋、美男で知られた業平、桜満開の東山で祇園の芸妓に戯れる喜撰、小町に歌の盗作と責める大伴・・・ 各段に趣向を凝らした絢爛豪華な変化舞踊の舞台。 |
玩辞楼十二曲の内 廓文章 (くるわぶんしょう) 吉田屋 竹本連中 常磐津連中 |
鴈治郎 幸四郎 又五郎 歌 六 秀太郎 頭十郎 |
大坂新町の吉田屋に、放蕩の末勘当され、編み笠を被り紙衣姿に零落した藤原伊左衛門が、恋人の太夫夕霧に逢いたい一心でやってくる。 吉田屋の主人夫婦の計らいで、二人を逢わせてやるが、二人は痴話喧嘩を始めてしまう・・・ 玩辞楼12曲の内の一つ。二人の男女の恋心が織りなす上方和事の名作。 |
松竹創業120周年
平成27年6月
6月公演 新派名作劇場
三越劇場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
樋口一葉原作 久保田万太郎脚色 成瀬芳一演出 尾上墨雪演出 十三夜 一幕二場 |
波野 久里子 立松 昭二 伊藤 みどり 松村 雄基 |
明治中頃の浅草・上野。美貌の娘は高級史官に見初められ西も東も分からないまま嫁いでいった。 請われての結婚であったが、子供が生まれると手のひらを反したように夫が邪険になり、6年物冷え切った乾坤生活を送っていたが、耐え切れずに上野の実家に帰ってくる。 しかし父の言葉に諭され、寂しい諦め抱きながら帰路に着くが、上野公園で今は車引きをしている幼馴染に出会う。 十三夜の夜であった・・・。しっとりとした展開である。そして、何事もなかったように月が照っていた。洒落た脚本であった。 |
村松梢風原作 巌谷槙一脚色 成瀬芳一演出 残菊物語 四幕七場 |
水谷 八重子 波野 久里子 松村 雄基 瀬戸 摩純 田口 守 伊藤 みどり 柳田 豊 市川 春猿 |
明治18年頃、五代目菊五郎の養子菊之助は、弟の乳母の純粋な愛情に心を打たれ、愛を告白した。 しかし、身分違いの恋は叶わず、暇を出されてしまう。やっとの思いで行方を突き止めた菊之助は二人して大阪に行くことにする。 苦労して、役者として再生するまでの経緯を淡々と描いた舞台であったが、最後菊五郎より勘当を解かれ、二人の結婚を認めてもらう場は、練れた脚本で感動的であった。 |
平成27年7月
七月大歌舞伎
歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
曲亭馬琴原作 今井豊茂補綴 南総里見八犬伝 芳流閣屋上の場 円塚 山の場 二幕 |
獅 童 右 近 梅 玉 歌 昇 松 江 |
安房国を治めていた里見家の息女伏姫は、愛犬八房と共に富山山中で暮らしていたが、誤って家臣に銃で撃たれて絶命。すると八つの水晶の珠が空中に飛び散ってしまう。 この珠を持つ八犬士の一人で、里見家再興を目指す犬塚信乃は、公方に献上した名刀村雨丸が偽物と疑われ、追っ手と死闘を繰り広げるが、実はこの追っても八犬士の一人であった。 行方知れずとなっていた名刀村雨丸は、八犬士の一人の手に渡り、ひきよせられるように八犬士たちが集まってくる。 運命に引き寄せられた八犬士の出会いや、屋上の大立ち廻り、だんまりなどが見せ場となっている。 |
藤川如皐作 予話情浮名横櫛 (よわなさけうきなのよこぐし) 見初め 源氏店 二幕 |
海老蔵 獅 童 猿 弥 玉三郎 中 車 |
江戸の大店伊豆屋の若旦那与三郎が、木更津の浜見物をしていると、この界隈の顔役赤間源左衛門の妾であるお富が通りがかり、互いに一目ぼれしてしまう。 逢瀬を重ねる二人の関係を知った赤間により瀕死の重傷を負った与三郎。与三郎が死んだと思ったお富は、海へ身投げしてしまう。 お馴染みの名台詞が折り込まれた世話もの名作ですね。まさに一目惚れから始まった男女の恋の顛末です。 |
石川耕土補綴 藤間勘吉郎振付 蜘蛛絲梓弦 (くものいとあずさのゆみはり) 市川猿之助六変化 常磐津連中 長唄囃子連中 |
猿之助 右 近 門之助 獅 童 海老蔵 |
物の怪に憑りつかれた源頼光は、病に罹り、館で休んでいる。家臣の坂田金時と薄井貞光が宿直をして、舘の警護をしていると、どこからともなく現れたのは童子であった。 童子の様子に疑いを抱いた二人に、童は蜘蛛の糸を操出し、忽然と姿を消してしまう。 さらに薬売り、番頭、座頭が現れるが、二人が遮ると、今度は傾城となって直接頼光に迫ってくる。 すべて、化身した葛城山に棲む女郎蜘蛛の精であった。 源頼光主従の土蜘蛛退治を題材にした舞踊劇。様々な役柄を早変わりで、踊り分ける、趣向を凝らした変化舞踊である。 |
平成27年8月
八月納涼大歌舞伎
歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
ひらかな盛衰記 (ひらかなせいすいき) 逆櫓 一幕 |
橋之助 勘九郎 児太郎 彌十郎 扇 雀 |
摂津国の漁師権四郎の娘およしに婿入りして、船頭に姿を変えていた木曽義仲の遺臣樋口次郎兼光は、義経に討たれた主君の仇を討とうと機会を狙っていた。 女房およしが、巡礼の途中連れ帰っていた子が、義仲の遺児駒若丸と分かり、意を決して自らの素性を明かし、身を犠牲にして遺児の命を助けようとする。 船頭に姿を変えた武将の秘めたる決意、船上や岸での豪快な立ち廻りと見どころの多い芝居である。 |
銘作左小刀 京人形 (きょうにんぎょう) 常磐津連中 長唄連中 |
勘九郎 七之助 新 吾 隼 人 |
彫刻の名工、左甚五郎は、廓で見初めた美しい太夫が忘れられず、太夫に生き写しの人形を彫り上げ、その人形を相手に酒を飲み始める。 すると、不思議なことに人形が動き出し、やがて甚五郎を相手に踊り始める・・・ 名匠と人形の精との束の間の逢瀬。勘九郎の甚五郎、京人形の七之助の息のあった踊りが見事であった。 |
新橋演舞場
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
茂林寺文福作 先づ健康 一幕 |
曽我廼家八十吉 大津嶺子 中川雅夫 高田次郎 渋谷天外 水谷八重子 |
風呂屋を経営する近所でも評判の親孝行ぶりの長男にホトホト困り果てた父親。そこへ廃品回収業をしている次男が現れ、事情を聞き父親を引き取ることになる。 兄弟げんかとなり、借用証を書いて父親を引き取る次男。面白い展開です。 |
茂林寺文福作 一姫二太郎三かぼちゃ 一幕 |
曽我廼家八十吉 大津嶺子 中川雅夫 高田次郎 渋谷天外 水谷八重子 |
田舎の資産家の家に、母親の還暦祝で、家を出ていた長男、次男、四男夫婦がやってくる。 ただ、家に残っていた三男だけは兄弟と馬が合わず、還暦祝いの席でも一人のけ者にされてしまう。 しかし、三男の健気な兄弟愛に兄たちが救われることに・・・ いい脚本ですね。ほろりとさせられます。 |
舘直志作 お祭り提灯 一幕 |
曽我廼家八十吉 大津嶺子 中川雅夫 高田次郎 渋谷天外 水谷八重子 |
近所でひゅお版の善人である提灯屋は、お祭りの寄付金が入った財布を拾う。その様子を、金のためなら何でもする高利貸の女が見ていたからさあ大変。 財布の行方を巡り、行きつ戻りつの大騒動に発展してしまう。 無条件で楽しめる展開です。出演者の熱演にも拍手でした。 |
平成27年12月
十二月大歌舞伎
歌舞伎座
演 目 | 役 者 | 観 劇 記 |
近松半二作 本朝廿四孝 (ほんちょうにじゅうしこう) 十種香 一幕 |
七之助 松 也 児太郎 亀 寿 右 近 |
越後の大名長尾謙信の息女八重垣姫は、許嫁の武田勝頼が切腹したと聞かされ館の一間で弔っている。 ところが、それは計略で、勝頼は花作りに姿を変え、謙信が預かる武田家の重宝の甲を取り返すために、長尾家に奉公していた。 勝頼と瓜二つの花作りを見て、一目で恋に落ちた八重垣姫・・・ 姫の一途な恋心を描いた一幕。八重垣姫を演じた七之助の演技が見応えがあった。 |
木下順二作 坂東玉三郎演出 赤井陣羽織 (あかいじんばおり) 一幕 |
中 車 亀 寿 児太郎 吉 弥 門之助 |
ある村に、派手な赤い陣羽織を着たお代官が、百姓の女房に横恋慕。 口実を作り、百姓を捕え、その隙に女房を我がものにしようとする失敗してしまう。 やっとの思いで、逃げ出した百姓は家に戻ると、そこに代官が来ていた赤い陣羽織が脱ぎ捨てられてあった。 姿形が代官にそっくりであった百姓は、女房が手籠めにされたと勘違いし、仕返しのため、その陣羽織を着て代官屋敷の乗り込んでいく。 これは、傑作。何度見ても面白い舞台であった。 |
重戀雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと) 常磐津連中 竹本連中 一幕 |
松 緑 七之助 松 也 玉三郎 |
先帝崩御の後、都に近いお逢坂山の関にある庵で暮らす良峯少将宗貞のもとに訪れたのは宗貞を慕う小野小町姫。 庭には小町桜と呼ばれる桜の大木が満開であった。小町が都へ戻り、夜が更けると、小町桜の精が傾城の姿となって現れる・・・ 常磐津と竹本の掛け合いで見せる女の本性をみせる妖艶な舞踊劇。 |
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